具材は野菜だけ!まさかスープも?おばあ特製、精進ラーメン!?


具材は野菜だけ!まさかスープも?おばあ特製、精進ラーメン!?

居間の戸を開けると、テレビを見ていたおばあが振り向いた。まじまじと僕の顔を見て無言でイスから立ち上がり、すり足で台所に向かう。僕が来るのを待っていたように台所に行くということは、つくりたてを食べないと味が落ちる料理を用意しているはず。例えば、つくり置きしていると伸びてしまう麺類!

おばあはもともと、柔らかいものが上等という価値観を持っていた。それが歳とともに自分の歯を失い、総入れ歯になって固いものが噛めなくなると、柔らかさ至上主義にますます拍車がかかった。今ではおばあが口にする麺類は、箸で掴むだけで崩れてしまう離乳食のような柔らかさ。僕が固めが好きだと伝えても、何がいいのかまったく想像できなかったらしい。それでも麺が出てくるたびに僕は固さ希望をいい続けた。すると最近になってようやくおばあは、麺の固さに好みがあることを理解してくれた。

今日もおいしい麺が食べられる! うどんだろうか、それとも……。僕はごくりと唾の飲み込み、おばあの後を追った。

ラーメンの麺の袋を開ける祖母(おばあ)と刻んだ具材

台所でおばあが袋の中から取り出していたのは、黄色い太めの、中華麺! 麺類の中でもラーメンは僕の好物だ。

ラーメンの具材として刻んだタケノコ、にんじん、もやし、そして中華麺

もやし、にんじん、タケノコ。彩りがいい具材も、たっぷりと下ごしらえしてある。軽く茹でてあるけど、歯ごたえはしっかり残っていそうだ。麺は柔らかいものが好きなおばあも、タケノコやもやしの食感のよさはわかっているらしい。

片手鍋で温めているラーメンのスープ

コンロの上では、醤油色のスープが火にかけられていた。そういえば、さっきおばあが破っていたのはインスタントラーメンの袋ではなく、スープがついていない中華麺だった。ということは、このスープはおばあのオリジナル!? いや、おばあがつくれる醤油色のスープといえば、カツオと昆布の合わせダシくらいだ。まさかおばあは、和風ダシのラーメンをつくろうとしているのか。それはそれでおいしそうだけど。

「このラーメンのスープ、おばあがダシとったんか?」
と聞くと、
「ラーメンのダシなんかとれるか!」
とおばあはキレ気味に答えた。

片手鍋のラーメンに野菜を乗せたところ

スープの謎は解明されないまま、おばあは鍋にテキパキと麺や具材を投入し、

鍋にラーメンと野菜を入れて祖母が菜箸で混ぜているところ

菜箸で手早くかき混ぜる。調理時間はわずか1分ほどで、

湯気を上げる野菜だけのラーメン

片手鍋からどんぶりに流し込んで完成! テーブルに持って行くのだけは僕の仕事だ。どんぶりを両手で持った僕が背を向けると、おばあは自分のラーメンの調理に取り掛かった。

「さっさと食べや!」
とおばあの大声が聞こえた。おばあが来るまで僕が食べるのを待ち、麺が伸びてしまわないように気をつかってくれているのだ。そこまで固めの麺のよさがわかるのなら、おばあも茹で時間1分にすればいいのに。

野菜ラーメンや茹でもやし、サラダなど、祖母が作った野菜だけの晩ごはんのメニュー

メニュー
・ラーメン
中華麺、タケノコ、にんじん、もやし
・もやしのおひたし
・タケノコと手綱こんにゃくの炊いたん
・サラダ
生:ミニトマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草

食卓にラーメンを置いて気がついた。今日のメニューには何かが足りない。ラーメンに入っている3種の具材は、色と歯ごたえが違うのはいいけど全部野菜だ。

祖母(おばあ)が晩ごはんに用意した茹でもやし

ラーメン以外のおかずも、もやしを茹でて醤油をかけたおひたしに、

祖母(おばあ)が晩ごはんに用意したタケノコと手綱こんにゃくの煮物

タケノコと手綱こんにゃくの煮物、そしていつものサラダという組み合わせ。一品ずつはどれもおいしそうだけど、野菜しかないというのは見るからに物足りない。ベジタリアンじゃあるまいし、おばあもこれで満足できるのか。

テレビ番組に感化されやすいおばあが、精進料理を特集する番組でも見たのではないか。だとしたらあの謎のラーメンのスープは、植物性の食材だけを使った野菜醤油スープなのでは……。家で食べるラーメンのスープといえば、化学調味料が山盛り入っているような、あのジャンクな感じがいいのに。ヘルシー野菜スープのラーメンなんておいしいのだろうか。

とにかくスープをすすってみようと、どんぶりに手を伸ばす。すると台所からおばあが包丁を持って現れた。反対の手には、ラップに包まれた何やら白いものを握っている。僕の席に近づくと包丁を構え、片手で器用にラップの中のものを指先に置いた。

祖母(おばあ)が茹で玉子を包丁で切っているところ

包丁を入れはじめたのは茹でたまごだった。僕のラーメンの上に、3つに分かれてぽとぽと落ちた。

おばあは精進料理の番組なんて見ていなかった。それよりも最近、僕と一緒に見た、「動物性のタンパク質をしっかりとったほうが健康で長生きできる」という番組の内容を覚えていたのに違いない。いや、自分のラーメンをつくっているうちに思い出したのかもしれない。

ゆで玉子を乗せた野菜ラーメン

台所に向かうおばあの背中を見送り、僕は両手でどんぶりを底から持ち上げた。そして口をつけて傾ける。口の中に流れ込んできたスープは、濃厚なうま味と強い塩気がガツンと効いていた。

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