祝86歳!サプライズで喜び倍増!?孫から祖母へのプレゼント

晩ごはんを食べにおばあの家に向かう僕は、箱を2つ抱えていた。ひとつはアマゾンから届いた段ボール箱、もうひとつは4号サイズのホールケーキが入った白い箱。この日は6月1日、おばあの誕生日だ!

いつもは甘いものを控えるよう口うるさく注意しているけど、誕生日くらいはおばあの大好きな甘いケーキを思う存分食べてもらいたい。さらに手ぶらで来たように見せかけてからプレゼントを渡し、サプライズで喜びを倍増させたい。

そう思うと僕は居ても立っても居られず、いつもより20分早く到着した。そして台所にこっそり向かうと、2つの箱を冷蔵庫の中と上にそれぞれ置いておいた。

それから居間に行くと、いつもより20分も早いのに――

イスに座ってテレビを見ている祖母(おばあ)

おばあはすでに食事を済ませ、テレビを見ながらくつろいでいた。近ごろおばあは、こらえ性がなくなったのか、僕が来る前でもお腹が減ると、ひとりでさっさと晩ごはんを食べ終えてしまう。

誕生日くらいお祝いしながら一緒に食べたかったのに。それにおばあも同じことを考えていると思っていたのに……どうして今日もひとりで食べてしまうんや、おばあ! そんなにお腹が減っていたのか?

まさか、誕生日ということを忘れている!? 膝が痛いと訴えることはあっても、頭の方はまだまだしっかりしていると思っていたのに!

いや……思い返してみると、最近、日めくりカレンダーの日にちがずれていることもしょっちゅうだし、日曜に放送の『ポツンと一軒家』を土曜にやっていないのかといったりするし……おばあの頭の中は5月のままということもありえるぞ!

ところが、壁の日めくりカレンダーに目をやると、ちゃんと6月1日になっている。そしてテーブルには――

鶏のもも焼きや煮物など、祖母(おばあ)が誕生日に作った晩ごはん

メニュー
・鶏のもも焼き
・アジフライ
・煮物
フキ、タケノコ、ゴボウの練り物、手綱こんにゃく
・スパゲティサラダ
・ほうれん草のおひたし
・サラダ
生:キャベツ、トマト
茹で:ブロッコリー、アスパラガス
・ごはん

豪華なメニューが並んでいる! 

祖母(おばあ)が誕生日に作った鶏のもも焼き

メインディッシュは見るからにジューシーで、ほどよい焼き目のついた鶏のもも焼き。前回のクリスマスにも出てきたおばあの得意料理だ! それに―― 

祖母(おばあ)がが買ってきたアジフライ

じゅうぶんメインにもなる惣菜のアジフライが、付け合わせ扱いだ!

祖母(おばあ)が作ったコンニャクとフキとタケノコの煮物

旬のフキが入った煮物もあるし、

祖母が晩ごはんに用意したスパゲティサラダ

スパゲティサラダや、

祖母(おばあ)が作ったほうれん草のおひたし

ほうれん草のおひたしという小皿のおかずも充実している。

祖母(おばあ)が作った、トマトやブロッコリーが乗った野菜サラダ

そして、いつものサラダは何だか山盛りだ。

これはもう、誕生日のスペシャルメニューとしか思えない! ということは、僕がケーキを買ってくることも、毎年のことだからしっかり覚えている!? 

そのケーキが待ちきれず、晩ごはんをさっさと食べてしまった。そういうことなのか!?

「さっきから何してんねん! 早よ食べえや!」
とおばあの大声が飛んできた。やっぱりそうだ。僕が食事を終えてケーキを出してくるのを、おばあは心待ちにしているんだ。

おばあの期待にこたえて、僕は鶏のもも焼きにかぶりつく。続いてアジフライをかじり、ごはんをかき込み、小皿に箸を往復させて食べすすんだ。

全て平らげ一息つくと、向かいの席のおばあがこちらを横目でうかがい、何だかそわそわしている。

ケーキがあることを、やっぱりおばあは見抜いている。もう隠しても仕方がないので、僕は台所に急ぎ、ケーキの準備をして居間に戻った。

ケーキをテーブルに置くと――

祖母(おばあ)の誕生日に買ってきたイチゴのショートケーキ

すかさずおばあが手に取った。

「ロウソクもあるんやけど――」
僕がいい終わらないうちに、
「そんなんええから、さっさと切れ!」
と指示を出す。

僕はロウソクをあきらめて、皿を並べはじめた。するとおばあは、
「何してんねん!」
我慢の限界がきたようで、自ら菜切り包丁をつかみ――

祖母(おばあ)がホールの誕生日ケーキを包丁で切っているところ

ためらいなくケーキを切り、

切った誕生日ケーキを包丁で取り分けているところ

4分の1個ぶんと、メッセージ入りのホワイトチョコプレートを――

皿に取り分けたイチゴの誕生日ケーキ

自分の皿に取り分けた。

生クリームがついた指を舐めている祖母(おばあ)

そして指についたクリームを舐めると、

誕生日ケーキを食べている祖母(おばあ)

バクバクとスプーンで食べすすめる。上に乗ったイチゴは――

いちごを食べて酸っぱい顔をしている祖母(おばあ)

思った以上に酸っぱかったらしく、顔をしかめてしばらく耐える。ショートケーキはイチゴの酸味とクリームの甘さのコントラストがおいしいのに、おばあはとにかく甘ければ甘いほどいいらしい。

誕生日ケーキをスプーンで食べている祖母(おばあ)

吸い込むように残りを口に放り込み――

誕生日ケーキのネームプレートを食べている祖母(おばあ)

チョコプレートは最後に、じっくり味わうように平らげる。

祖母(おばあ)が誕生日ケーキを食べたあとの皿

全部食べ終えたおばあは、お茶を飲んで椅子の背もたれにもたれかかる。その視線の先には――

祖母(おばあ)の誕生日に買ってきたケーキを皿に取り分けたところ

僕のぶんのケーキ。おばあはまだ食べ足りないみたいだ。

祖母(おばあ)の誕生日に買ってきたホールケーキの半分

あと半分残っているので、
「今日くらいもっと食べたらええやん」
とすすめてみると
「もうええわ!」
おばあは大声で拒否する。なんだかわざとらしい。本心では食べたくても、太るのを気にして強がっているのに違いない。

そういうことなら、今年はケーキ以外にもプレゼントがある。僕は素早くケーキを食べ終え、残りを冷蔵庫にしまった。

もうひとつのプレゼントを渡せば、あと少し食べたいということは忘れて、満足してくれるはず。僕は冷蔵庫の上に隠しておいたアマゾンの箱を開け、中身を取り出し組み立てた。それをおばあの前に持っていく。

祖母(おばあ)の誕生日にプレゼントした足置き(オットマン)

「これ何や? イスか?」
おばあが聞くので
「そこに足を乗せたら楽やで」
と僕は説明する。

プレゼントは、足置き(オットマン)として使えるスツールだ。中にはモノが入れられるし、使わないときには折りたたんでコンパクトになる。

イスに座ったままここに足を置けば、おばあが悩んでいる膝の痛みも少しはやわらぐはず。おばあはいわれた通り、

祖母(おばあ)が足を載せているオットマン(足置き)

足を乗せる。
「どう? 膝は?」
僕が聞くと、おばあは無言でテレビを見はじめた。人一倍、強がりなおばあは、素直に感想をいえないのだろう。それでも見たところ足は楽そうだし、言葉に出さなくても喜んでくれていたらそれでいい。

そう思っていたら
「これ、ええやん!」
とおばあは大きな声でいった。珍しく素直なことをいうなんて、かなり満足してくれたみたいだ。それにやっぱり、言葉に出してくれたほうが僕もうれしい。

「今日の鶏のもも焼き、おいしかったで!」
僕も料理の感想を口にした。
するとおばあは、
「そうか」
と珍しく静かにうなづいた。

オットマンに足を乗せ、椅子に座ってくつろいでいる祖母(おばあ)

 

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