孫の好物を合体!おばあの手作り牛丼カレー

玄関の戸を開けて、息を吸った途端、今晩のメニューがわかった。このスパイシーで、甘さもあって、とにかくごはんが欲しくなる香りといえば、カレーしかない!

でも、なんだかおかしい。いつもは嗅ぐだけでごはんが食べられそうなほど、濃厚な香りがするのに……。この前みたいに、今晩もレトルトカレーなのか。いや、これはたしかのおばあの手作りカレーの嗅ぎなれた香り。もしかして僕が今、風邪気味だから、嗅覚が弱くなっているだけなのか。

それでも息を吸うたびに、お腹はさらに減っていく。居間に急ぐと――

灯油ストーブで暖まりながら、テレビを見ている祖母(おばあ)

先に夕飯を食べ終えたおばあが、灯油ストーブであたたまりながら、テレビのバラエティ番組を眺めていた。
「カレー、自分で入れてこい」
と顔も向けずにいう。
「今日のカレー、おばあがつくったやつ?」
念のために聞いてみると、
「そうや!」
と力のこもった返事。

やっぱり香りが弱いのは、僕の鼻の調子が悪いだけらしい。だったらおばあの手作りカレーをたらふく食べて、風邪なんて吹き飛ばしてやる! おばあに「太るからあかん!」と怒られても、絶対にお代わりしてやる! そう心に決めて台所に向かうと――

フタがしてある金属の鍋

コンロの上にはフタをした鍋が。この中にカレーがたっぷり。そう思ってフタを取ると――

ひとりぶんのカレーが入っている鍋

何なんだ……これは!? カレーは底のほうにひとりぶんがあるかないか、ぎりぎりの量しかない。こんなん、少なすぎるやろ、おばあ! お代わりなんて、できるはずもない。いつもは一度に3日ぶんはつくるのに、どうして……。

釈然としないまま鍋の中身をすべてかき集め、ごはんと一緒に皿に盛った。そして食卓へと引き返す。テーブルにはすでにおかずが並んでいた。

シイタケ入りカレーやほうれん草のおひたしなど、祖母(おばあ)が作った晩ごはん

メニュー
・カレー
・ほうれん草のごま和え
・牛肉の炊いたん
・サラダ
生:玉ねぎの醤油漬け、キャベツ、トマト
茹で:ブロッコリー、アスパラガス

カレーはひとりぶんきっかりしかないうえに、おばあがいつも入れる牛すじもない。手づくりしてくれたのはうれしいけど、それほど手間をかけたくなかったのか……。たしかにおばあは近ごろ、レトルトカレーに具材をちょい足ししたりして、コスパ重視でカレーをつくるようになってきた。

カレーの新たなおいしさを追い求め、毎回違ったチャレンジを繰り返してきたあのころの情熱はどこにいってしまったんだ!? おばあは向かいの席で、相変わらずテレビに集中している。どうせ疑問をぶつけたところで、いつものように怒鳴られておしまいだ。かぐわしい香りを放つカレーを前にして、悩めば悩むほど、お腹はさらに減っていく。

ひとまずカレーを食べて落ち着こう。そう思ってスプーンを手に取り、カレーに顔を近づけると――

祖母(おばあ)が作ったシイタケ入りカレー

細かく刻んだ具材の中に、どこかで見たことがある白と黒……これはまさか、シイタケ! おばあはカレーにシイタケを入れたのか! ちょうどひとりぶんしかないし、牛すじも入っていないけど、新しい具材、入れてるやんか! それに他のおかずも――

祖母(おばあ)が作ったほうれん草のごま和え

いつものほうれん草のごま和えに、

トマトや玉ねぎの醤油漬けが乗った野菜サラダ

サラダに加え――

牛肉のすき焼き風炊いたん

醤油色に炊いた、“牛皿”風の牛肉もある! これはただのおかずというより――

すき焼き風牛肉をトッピングしたカレー

こうやってトッピングして、“牛丼カレー”にするんだろ、おばあ! 僕の好物を合体させるとは! こうするために牛すじが入っていなかったのか!

たまらずひと口頬張ると、おばあのつくるカレーに一瞬でも疑問を持ってしまったことを後悔した。それほどおいしかった。濃いめの味付けの牛肉が、これまた濃厚なカレーと混然一体となり、互いの味わいを引き立て合っている! そこへたまに顔を出すシイタケの歯ごたえが、絶妙なアクセントになって心地いい。

それからはもう夢中で、パクパクとスプーンを口に運び、またたく間に食べ終えてしまった。そして、もっと食べたいと思ったところで、鍋にはカレーがまったく残っていないことを思い出した。今日に限って、どうしてひとりぶんしかなかったんだ! しぼんだはずのさっきの疑問は、さらに大きくなっていた。

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