祝87歳!「めでたいことない!」とひねくれたおばあも喜ぶ、孫からプレゼントの誕生日ケーキ

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6月1日が今年もやってきた! カレンダーでは祝日でもなんでもないけど、僕にとって今日は年に一度の記念すべき……おばあの誕生日! いつも晩ごはんやランチのおにぎりを作ってくれるおばあに、日ごろの感謝の気持ちを伝える絶好の機会だ。

僕はいつにも増して、悩んで選んだおばあの好物を手にして晩ごはんを食べに行く。するとおばあはいつもの仏頂面……ではなく、お気に入りの『禰豆子マスク』と花柄のシャツで着飾って、柔らかな表情で迎えてくれた。

「誕生日、おめでとう!」
僕が言うと、
「こんな歳にもなって、めでたいことないわ」
おばあは口では残念なことを言う。

だけど目元がゆるんでいて――
誕生日に鬼滅の刃の『禰豆子』柄のマスクをはめて、食卓について笑っている祖母(おばあ)
マスクをしていても、顔からうれしさがあふれ出ている!

ちょっと頑固なおばあは、お祝いされて照れくさく、素直な気持ちが表現できないのだ。その複雑な『乙女心』は、今晩の献立にも現れている。

おかずは近ごろ定番の『焼き魚とサラダのワンプレート』に煮物と納豆という、一見いつものメニューだけど――
祖母が晩ごはんにつくった野菜サラダと焼き魚が乗ったワンプレート
ワンプレートのサラダには、カマスの開きに加えて塩サバまで、魚が同時に2種類も乗っている! これまで見たことない、ちょっと豪勢な組み合わせだ。どちらの魚も塩味が効いていて、たっぷりの野菜と一緒に食べるとちょうどいい味で、ごはんもどんどんすすむ。

それに毎日欠かさず作る煮物も、今日の具材は久々の――
切干大根が山盛りの煮物が皿に乗っている
山盛りの切干し大根。おばあの好きな具材を、ここぞとばかりに大量に炊いたのは、やっぱり誕生日が嬉しいからに違いない!

メニュー
・焼き魚とサラダのワンプレート
 魚:塩サバ、カマスの開き
 野菜:トマト、キャベツ、レタス、ほうれん草、ブロッコリー、ピーマン
・煮物
 切干大根、タケノコ、ごぼ天
・納豆
・ごはん

僕が食べはじめると、おばあはちらちらと目を向けてきて、何だかこちらを気にしている様子。『さっさと食べろ!』と急かされているみたいだ。

それもそのはず、食後は僕からのプレゼント、毎年恒例のケーキが待っている!

だけど今年は前日に、おばあから「大きなケーキはいらんで」と意外なことを言われた。超甘党で衰え知らずの食欲の持ち主のおばあが、なぜそんなことを!?

よくよく聞いてみると、去年僕が買ってきた4号のホールケーキは切り分けるのが面倒で、皿に乗せるとすぐに倒れて崩れてしまって食べにくかったらしい。たしかにおばあは食べるのに苦労したようで、最後は手づかみで頬張っていた。

だからといって、小さな1ピースのケーキにすると、誕生日らしい雰囲気が足りない気がする。

そんな悩みを抱えつつ、行きつけのケーキ屋に向かうと……まっ先に目にとまったのは、看板メニューのフルーツのロールケーキ! 今まで買ったことなかったけど、これなら見た目も豪華で、切り分けやすくて崩れにくく、手なんて使わなくても食べやすそう。それに何より、おばあの好きな生クリームとフルーツがたっぷりで、きっと喜んでくれるはず!

そして食後――
祖母(おばあ)の87歳の誕生日に買ってきたフルーツのロールケーキ
「ハッピーバースデートゥーユー! ハッピーバースデートゥーユー!」
と誕生日の歌とともにケーキを差し出した。

するとおばあは、歌なんてそっちのけで――
孫が買ってきた誕生日ケーキを見つめる祖母
ケーキをじっと見つめている。何気ない様子を装っているけど、ケーキが食べたくてたまらないのがバレバレだ!

87歳になった気分はどうかと聞いてみると、
「いいことない!」
とまた、ひねくれたことを言う。好物のケーキを前にして『そんなことええから、早く食べさせろ!』と、いら立っているらしい。

その証拠に
「ケーキ食べますか?」
と聞くと、即座に
「食べる!」
と威勢のいい返事。

すぐにケーキを厚めに切って渡すと――
祖母(おばあ)の誕生日に買ってきたフルーツのロールケーキを切り分けて皿に乗せたところ
受け取るやいなや――
誕生日ケーキを食べる祖母
皿を奪うように引き寄せ――
大口を開けてケーキを食べる87歳の祖母(おばあ)
大口を開けて――
誕生日ケーキを頬張る祖母(おばあ)
吸い込むように食べはじめた。

思った通り……このロールケーキ、皿に取り分けても潰れることなく、手づかみしなくても食べやすそう。

とはいえ感想を聞く暇もなく、おばあは――
皿に乗った誕生日ケーキを吸い込むように食べる祖母(おばあ)
険しい形相で食べ進んでいく。

そしてあっという間に食べ終えて、
誕生日ケーキを食べ終えて、お茶を飲む祖母(おばあ)
お茶をすすって、一息ついたところで、
「おいしかった?」
とたずねると――
87歳の誕生にケーキを食べて笑顔の祖母(おばあ)
「そら、おいしいわ!」
と笑顔でこたえてくれた。やった! おばあの誕生日、大成功だ!

僕にも毎日、いろんなメニューを考えて手間ひまをかけて、たまには失敗するけど、おいしい『おばあめし』を作ってくれて感謝やで、おばあ!
祖母(おばあ)が誕生日ケーキを食べ終えたあとの皿
それから僕も、おばあが認めたフルーツのロールケーキ、おすそ分けをいただいた。

ひと口食べると、生クリームは滑らかで甘すぎず、イチゴの甘酸っぱさが引き立って、空気をたっぷり含んだ柔らかなスポンジがすっと消えていく……顔を上げるとおばあはまだ笑っていて、思わず僕も笑顔にならずにいられなかった。