肉食おばあも好物の、春菊入り!国産牛肉のすき焼き

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メニュー
・すき焼き
牛肉切り落とし、春菊、糸こんにゃく、たまねぎ、にんじん、えのき、
・サラダ
生:いちご、きゅうり、トマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草
・ごはん

今日はすき焼きだ。久しぶりに牛肉が食べられる! 肉といえば柔らかくて脂の少ない鶏肉がおばあの好物だから、焼く・揚げる・煮るのどれかの調理法で、3日に1度は鶏肉料理が出てくる。牛肉はすじ肉をカレーに入れるか、切り落としをすき焼きにするかの二択しかない。

切り落としといっても肉は国産牛。おばあは外国の食材には良からぬ何かが混じっていると信じているので、国産品を買ってくる。僕がひとり暮らしをしていたときに買っていた特売の外国産牛肉の切り落としは、ひとつひとつが細かくてうすく、調理すると一体化してゴムのように固まった。おばあがつくるすき焼きの牛肉は、鍋では固まっているようだけど、箸でつかむとちゃんとほぐれて一枚の肉の形になる。

味付けは濃いめで甘辛い。普段はうす味が好みだけど、すき焼きは醤油と砂糖のはっきりとした味がいい。適度な脂に味が染みていてやわらかく、たまらずごはんの茶碗に手が伸びる。

溶きたまごにはつけない。おばあはどろっとした食感のものが嫌いだから、生のたまごも受け付けないのだろう。僕はすき焼きの具材を溶きたまごにつけるのも嫌いじゃない。だけどおばあがテーブルに並べていないものを、自分で用意しようとは思わない。そうまでして味を変えてしまうと、おばあがつくった料理の味を否定していることになる気がするから。

おばあは牛肉よりも緑の野菜をどっさりと、取り皿に盛っている。すき焼きの具材で見たことがない野菜だ。食べてみると苦味があり、茎の歯ごたえがしっかりと残っている。おばあが好きな春菊だ。知り合いのナカムラさんからもらったという。家庭菜園でつくった採れたてのもので、苦味と味が濃い。それがさらにおばあの好みに合うようで、牛肉やその他の具材は付け合せ程度に盛り付け、茎の長い春菊ばかりを吸い込むようにほおばっている。

おばあは肉なら鶏肉が好きだし、今日の牛肉はあまり食べなくてもよさそう。そう思って僕は牛肉で、取り皿を山盛りにした。すでに茶碗のごはんが残り少なくなっている。この牛肉の山を平らげるには、茶碗いっぱいのごはんが必要だ。僕ははやる気持ちをおさえて席を立ち、台所の炊飯器からごはんをよそった。

早足で席にもどると、鍋の中の様子が変わっていることに気がついた。僕が取ったあとも残っていた牛肉が、ほとんどなくなっている。おばあの皿を見ると、緑の春菊の上に牛肉が山をつくっていた。