おばあにひな祭りの効果が!? 鶏のもも焼きと、飾り切りのきゅうりとイチゴのサラダ

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・鶏のもも焼き
・ばら寿司(ちらし寿司:昨日つくったものをおばあと半分こ)
切り干しにんじん、こんにゃく、かまぼこ、ごぼう、れんこん、たけのこ、しいたけ、えんどう豆、紅しょうが、錦糸たまご
・豚汁(一昨日のものを冷蔵庫で保存していた)
豚肉、大根、白菜、ちくわ、青ネギ
・とろろ
山芋、卵黄
・サラダ
生:いちご、きゅうり、トマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草

具だくさんのちらし寿司や、お雛さまをかたどった和菓子など、昨日の夕飯は見た目が鮮やかでかわいらしい、桃の節句の特別メニューだった。そして今日のメインは、かわいらしさとは対極にあるような、大きな鶏ももを焼いた豪快なひと品。

鶏のもも焼きはおばあの得意料理のひとつだ。おばあは鶏肉が好きなので、おいしい焼き方も心得ている。強火で熱したぶ厚いフライパンに、鶏もも肉をのせてフタをして、じっくりと蒸すように焼き上げる。鶏肉から出た脂で表面の皮がカリッと、軽く揚げたように仕上がる。

片手で持ってかじる。皮の下に閉じ込められていた肉汁がほとばしり、口の中がやけどしそうになる。肉は柔らかく、肉汁と唾液で口じゅうがいっぱいになり、少しでも口を開けるとあふれ出しそうだ。昨日、両手で持って少しずつ上品に食べた、お雛さま型の和菓子を思い出す。あのときは何だか、とてもおしとやかな気分になった。

鶏肉をかじった跡を見ると、以前食べたときより一口ぶんが小さいような気がする。ひな祭りをおばあと2人で祝った影響で、力強く口いっぱいに肉を頬張ることができなくなっているのではないか。そう思った僕は、できるだけ大きな口を開けて肉にかぶりついた。

サラダにはいちごと、いつもと違う複雑な切り方のきゅうりがのっている。昨日のひな祭りがおばあにも影響を与えているのに違いない。赤くて甘酸っぱいいちごも、ただのうす切りじゃないきゅうりも、おばあなりのかわいらしさの表現のように思える。実際にそうなのかおばあに聞くと、
「いちごは、じいちゃんのお供え物や!」
と声を荒げた。

死んだおじいの世話になった人がたまたま尋ねてきて、いちごを仏壇に供えていったという。それならいちごだけを別の皿で出してもいいのに、ひとつずつをわざわざ半分に切って、サラダを彩るように同じ皿に乗せている。それにきゅうりの手間のかかる切り方は、どう説明がつくのだろう。おばあに聞くと、
「きゅうりをそうやって切ったんは、見栄えがええからや!」
とまた怒られた。

ひな祭りの次の日に、見栄えのいい切り方をしたのはなぜなんだ。そういいたかったけど、また怒鳴られそうなのでやめた。おばあは鶏肉を、いつものようにかじりつくのではなく、少しずつ手でちぎって食べている。僕もそれにならって、今日はちょっとずつ食べることにした。