おばあが選ぶ、冷凍シュウマイ!なぜ一度に2種類も出すのか、謎を解く

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味の素「プリプリのエビシューマイ」を電子レンジで温めて皿に乗せたところ

今晩のメニューはシュウマイだ! 中央にピンクのエビが乗った一口サイズのかわいいやつを、おばあがひとつひとつ丁寧に……つくったわけじゃない。これは味の素冷凍食品の「プリプリのエビシューマイ」。名前の通りプリップリと弾けるようなエビの食感と、電子レンジで温めるだけの手軽さを、おばあは冷凍ギョーザ並みに気に入っているらしく、2週間に1回は食卓に並ぶ。それでも出てくるたびにうれしくなるのは、僕もこのシュウマイが好きだから。

味はあっさりしていて、他にどんなおかずがあっても相性は悪くない。だからといって今晩は、このエビシュウマイの隣にーー

日本ハム「四川焼売」や、冷蔵シュウマイ、子持ちシシャモなど祖母(おばあ)が作った晩ごはん

メニュー
・味の素冷凍食品「プリプリのエビシューマイ」
・謎のシュウマイ

・子持ちシシャモ
・たまご焼き
・干しぜんまいと厚揚げの炊いたん
・もずく酢
・サラダ
生:ミニトマト、玉ねぎの醤油漬け、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス
・ごはん

どうして別のシュウマイがあるんだ!?

日本ハム「陳建一 国産豚の四川焼売」を温めて皿に乗せたところ

丸っこい形といい白い皮で包まれているところといい、たしかにこれはシュウマイだ。だけどいつものエビシュウマイより茶色っぽくて、大きさも倍くらいある。もしかして……おばあはこれを、シュウマイとはまた違う、別の何かだと思っているのでは!?

いや、本当にそんなことがあるだろうか。僕も現物を見たことがないタピオカミルクティーとか、イランに行ったとき何かわからず口にした羊の睾丸だったら、知らないのも無理はない。だけどこれはシュウマイだぞ。常識が通用しないことがあるおばあでも、さすがにわかるだろう。

「おばあ、今日はなんでシュウマイが2種類もあるんや?」
恐る恐る聞いてみると、
「なんでって、そんなんあってもええやろ! 早よ食べや!」
と大声が返ってきた。おばあに料理のことを聞くと、文句をいわれていると勘違いするらしく、虫の居所が悪いとこうして怒鳴られてしまう。

これ以上怒られるのも嫌なので、ひとまず謎のシウマイを口に運ぶ。かじってみると思った以上に柔らかく、自然な甘みがあって、いつも食べているエビシュウマイよりも本格的な中華料理という感じ。ひき肉の味や食感もしっかりとあって、出来合いのものとは思えない手づくり感がある。

まさか、おばあがこれをひとつひとつ丁寧に……。そうだとすると、いつの間に中華料理の技術を習得したんだ!? おばあがつくれる中華料理といえば、豚肉の代わりに総菜の鶏のから揚げを使い、酢豚の素で味をつけた〝酢鶏″くらいだ。

とはいえ、おいしいものを食べることにかけては、85歳の今でもおばあは手間を惜しまない。僕も驚くようなメニューが、いきなり食卓に並んだりする。テレビの料理番組か何かで、簡単に本格的なシュウマイをつくれるレシピでも紹介していたのかもしれない。

「おばあ、このシュウマイはどうしたんや? つくったんか?」
また怒られることを覚悟してたずねた。するとおばは声を荒げるどころか、黙って立ち上がり、そのまま無言で台所に向かって行った。

わけもわからずその様子を目で追っていると、すぐに戻ってきた。そしてテーブルに置いたのは――

ニッポンハム「中華の鉄人 陳建一 国産豚の四川焼売」のパッケージ

冷凍シュウマイのパッケージ! 「中華の鉄人 陳建一 国産豚の四川焼売」とある。謎のシュウマイの正体は、これだったのか!? さすがに陳健一の味をおばあが再現したわけではなかった。それを可能にした日本ハムの技術がすごかったのだ。

パッケージをよく見ると、〝2種類のシュウマイ″の謎を解くヒントが載っていた。内容量が6個と表示されているのだ。僕の皿に乗っていたのは5個。つまりひとつだけ減っている。そのひとつは、おばあの胃袋に消えたのに違いない。おばあは僕が来るより先に食事を終え、今はのんびりとテレビを見ている。

はじめは、僕にいつものエビシュウマイを出し、自分はこの陳健一のシュウマイを食べるつもりだったのだろう。それが思いのほか食べごたえがあり、ひとつでお腹がいっぱいになってしまった。それで残りも僕にくれて、2種類のシュウマイが並ぶことになった。きっとそういうことだ。

今晩はシュウマイの他にも――

焼いた子持ちシシャモを皿に乗せたところ

子持ちシシャモや、ゼンマイと厚揚げの煮物

ゼンマイと厚揚げの煮物、

もずく酢

もずく酢に、

祖母(おばあ)が作った玉子焼き

たまご焼きまである。

ちょっと前のおばあなら、これくらいペロリと平らげることができた。だけどさすがに80代も半ばを過ぎると、食べられる量が減ってきているみたいだ。それに、おいしいものが余ったからといって、以前は僕にくれることもなかった。自分のぶんはきっちりとっておいて、翌日の朝か昼に食べていたのだ。

そうか、食べることへの情熱を保てなくなってきているのか……。向かいの席に目をやると、おばあはまたイスから立ち上がり、自分が食べたぶんの皿でも洗うのか台所に向かって行った。足元が少しふらついているようで、背中が一段と小さく見えた。

ぼうっと台所のほうを眺めていると、おばあはまたすぐに戻ってきた。さっきよりどことなく足取りは軽く、片手には何かを持っている。席に着くと、パクっと――

森永乳業のアイスバー「PARM(パルム)抹茶」を食べる祖母(おばあ)

手に持つ緑のものに噛みついた! アイスクリームだ!

森永乳業のアイスバー「PARM(パルム)抹茶」をかじる祖母(おばあ)

先がやや尖った、たまご型のような形。そして棒が付いているアイスといえば、PARM(パルム)! このアイスを選ぶとは、さすがおばあ、おいしいものをわかっている。僕も自分の家の冷蔵庫にいくつかストックしてある。ふつうのはチョコレート味だけど、抹茶味もあったのか。このアイスを選択し、総入れ歯の口でかじりついているおばあの姿に、なんだか底知れぬものを感じる。

僕は間違っていた……。おばあは食べることがまだまだ大好きだし、食欲も決して衰えてなんかいない! しばらくは元気でいてくれそうでうれしいけど、これで大きな謎が残ってしまった。それは――

森永乳業のアイスバー「PARM(パルム)抹茶」を手に持っているところ

だから、どうして、シュウマイが2種類もあるんだよ! 叫び出したいのをこらえながら、僕は陳健一のシュウマイをかじった。