メニュー
・チキンの飴焼き~パプリカを添えて~
手羽先、パプリカ(赤、黃、オレンジ)、ピーマン
・野菜
トマト、キャベツ、ブロッコリー、ほうれん草、アスパラガス、きゅうり
・大根おろし
大根、じゃこ
・みそ汁
たまご、とうふ、揚げ、玉ねぎ、ねぎ
・ごはん
驚いた。焼き色のついた手羽先の表面が、樹脂でコーティングされたみたいにテカテカと、天井のパルックの光を余すところなく照り返している。難波の道具屋筋商店街で見た食品サンプルみたいな質感だ。それに皿の中のカラフルなこと。赤・黄・オレンジ・緑といえば、行きつけのダイエーに並んでいるパプリカを全色、贅沢にもコンプリートしている。
手羽先と、勢揃いしたパプリカ。この食材の組み合わせと大胆な色づかい。そして謎のテカり。こんな料理見たことない。手羽先をかじるとほんのり甘く、焼けた醤油が香ばしくかおる。甘味はマイルドなのに存在感があり、やわらかな肉の味を引き立てているかと思えば、飲みこめば肉と一緒にすっと消える。ただの砂糖の甘味ではない。味付けは繊細だ。
ほんとにこれを、おばあがつくったのか。おばあに問うと、「あたりまえや!」と言わんばかりに眉間にしわを寄せて睨まれた。そしてテレビに視線を移しながら、「黄金糖を醤油に溶かしたんや」とぶっきらぼうにいう。黄金糖は、おばあが常にバッグに忍ばせている「あめちゃん」だ。飴を料理に使うとは。見た目も味もいいし、おばあとっておきのテクニックなのかもしれない。
なぜこんな料理を今日つくったのかは明らかだ。昨日、自分だけおばあ連中とクリスマス・パーティーをしてケーキを食べておきながら、僕には「一汁二菜のクリスマス定食」を出したことに、おばあはあとから良心の呵責を感じたのだ。さっきから目を合わせようとしないのが何よりの証拠だ。
手羽先の骨をしゃぶっていると、「クリスマスとは違うで」とおばあの声がした。
「近所の人が、飴を醤油に溶かすとうまいと教えてくれたんや」
視線を向けると、おばあは素早くうつむいて、両手に持っていた食べかけの手羽先にかじりついた。
「でも、手羽先とパプリカの組み合わせを考えたのはおばあなんやろ」
と僕が言うと
「そうや!」
と、うつむいたまま答えた。