魚介のうま味が炸裂!阿藻珍味「あもちんの尾道ラーメン」にぴったりのトッピング

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阿藻珍味「あもちんの尾道ラーメン」のパッケージ

いつもの夕飯の時間に遅れてしまった。時間にだけは几帳面なおばあは、連絡なしに15分でも遅れると機嫌が悪くなる。もう40分も過ぎている。小言をいわれるくらいじゃ済まないだろう。普段から人一倍、大きな声を、さらに張り上げ、家の前を通る人が驚くくらいの怒鳴り声を浴びせられるかもしれない。

そろそろと居間の引き戸を開けると、おばあはテレビを見ていた。テーブルのおばあの席には、空の食器が重なっている。おばあはテレビに目を向けたまま、
「台所に行け」
という。普段と変わらない口調なのが、なんだか不気味だ。

いわれた通り台所に行く。流し台に置かれていたのは、「あもちんの尾道ラーメン」と書かれた赤い箱。これは、数カ月前にも食べた、生めんを茹でてつくるインスタントラーメンだ。店で出てくるような本格的な味で、僕はまた食べたいとおばあに伝えていた。

その願いを聞き入れて、また用意してくれた日に、僕は連絡もせず遅れてやってきてしまった。それならおばあは、余計に怒りそうなものだ。喜怒哀楽の激しいおばあがなぜ、あれだけ冷静だったのか……。

考えても答えは出そうにない。とりあえず、腹が減っているので麺を茹でる。

阿藻珍味「あもちんの尾道ラーメン」の麺を茹でているところ

僕が台所に入ることを、おばあは嫌う。僕もおばあには、自分の部屋に入ってきてほしくない。それと同じ感覚で、おばあにとって台所は、他人に侵入されたくないプライベートな空間なのだ。

ただしメニューに麺類があるときだけは、僕が台所で作業することが許される。麺といえば箸で持ち上げるとぶちぶちと千切れるほどの、〝超柔らかめ”が好きなおばあとちがい、僕はコシのある〝バリ固”が好みだ。おばあにいくら僕の好み伝えても、茹ですぎてしまう。だからいつからか僕のぶんの麺は、自分で茹でさせてくれるようになった。

阿藻珍味「あもちんの尾道ラーメン」の麺だけ

麺の茹で時間は「1分10秒~20秒」と箱にあるけど、固めがいいので、50秒ですくってラーメン鉢に盛った。

阿藻珍味「あもちんの尾道ラーメン」のスープをつくっているところ

袋に入った濃縮スープに水を入れて、ひと煮立ちさせる。

阿藻珍味「あもちんの尾道ラーメン」完成(具なし)

そして熱々のスープを、麺の入った鉢に注いで、できあがり!……じゃない。麺とスープだけでは、あまりに見た目が物足りない。前回、おばあは、チャーシューや茹でたまご、もやしという彩り豊かな、ラーメンにぴったりの具材を用意してくれていた。それが今日は台所のどこにも見当たらない。

まさか、はじめは用意していたけど、僕が連絡もせずになかなかやってこないので、腹を立てたおばあが食べてしまった。なんてことも、じゅうぶんありえる。チャーシューも茹でたまごももやしも、ちょっと味付けすれば立派なおかずになる。

いや、まさか、そんな姑息な手段で、おばあが怒りをぶつけてくるとは思えない。短気なおばあは、思ったことはなんでも直接、大声で口に出して伝えてくるのだ。遠まわしに嘘をついたり隠し事をしても、顔に出てすぐにバレることを、おばあ自身もわかっているはず。

僕は釈然としない思いと、〝素ラーメン”の鉢を抱え、居間のテーブルに向かった。

焼きホタテや玉子焼き、かいわれと桜エビのサラダなど、おばあ(祖母)がつくった晩ごはんメニュー

メニュー
・ホタテの焼いたん
・たまご焼き
・かいわれと桜エビのサラダ
・煮物
カボチャ、こんにゃく、たけのこ
・阿藻珍味「あもちんの尾道ラーメン」
・サラダ

生:トマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草

僕の席には、すでにおかずが並んでいた。焼いたホタテにたまご焼き、かいわれと桜エビのサラダ……なんだか弁当のおかずみたいだ。ああ、もしかして、これがラーメンにのせる具材なのではないか! 食べることが大好きで、今でも料理には創意工夫を凝らすおばあのことだ。どのおかずも、ラーメンの具材にしてはちょっと変わっているけど、合わないことはなさそう。

阿藻珍味「あもちんの尾道ラーメン」(焼いたホタテと玉子焼き、かいわれと桜エビをトッピング)

早速、ラーメンにのせてみる。見た目は悪くない。緑のカイワレや、黄色いたまごやきが彩りを添え、表面がカリッと香ばしく焼かれたホタテも豪華な感じがする。

麺をすすると、ちょうどいい好みの固さで、強いコシがある。しゃきしゃきしたカイワレの歯ごたえとも相性抜群。スープは、魚介と醤油、そこに豚の背脂がプラスされた、尾道ラーメンの王道だ。さらに今回は、焼きホタテから出たダシの風味が、はっきりと感じられる。濃厚なうまみが後をひき、尾道ラーメンのおいしさをさらなる高みに引き上げている。そのスープを、うすい層の間に、ひたひたにふくんだたまご焼きも、新しいタイプのダシ巻きみたいですごくいい。

ラーメン鉢にスープだけが残った、阿藻珍味「あもちんの尾道ラーメン」

具材も麺も、吸い込むように平らげた。残ったのは極旨のスープと、ホタテが一個。

阿藻珍味「あもちんの尾道ラーメン」の残ったスープに、ごはんと焼きホタテを投入

スープには、ごはんを投入。前回も食べたラーメンライスだ。(前回みたいに食べ過ぎだと怒られるのも嫌なので、ごはんは少なめにした)。そして残したホタテをひとつトッピングする。

高血圧のおばあに、「塩分の多いものは控えるように」と注意している手前、僕はいつもラーメンのスープは残している。だけどあまりのおいしさに、スープも全部すすって完食してしまった。

お腹も舌もすっかり満足して、僕はイスから転げ落ちるように床に寝転んだ。何か忘れているような気がするけど、もうどうでもいいや。5分だけ寝ようと思って目を閉じると、
「ラーメン、うまかったか?」
とおばあの声がした。料理の感想を聞いてくるなんて珍しい。僕は涅槃仏の格好で、薄目を開けて答えた。
「うまかったで」
「そりゃ、よかった。賞味期限が切れとったけど、大丈夫やな」

なんだって! 僕の眠気は一気に吹き飛んだ。少々、賞味期限が切れていても、おばあは気にしない。それをあえて伝えてくるということは、賞味期限が切れたのは1週間や2週間前どころではないはずだ。

阿藻珍味「あもちんの尾道ラーメン」の箱(賞味期限切れ?)

ラーメンの箱に貼られていた賞味期限を確認すると、2カ月以上も前……。たぶん今日食べたものは、前回、食べたラーメンと同じ日に、冷蔵庫に入れたものだ。そういえば、おばあが今晩、ラーメンを食べた形跡はない。冷蔵庫の奥で忘れられていたものを、おばあが発見し、僕だけに食べさせたのだ。1箱に2食入りのこのラーメンは、あと1食ぶん残っている。明日の昼にでも、おばあがつくって食べるのだろう。

なぜおばあが今日、僕を怒らなかったのか、わかった気がした。でも、おいしかったので、どうでもいいや。明日は日曜日だし、お腹を壊したって寝ていればいいい。そう思って僕は、また涅槃となり、目を閉じた。