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祝88歳!おばあの米寿を祝う孫。プレゼントは大好物のケーキ…ではなくプリンパフェ!?

今年も6月1日がやってきた! この日は記念すべき、おばあの88回目の誕生日! 88歳といえば、末広がりの八が重なる縁起のいい歳。それに『八十八』を合体させると『米』の字になるから、米寿とも呼ばれる。

おばあの88年の半生を祝福するのに、『米』に『寿』の米寿ほどふさわしい呼び名はない。

まさにおばあの生きざまは米とともにあった。

僕に晩ごはんやおにぎりをこれまで10年以上作ってくれたおばあは、一体どのくらいの量の米を炊き、茶碗によそい、両手でギュッと握ってくれたのか、ちょっと考えただけで大変なケタになる。

以前は大工の棟梁だったおじいや、住み込みの腹をすかせた若い衆、そして食べ盛りの子どもたちに、毎日、大量の米を炊いていたそうだ。

さらにさかのぼると、おばあは子どものころからかまどで『めし炊き』をしていたというから、そのときから合計すると、炊いた米の量は、もう想像するのも気が遠くなる。

その『米』の字を冠した米寿を迎えられて、おばあ自身も感無量……というわけでもないらしい。

誕生日の前日に気持ちを聞くと
「そうか。そんなんふつうや」
といつもの調子で言った。

当の本人より、僕のほうがよろこんでいるみたいだ。

というのも数ヶ月前、無事に今年の誕生日を迎えられるかわからない状態になった。

おばあは2月にコロナに感染した。

床に寝たまま立つこともできなくなり、僕が呼んだ救急車で搬送された。肺炎が見つかり中等症と診断され、10日の入院期間中、病状がいつ急激に悪化するかわからないと告げられた。コロナ病床の患者は面会することもできず、退院時におばあの顔を見るまで僕は気が気でなかった。

なんとか退院できたものの、体力がガクッと落ちてしまった。台所に立つことが難しくなり、子どものころから80年くらい続けてきた料理は僕が代わりにやるようになった。

おばあには大きな変化があったけど、それでも、今年もなんとか自宅で誕生日が迎えられた。

おばあにいちばん欲しい物をたずねると
「そら、ケーキや!」
とはずんだ声で言った。

米寿を迎えられたことよりも、大好物のケーキが食べられることのほうがうれしいらしい。

というわけで6月1日はおばあの大好物の甘いケーキを買って……くることができなかった。

僕は本業のライターのほかに大学で非常勤講師もしている。6月1日はちょうど授業があり、帰りが遅くなる。

授業に穴を空けることはできないのはわかっているけど、おばあを祝うために休めないものかと少し本気で考えた。だけどおばあはこれまで、僕が11年前に会社を辞めてから、料理を作ることで新たな挑戦を支えてくれた。おばあなら、今の仕事を優先しろと言うはずだ。

とはいえ、大好物のケーキが一日『おあずけ』になり、落胆するのではないか。

だけど事情を伝え、ケーキは6月2日に買ってくると言うと、
「そら、仕事は休んだらあかんわ」
当然のことだと言わんばかりの口ぶりで理解してくれた。

6月2日の夕方、ケーキを買っておばあの家に向かった。久しぶりのケーキを今か今かと待ち望んでいる……かと思ったら、椅子に座ったおばあの目は半開きで、うつらうつらしていた。今にも眠ってしまいそうだ。

そしてケーキを見せる間もなく、
「もう、今日は寝るわ」
とゆっくり立ち上がり、そろそろとした足取りで寝室に向かっていく。

僕が前日に用意して冷蔵庫に入れておいた夕食も、あまり食べていない。国産の牛肉を使った特別版で、これもおばあの好物だけどあまり食欲がないらしい。

コロナにかかる前よりも、明らかに体調と気力の浮き沈みが大きくなった。

それはこの歳にもなると仕方がない。いくつか持病もあるし、体調はいつも万全というわけにはいかない。通っている総合病院の担当医や、デイサービスの職員からもそう聞いた。

だけどやっぱり……ほんの数ヶ月前まで、いつも元気だったおばあを見ていたぶん、複雑な気持ちになる。

ケーキは冷蔵庫のチルド室に入れ、結局6月3日に食べてもらうことにした。

6月3日、いつもより早めにおばあの家に向かう。

この日も体調がすぐれないかもしれない。それでもケーキを見て、一口でも食べてくれたら、また力がみなぎってくるはず。少しくらい眠そうにしていても、すぐに台所に行ってケーキを用意しよう!

そう決意して居間の戸を開けると――僕の不安は杞憂に終わった。おばあはいつになく元気そうで、
「もう来たんか! 早いな」
と声が弾んでいる。ケーキを楽しみにしているのが伝わっている。

早速ケーキをおばあの目の前に並べる。ひとつはケーキというより――
祖母の米寿、88歳の誕生日祝いにプレゼントしたプリンのパフェ
プリンとフルーツがのったパフェにした。

おばあは箸が持ちづらくなり、スプーンやフォークを使って食べるようになった。だから崩れやすいケーキよりも、器入りで柔らかいパフェのほうが食べやすいはず。それにおばあの好きなプリンやフルーツ生クリームがたっぷりで、味もきっと気に入ってくれる。

もうひとつは――
ピスタチオのケーキが皿に乗っている。
ピスタチオのケーキにした。これは完全に僕の好み。こちらが食べたいとおばあが言えばもちろんゆずるし、2つ食べたいと言えばどちらもあげようと思う。

するとおばあは、僕が何か言う前にパフェに手を伸ばした。さらに、
「そっちは、お前が食べや」
と僕が食べるよう促してくれた。

おばあは体調も気分も良さそうなので、インスタグラムでライブ配信をした。しばらく投稿していないので、多くの人が心配してコメントをくれることもあり、おばあの健在ぶりを伝えたかったのだ。

 
 
 
 
 
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スマホのカメラを向けるとおばあは笑顔になり、カメラ目線で
「おいしい」とか「おいしいわ」
と何度も感想を言ってくれた。

さらに点数を聞くと
「これは、100点や」
と満点の評価! 

近ごろ僕の作る料理の採点は辛口で、100点なんてなかなかくれない。器入りのパフェにしたのも、食べやすくてよかったみたいだ。

おばあの笑顔を久しぶりに見た気がする。これほどよろこんでくれて、気になるなら、誕生日だけじゃもったいない! 月初めにはいつも、大好物の甘いものを買ってきてプレゼントすることに決めた。

そして次は90歳の卒寿に向けて、毎年元気に誕生日を迎えてほしい。

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