おばあも食べたがる、納得のロングセラー! エースコックのワンタンメン

スポンサーリンク

陽が沈むのが早くなり、暗い外に出ると寒さを感じるようになってきた。こんな日は暖かいものが食べたい。そう思いながらおばあの家にやってきて、居間の戸を開けた僕にいきなり、
「今日はラーメンや! 台所でつくってこい!」
とおばあが威勢よくいった。

やった! ちょっと寒い今晩は、ラーメンが最高だ! 真夏に熱々のラ王が出てきて汗だくで食べたときは、おばあは何を考えているのかと思ったけど、ちゃんとわかっているじゃないか!

今晩も袋入りのラ王だろうか。おばあはコシのある麺が固いと文句をいいながら、おいしそうに全部平らげていた。それにこの前はハムと錦糸たまごという冷やし中華みたいな具材だったけど、意外と醤油ラーメンに合っていた。今回はどんな具材を用意してくれているのだろう。思いもよらない具材を期待して台所に急ぐと――

エースコックのワンタンメンのカップのフタ

エースコックのワンタンメン! しかもカップのやつだ。これだったらつくるも何も、付属の袋の中身を入れてお湯を注ぐだけじゃないか。とはいえ、たしかに具材がワンタンというのは予想外。子どものころから知っていて、55周年とフタに書いてあるけど、食べるのは初めてだ。

エースコックのワンタンメンの袋に入ったスープとかやく

カップはすでにフタが開いていて、袋が取り出されている。そこまでしてくれなくても、カップ麺くらい失敗せずにつくれるよ! と思いながら「かやく」をカップに入れていると、
「袋の中身を入れて、湯を注ぐんやで!」
居間の方から声が飛んできたので、
「わかってるわ!」
と叫び返した。

片手鍋の中でお湯が沸騰しているところ

コンロの上ではお湯が沸いていた。そこまでしてくれなくても、自分でお湯くらい沸かせるよ! と思いながら鍋の取っ手を掴むと、
「鍋に湯がわいてるやろ!」
とまた居間から声がしたので、
「見たらわかるわ!」
と僕はまた叫んだ。

お湯を注いだカップを手にして食卓に向かうと――

エースコックのワンタンメンや野菜炒め、栗ご飯など祖母(おばあ)が作った晩ごはん

メニュー
・エースコックのワンタンメン
・豚肉とキャベツの炒め物
・オクラのかつお節和え
・タコとキュウリとワカメの酢の物
・サラダ
生:玉ねぎの醤油漬け、トマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草
・栗ごはん

おかずの皿がいくつも並んでいた。なぜだ、おばあ。カップ麺といえば、手間をかけずにさっと食事を済ませたいときに食べるものじゃないのか。この料理の数々は見るからに手間暇がかかっている。品数が多いのは大歓迎だけど……。

豚肉とキャベツを炒めたもの

豚肉とキャベツの炒め物は、ボリュームたっぷりで食べごたえがあるし、

オクラのかつお節和え

オクラのかつお節和えや

タコとキュウリとワカメの酢の物

酢の物もうれしい箸休めだ。

祖母が作った野菜サラダ

それにいつものサラダに加えて、ごはんはなんと――

祖母(おばあ)が作った栗ご飯

栗ごはん! これならもう、カップ麺、必要ないやんか!

それなのになぜ用意したのだろうか? 思い当たることといえば……朝ドラの影響かもしれない。今やっている「まんぷく」が面白いとおばあはいっていた。あれは日清食品の創業者とその妻の人生がモデルになっているそうだ。だけど「まんぷく」を見てインスタントラーメンが食べたくなったのなら、日清のチキンラーメンとかラ王を買ってこないのか……。

ずずずずずっ! とおばあは盛大な音を立てながら向かいの席で麺をすすっている。おばあにとっては、インスタントラーメンの会社はどれも同じなのかもしれない。

僕もひとまずワンタンメンに箸を伸ばす。

カップ入りのエースコックのワンタンメンにお湯を入れて出来上がったところ

上に乗ったワンタンは思ったより大きくて、ブタの顔のカマボコもかわいらしい。ワンタンの皮のつるっとした食感は、お湯をかけただけとは思えない。55年も売られているだけあって、けっこういける。麺は生めん風味でも何でもない、油で揚げた普通のインスタント麺だけど、この久しぶりに味わうモソモソした感じが懐かしくてクセになる。どんどん体も暖まってきた。

それにしても、カップ麺に栗ごはんなんて、糖質をとりすぎてるのは明らか。おばあはいつも、太り気味の僕にごはんのおかわり禁止令を出しているくらいなのに、どういうわけだろうか?

「なんで栗ごはんもおかずもあるのに、ラーメン出したんや?」
たらふく食べた食後に、おばあの機嫌が良さそうだったので聞いてみた。
「そんなん、食べたかったからや!」
とおばあは、当然のことのように答えた。はあ、朝ドラとか糖質制限がどうだとか考えていたことがバカらしい。感覚で生きているおばあに、筋の通った答えを期待してもムダなのだ。

僕は釈然としないまま空になった食器を台所に運んだ。そして食卓に戻ってくると――

祖母(おばあ)が赤福を食べるところ

おばあはあんこの和菓子を食べようとしていた。これは伊勢名物、赤福餅! 知り合いに土産でもらったのだろう。しかしあれだけ夕飯で糖質をとっておいて、また甘いものを食べるとは。これも何も考えず〝食べたいから”食べているだけなのだろう。

赤福を一人で半分食べるところ

見ているあいだにパクパクと、半分の4個を平らげてしまった。そして箱を僕に差し出し
「うまいで、お前も食べえや」
といった。

たぶんおばあは、インスタントラーメンの会社はどれも同じだと思っているくせに、ごはんと麺とあんこと餅が、同じ糖質だということをわかっていない。僕もわからないことにして、甘いこしあんで包まれた餅を次々と口に運んだ。