特定健診で異常値が出たから孫が作る【おばあ仕込みの豚汁】

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特定健診の結果、中性脂肪がまさかの異常値

「ごはんくらい作ったる!」と自分の祖母、おばあに背中を押され、僕は20代後半で会社をやめて大学に通うようになった。

それから月日は流れ、おばあは得意の料理ができなくなり、僕が代わりに料理を作るようになった。やがてこのブログ『おばあめし』は書籍になってよろこんだのもつかの間、おばあはパーキンソン病が進行し福祉施設に入所した。

そして僕は、気づけばもう40歳。迷いがなくなる“不惑”と呼ぶ年齢らしいけど、何を選んで何をするか、相変わらず毎日、迷ってばかりいる。

とはいえ、40歳からの特定健診の受診券が市役所から届いた。

病気の自覚症状はないけど、もしかしてそれも実感がないだけで、実際は中高年がかかるような病気が進行しているのかも……。

急に心配になって、受診券を握りしめ近くの病院に駆け込んだ。

後日、結果を聞きに行くと、
「特に心配するような異常はありませんよ」
と医師に告げられてホッとした。

ところが手渡された血液検査の結果の用紙に、異常値の項目が!? その項目とは、中性脂肪。中高年男性が高くなりがちなやつだ。同年齢の友人も高めだとぼやいていたし、中性脂肪の異常値はよくあることらしい。

それでも油断は禁物だ。中性脂肪が高いと心臓や血管がつまり、命にかかわる事態を引き起こす。

最近も立て続けに、“おじさん”芸能人が心不全で急死したばかり……。

完全に人ごとだと思っていたけど、まさか僕も“心不全で突然死”への道を歩んでいるのか!?

そう思ってよく見ると、基準値より……低い!? 異常値が“中性脂肪低め”なんて聞いたことない。

本当に問題ないのか医師にたずねると
「これくらいは心配することありませんよ」
と言われたものの、基準値から外れていると知ったからには落ち着いていられない。

さらに医師は続けて、
「ただ、全体的な数値が、痩せ型の女性みたいな傾向ですねえ」
と首をかしげた。

そんなの心配しないほうが無理だ。

医師からは特別に何かする必要はないと言われたものの、実はこの結果には思い当たるふしがある。

近ごろ脂質の多い豚肉や牛肉を食べていなかったのだ。

今、僕が食べるべきメニュー

おばあが介護施設に入り、僕が自炊をするようになってからは、肉といえば安価な鶏肉を選ぶことが多くなった。それに魚は小ぶりなイワシやアジといった、これまたお買い得な大衆魚をよく食べていた。

どれも好きなものだし、僕は毎日、同じものが続いても平気だから、意識して避けていたわけではないけど牛肉や豚肉をほとんど食べていなかった。

というわけで買ってきたのが――

豚汁の具材の豚バラ肉や野菜、キノコなど

『日南もち豚』の切り落とし。ほかにはニンジンやなめこ、じゃがいも、こんにゃくなど。

これで作る料理は、おばあもよく作ってくれた――

具だくさんの豚汁だ。

買い物に行く前、介護施設のおばあのところにコツを聞きに行くと、おばあはまたベッドで寝息を立てていた。パーキンソン病が少しずつ進行し、眠る時間が増えている。

それでもおばあは、僕の声で目を覚まし、
「豚肉の他にも、好きなもん、いろいろ入れたらええ」
と豚汁を作る際のアドバイスをくれた。

おばあに聞いたコツで豚汁作り開始

おばあはほかにも、“具材は最初に炒めるといい”というコツを教えてくれたので――

ごま油をひいて、コンロで熱しているフライパン

まずは熱したフライパンにゴマ油をひいて、

じゃがいもと玉ねぎとニンジンをフライパンで炒めているところ

ニンジン、じゃがいも、玉ねぎを炒める。それから――

フライパンで、じゃがいもと玉ねぎとニンジン、豚肉、こんにゃくを炒めて豚汁を作っている

こんにゃくと豚肉を追加し、火を通す。炒める必要のない具材は、

豚汁の材料を入れたステンレスの鍋

深めの鍋に入れておいて、炒めた具材と合わせて豚汁に……と思ったけど、またやってしまった! 大きめの雪平鍋を用意したのに、具だくさんにしすぎて、このままではあふれてしまう。

そこで――

鍋に具材を入れて炊き、豚汁を作っている

さらに大きな両手鍋に変更。

炒めた具材を合わせ、水を入れてダシパックを投入する。

5人分は余裕のすごい量になってしまった。ひとりではさすがに多すぎるけど……足りないよりは、まあいいか。

これを炊いているあいだに――

ステンレスの鍋でほうれん草を茹でている

ほうれん草を茹でておく。

鍋に豚肉やこんにゃくや根菜、キノコを入れて炊き、豚汁を作っている

豚汁の具が炊けたら火を止めて、

麹の恵み『円熟』味噌のパッケージ

この、ひかり味噌の『円熟こうじみそ』を入れる。これよりお買い得な味噌も売っているけど、いろいろ試した結果、近所のスーパーの品揃えの中ではこの味噌がおばあの味に近いのだ。

おばあが使っていたのは、愛媛の山奥にある実家から高齢の弟夫婦が送ってくれる自家製味噌だった。今は手に入らないから、近いものを使うしかない。

その味噌を――

お玉に入れた味噌汁に使う味噌

これくらい、

豚汁を作っている鍋の中で味噌を溶かしているところ

鍋に溶かして、

完成した鍋の中の豚汁

豚汁が完成! ごはんが欲しくなる香りと見た目はいい感じだ。

おかずは他にも、常備している冷凍したイワシを――

イワシをアルミホイルに包んでフライパンで焼いている

フライパンでホイル焼きに。しょっちゅう食べているイワシだけど、今回は味付けに――

レモスコの瓶

レモンのタバスコ、『レモスコ』と、

旭ポン酢の瓶

おばあも愛用していた『旭ポン酢』で――

塩焼きのイワシとキャベツをほうれん草を盛り付けた皿

柑橘の酸味を効かせたさっぱり味にした。ちなみにほうれん草は、豚汁に入れる予定だったけど、あまりに他の具が多すぎたのでイワシに添えた。

食卓に並べた献立、豚汁とイワシの塩焼きと野菜とごはん

メニュー
・豚汁
豚肉、ニンジン、わかめ、玉ねぎ、コンニャク、じゃがいも、なめこ、しいたけ、もやし
・イワシのホイル焼き&
茹でほうれん草とレンチンキャベツ
・ごはん(7分づき)


豚汁は大量に作ったので――

大きなさらに盛り付けた豚汁

大きな器にたっぷりと。具も底まで詰まっている。それはいいけど、まだまだ残っている鍋の中身は、ひとりで食べ切れるだろうか。

そんな心配は、一口汁をすすると吹き飛んだ。豚肉の脂といろんな具材の旨味が加わって、このおいしさ、ふつうの味噌汁どころじゃない! おばあの豚汁にけっこう近い味になっている。

それに強烈に欲しくなるのが――

漆塗りの茶碗に盛り付けたごはん

やっぱり、ごはん。

豚汁、ごはん、豚汁、ごはん……と無限ループで食べ続けられる。

結局、どちらもおかわりして――

豚汁にごはんを入れたねこまんま

やってしまった、豚汁ごはん! もう一気にかき込むしかない!

このペースなら、両手鍋に残っている豚汁も2日で完食だ。

そういえばおばあが作った料理も、僕と二人で食べるとは思えない量が食卓に並んだ。その光景を見た瞬間は圧倒されて食べ切れないと思うけど、きれいに食べきってしまう。鍋に残っていたとしてもだいたい2日でなくなった。

あのころ検診を受けていたら、“基準値より低め”なんてなかったはず。

おばあの料理の偉大さが身にしみる。僕のように使う食材がかたよるなんてことはなく、レパートリーも品数も豊富でどれもおいしい。しかもそれを毎日、10年間も作り続けてくれた。それがどれだけとてつもないことか、月日が経つごとに実感する。

そしてまたひとつ、おばあに食べさせたいメニューができた。また僕の作ったものが食べられるようになってほしい。それまで僕も、健康をたもって料理を作り続けるで、おばあ!