おばあが浮かれてメインが3つ!?まぐろ・カンパチの刺し身と、味の素冷凍ギョーザ


おばあが浮かれてメインが3つ!?まぐろ・カンパチの刺し身と、味の素冷凍ギョーザ

メニュー
・刺し身
まぐろ、カンパチ
・味の素冷凍ギョーザ
・茹でもやし
・みそ汁(2日め)
菜の花、豆腐、玉ねぎ、青ネギ
・サラダ
生:ミニトマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草
・ごはん

おばあが買ってくる魚は新鮮で質がいい。薄利多売のスーパーではなく、目利きの店主がいる商店街の魚屋をひいきにしているからだ。魚は塩焼きや煮付けもいいけど、やっぱり鮮度の違いは刺し身がもっともよくわかる。

今晩の刺し身はまぐろとカンパチ。その下に敷き詰めてある千切りのだいこんが、汚れのない白さを保って輝いている。時間が経つと身から出てくる汁で色がついていないのは新鮮な証拠だ。

表面がつやつやと輝く刺し身を見ていると箸を取らずにはいられない。透明感のある赤い宝石のような鮮やかな色のまぐろをひと切れ口に運ぶ。噛むとほどよい張りがあり、脂はあまり乗っていないけど溶けるように細かくなってもっちりとした感触が口じゅうに広がる。ぷりぷりとした弾力のあるカンパチと合わせて、一気に4切れを平らげた。

刺し身の隣の皿には餃子が盛られている。おばあが夕飯に出す餃子はいつも〈味の素冷凍ギョーザ〉だ。フライパンで焼くだけで簡単においしく食べられる。おばあの家の冷凍庫には常に2・3パックがストックしてある。この餃子が出てくる日はたいてい、おばあは買い物に行っていなくて、前日の残りものや納豆など手間の掛からないものが一緒に並ぶ。おばあはできるだけゆっくりと休みたい日に、冷凍の餃子を夕飯のメインにして時間と手間を省いてきた。

だけど今日は、鮮度が抜群の刺し身がある。明らかに商店街に買い物に出かけている。他にはしゃきしゃきとした食感がいい茹でもやしや、いつも欠かさない味噌汁やサラダもある。餃子がなくてもじゅうぶん満足できる献立だ。

もしかして、刺し身を買ってきた後に、冷凍の餃子の賞味期限がとっくに切れていることがわかったとか……。だけど捨てるのがもったいなくて慌てて夕飯のメニューに追加した、ということはないだろうか。賞味期限が切れた冷凍食品を食べるのが1日遅くなったとしても、僕はまったく構わない。

今日は刺し身もあるし、おばあは明日の晩に餃子を出し、昼間は休憩していればよかったのだ。先月はインフルエンザにかかり、今でもときどき正体不明の咳が出て、膝が痛いとしょっちゅうぼやいている。近所のおばあと同年代の高齢者はつぎつぎと入院したり亡くなったりしている。おばあに料理はつくって欲しいけど、休息もしっかりとってほしい。

「刺し身もあるんやから、餃子は明日でもよかったで」
僕はいった。するとテーブルの向かい側に座るおばあは
「明日はあかん!」
と強く否定して、餃子を頬張った。次に同じようなことがあったら、おばあには楽をするチャンスだと思ってほしい。という一心で僕は食い下がった。
「なんでや!」
「明日は箕面の温泉に行って、夜も帰ってけえへんからや! 前にもいうたやろ!」

そうだった。何日か前に、おばあは温泉のあるホテルに泊まるといっていた。それが明日だったのをすっかり忘れていた。
「じゃあ、餃子の賞味期限が切れて……」
「そんなん切れとるもん出さへんわ! 明日の晩は自分でつくって食べや」

おばあは明日の夕飯をつくることができないから、そのぶん今日の料理を豪華にするためにわざわざ餃子をプラスしたのだ。刺し身と餃子という本来ならメインの料理が2つある贅沢な組み合わせは、僕のためだったのか。

料理をすべて食べ終え、食器を台所に運ぶ。今日はたっぷり食べたのだから、明日は質素な夕飯でいいや、などと考えていると流し台の端に、焼いた魚の切り身と〈日清のどん兵衛天ぷらそば〉のカップを見つけた。魚は数日前に食べた、脂がのっておいしかったムツのあらだ。

さっきおばあは明日の夕飯は「自分でつくって」なんていっていたけど、実は用意してくれていた! 僕はムツがのった皿とカップのそばを手にして席に戻った。感謝の言葉を伝えようとすると、先におばあが驚きの表情で声を上げた。
「ああ、その魚! 出すのんわすれてたわ!」
今日はもう一品、主役級の料理を一緒に並べようとしていたのか! と今度は僕が驚いた。

もともと明日の晩ごはん用にくれるつもりだった〈どん兵衛〉と、忘れられていた焼いたムツを僕が持って帰ることになった。質素な夕飯にならないことが確定して、
「ありがとう」
と僕はいった。するとおばあは、
「みのお、おんせん、スパーガーデン」
とテレビCMのメロディを口ずさんだ。おばあが二週間に一度“女子会”をしている仲のいいメンバーと泊まりに行く温泉宿が、楽しみでたまらないのだろう。メインの料理を3つも出そうとしていたことも、焼いたムツを出し忘れたのも、浮かれていたからに違いない。気持ちも体も休んでいるより活発なほうが、長生きしてくれそうだ。温泉で思う存分はしゃいできて欲しい。

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