出汁のかわりにコンソメで『イカと大根の炊いたん』!?レンチン時短でおばあの技も

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僕の祖母、おばあがよく作ってくれた煮物料理“炊いたん”。肉、野菜、魚……どんな食材を使っても、おばあの炊いたんは絶品だった。その技を僕も身につけたいと日々、何かを“炊いて”いる。

とはいえ、おばあの得意技は炊くだけじゃない。

惣菜の唐揚げと酢豚の素を使った――

⇧時短メニュー、酢豚ならぬ“酢鶏”は僕の好物。

さらに手軽な、フライパンで焼くだけで作れる――

⇧味の素の冷凍餃子も、“おばあめし”の定番。

かと思えば、準備と片づけが大変な――

揚げ物を山盛り作ってくれることも。 

それにカラフルなパプリカと鶏の手羽元を使った――

⇧こんなおしゃれな一品を、クリスマスの翌日に作ってくれたこともあった。

同じ料理でも毎回ちょっとずつ違う工夫をするし、新たなメニューも生み出すし、おばあの料理に限界はない。

パーキンソン病にかかって料理が作れなくなるまでの10年間、どんな料理が出てくるのか、僕は毎日楽しみだった。その気持を誰かと共有したいというのも、このブログをはじめた原動力だ。

だけどひとつ疑問があった。

おばあは毎日違うメニューを、どこでどうやって考えていたのか!?

その答えは、自分で料理をするようになってようやくわかった気がする。

おばあの行きつけだった商店街やスーパーで、食材を選んでいるときにメニューが思い浮かぶのだ。

例えば今回は、スーパーの鮮魚コーナーで、すっかり顔なじみになった売り場担当のおばさまに――

鍋で煮るイカ大根に使う生のイカと大根

特売のヤリイカをすすめられた。その声は、まさに神のお告げ。

僕はそれまで、イカは自炊の食材として手に取ったこともなかったけど、イカをすすめられた瞬間、大根と一緒に炊こう! とひらめいたのだった。おばあも絶品のイカと大根の炊いたんを作ってくれたことがある。それを僕も作ってみたい!

こんなふうに、食材の売り場でメニューが思いつくのだった。

それにこの前、僕がモロヘイヤをカゴに入れていると、見ず知らずのおばあさんに調理方法を聞かれたこともある。

顔の広いおばあのことだから、きっと僕以上に買い物をしながら誰かと言葉を交わし、食材や調理法をおすすめされ、毎日の献立を決めていたのに違いない。

というわけで僕は、イカと大根を買って帰ったのだった。

使う調味料はーー

イカ大根に使う調味料、みりん、酒、醤油のボトル

醤油、酒、みりんという和食の基本。これをだいたい、大さじ2ずつ。
そして水がだいたい300ml。

これをすべて――

片手鍋(雪平鍋)に和食の煮物の調味料を入れたところ

鍋に入れる。

分量は、介護施設で暮らすおばあにも聞きに行ったけど、おばあは常に勘で味付けしていたからよくわからなかった。だから僕も自分の感覚を信じて味付けしていたら、近ごろなんとなくわかってきた。

そう思って得意になった瞬間、『和風だし素』がないことに気がついた。

相変わらず、詰めが甘い自分が嫌になる。おばあもダシの素を使っていたのに、確認せず調理をはじめてしまった。

そして代わりに見つけたのが――

キューブのコンソメの箱

コンソメ。これはこれで洋風の旨味が加わって、いつもと一味違うものができそう……。

だけど……いや、大丈夫! おばあも手元にないものがあったら、臨機応変に代用品を見つけてなんとかしていたはず。

そう自分に言い聞かせながら――

調味料が入った鍋にキューブのコンソメを手で入れている

和風の調味料を合わせた鍋に、コンソメキューブを投入!

コンソメが溶け切ったところで味見をすると、想像以上に……いけるで、おばあ! と思わず叫びたくなるおいしさだ。

それが沸騰してきたところへ――

ステンレスの鍋に和食の調味料を入れ、そこにイカが入っている

切り分けたイカを入れる。

難しいのが大根。おばあだったら朝から炊いて一度冷ますことで、味を中まで染み渡らせ柔らかくする。

僕は朝から調理するなら、ぎりぎりまで眠っていたい。

だからおばあも活用していた文明の利器――

皿に盛り付けたくし切りにした大根

電子レンジを使う。

大根は厚めのくし切りにしてしてラップをかけ、10分くらいチン! そして菜箸が刺さるくらい柔らかくなったものを――

鍋で調理中のイカ大根

イカと一緒に鍋で炊く。鍋には、

クッキングペーパーで落し蓋をして鍋で煮物を作っている

クッキングペーパーで落し蓋をして、20分以上炊けば――

ステンレスの鍋に入っているイカ大根

完成だ! 見た目はいい感じ。そこから立ち上るのは、いつもの炊いたんとは違う洋風の香り。水分が飛んで煮詰まったからか、コンソメが醤油より強めに主張している。

ここにイカと大根ってまずくはなさそうだけど、いつもの和風の味に慣れているから、違和感はないだろうか?

ちょっと心配になりつつ、もう一品、隣のコンロで炊いていた――

蓋をした土鍋

土鍋のフタを取ると、

野菜と玉子を煮ている調理中の土鍋

湯気とともによく火の通った野菜やキノコなどの具材が現れる。

こちらも味付けは和風のダシを使いたかったけど、コンソメで炊いた。そこに味噌を加えて――

土鍋で作って皿に盛り付けた野菜と玉子の煮物

洋風の具だくさん味噌汁に。

そしてこれが――

食卓の上のお盆に乗せたイカ大根とごはん

本日のメニュー!

メニュー
・イカと大根の炊いたん
・具だくさん味噌汁
 玉子、玉ねぎ、玉こんにゃく、小松菜、キャベツ、しいたけ、まいたけ、もずく
・ごはん(7分づき米)

皿に盛り付けたイカ大根

まずは、火の通り具合が気になる大根から。長く炊いたつもりでも芯が固いことがあったけど今回は……箸を刺すと、すっと貫通して簡単に――

イカ大根の大根の断面

真っ二つ! やった! 今まででいちばん柔らかく炊けた! 大根は朝から炊くのが難しいなら、電子レンジでチンして20分以上炊けばいいんだ!

口に入れると、ほとんど力を入れずにじゅわっと潰れ、味もしっかり染みている。その味も、大根の甘みに醤油とコンソメが想像以上にぴったり合って、ごはんをかき込まずにいられない……この味、おばあにも食べてもらいたい!

イカもコンソメ醤油がよく合う! ちょっと火を通しすぎたと思ったけど、表面は柔らかく味を吸っているのに内側はプリプリ感が残っている。イカがこんなに炊いたん向きの食材だったなんて!

だけど何だか違和感があるのは……おばあがイカを炊いたときに必ず入っていた、丸いリングがないからだ。

そういえば、買ってきたイカは胴体がなく、パーツがある程度切り分けられていた。 特売だったのは、それなりの理由があったのか。

とはいえ、おばあのモットーを見習って、おいしかったらなんでもオッケー! ということにしとこう。

そして今回はもう一つ、僕が子どものころ、おばあがよく買ってきてくれた懐かしいお菓子――

お菓子『星たべよ』のパッケージとそれをつまんだ手

『星たべよ』を、久々に立ち寄ったスナックコーナーで発見。迷わず手に取った。

サクッと割れる食感に、シンプルなしお味のサラダせんべい……何年ぶりだろう。これなら喉にも詰まりにくくて誤嚥もしにくそう。だからおばあが、外から持ってきたものを食べられるようになったら、今度は僕がおばあにあげよう。

大根も歯がいらないくらい柔らかく炊けるようになったから、もっと回復してや、おばあ!