自炊をするようになって、ようやくわかった。僕に料理を作ってくれていたおばあが、毎日ちがう献立を、どうやって決めていたのかを。
その方法とは――商店街やスーパーで、並んでいる食材を見ること!
えっ!? そんなのみんなやってることじゃねーか!
なんて思われそうだけど、料理することに慣れていない初心者はそれができない。
おすすめの旬の食材や、タイムセールの特売品を自由自在に組み合わせ、その場で食卓に並べるメニューを考え出すなんて、達人のなせるわざだ! しかもおばあは、若いころから毎日、家族が満足する料理を作っていた。そんなのすごすぎる!
とはいえ僕も、料理のコツがなんとなくわかってきた。
料理初心者、ようやく卒業かも!? そんなことを思って、今回は売り場でひらめいた直感にしたがって食材を買ってきた!
ところがこのとき、僕は調子に乗っていたと、帰宅して台所に立って思い知るのだった。
その食材とは――
これ!
メインは商店街の魚屋で、特売だったカレイの切り身。カレイといえば、おばあの作った――
炊いたん(煮付け)が絶品だった。
だから僕も、カレイの炊いたんを作ろう! 魚の煮付けといえば、僕はこれまで――
サバとか、
エイとか、いろいろ炊いてきたから、定番のカレイもきっとうまく作れるはず!
それはいいのだけど……八百屋の【おすすめ!!】のポップと安さにつられて買ってきた、この――
野菜をどうするか……なかなか思いつかない。ニンジンにゴボウ、トウモロコシはいいとして、半額だったセリは鍋物くらいでしか食べたことない。
それに極めつけは、暑い今が旬だという――
大きな冬瓜。おばあは冬瓜をダシでやわらかくなるまで炊いていたような気がするけど……あまり覚えていない。
わからないなら、ひとまず調理にとりかかろう。
そうだ、手を動かしているうちに思いつくはず!
なんて自分に言い聞かせながら――
食材を切る。冬瓜は皮をうすくむくのが難しいけど、なんとか――
むいて、適当な大きさに切り終えた。おばあも大好きなトウモロコシは――
皮を一枚残して、電子レンジで加熱する。
そして、メインのカレイの炊いたんに取りかかる。
味付けは――
醤油、砂糖、みりん、酒、すべてだいたい大さじ3
を混ぜ――
食材とともに鍋に入れる。
ゴボウはカレイと一緒に炊くことにして――
クッキングシートで落し蓋をしてしばらく火を通す。そこへ――
シメジとマイタケ……そうだ!
セリも一緒に炊いたら、きっとおいしい!
というわけで――
セリもカレイと一緒に、鍋で炊く!
だけど冬瓜は、どう調理したらいいかわらないまま、調味料の棚を探っていたら――
ピンとくるものを見つけた! これは前回の酢鶏と一緒に作った――
中華スープの味付けに使った、丸鶏がらスープの素!
そうだ! あのスープなら、柔らかく炊いた冬瓜が合いそう!
と思いついたので、冬瓜を――
ニンジンや玉ねぎと一緒に土鍋に入れ、丸鶏がらスープの素を適当に加える
そしてフタをして炊けば――
冬瓜の中華スープの完成だ! ちなみに前回、入れておいしかった玉子とワカメも追加した。
そして、できあがったのが――
この献立。
メニュー
・カレイの炊いたん
カレイ、ゴボウ、セリ、シメジ、マイタケ
・冬瓜の鶏がら中華スープ
冬瓜、玉子、玉ねぎ、ニンジン、ワカメ
・レンチントウモロコシ
・ごはん
まずはメインの――
カレイの煮つけから。
見た目は、皮がはがれてしまって……おばあが作ったものとはほど遠い。
だけど箸でつまむと柔らかく、口にいれるとふっくらして、よく味が染みている。そして味は、これまたおばあの作ったものとは……ちがう!?
僕はダシが出るゴボウやキノコ、セリまで入れたから、いろいろな味が混ざっている。
だけどこれはこれで……おいしいから、全然オッケー!
何をやっても「おいしかったらええ!!」とは、おばあが言っていたこと!
それに味付けは、おばあとだいたい同じだから、まったくちがう味というわけでもない。だからもちろん、ごはんにも――
ぴったり合うし、おばあめしの雰囲気もありつつ、新たな味になったと思う。
ただ――
この冬瓜の中華スープはその場で思いついたもの。
とろとろになった冬瓜をスプーンですくって口に入れると……たっぷり染み込んだ鶏ガラスープが染み出してきて、おいしい!
だから全然オッケー! これはおばあにも食べてもらいたい。
それに、おばあが子どものころから大好物の――
トウモロコシは、おばあに教えてもらったレンチンだけで、かなり甘い!
今日の献立は事前に何も決めず、直感にしたがって作ったけど、きっとおばあも合格点をくれるはず。僕も料理初心者をようやく、卒業できたかも!?
だけど、介護施設にいるおばあは、僕が作ったものを食べることができないから、このブログを見せて報告するしかない。
おばあが実際に食べて、合格点をくれたときに、僕は胸を張って料理上級者の仲間入りができると思う。
だから、また、もっと元気になってや、おばあ!
そのときまで、初心を忘れず料理の腕を磨き続けるから。