冬至にかぼちゃで無病息災!おばあがつくった『南瓜』の煮物は孫のため!?

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冬至の日におばあがつくった、かぼちゃの煮物など、晩ごはんのメニュー

メニュー
・冬至の煮もの
かぼちゃ(南瓜)、里いも、手綱こんにゃく、厚揚げ
・サワラの焼いたん
・黒豆煮(フジッコ おまめさん)
・ごはん
・サラダ
生:トマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草

おばあはかぼちゃの煮ものを、箸でつかもうとしていた。ところがかぼちゃは柔らかく、果肉がペースト状につぶれ、箸のあいだからぼとりと抜け落ちる。おばあは表情ひとつ変えることなく、平然と左手でかぼちゃをつまみ、総入れ歯のはまった口を大きく開いてかぶりついた。

「今日は冬至やから、南瓜食べる日や」
口をもぐもぐ動かしながら、おばあがいう。

冬至の日におばあがつくった、カボチャの煮物

冬至といえばたしか、一年のうちで昼が最も短い日だ。日の出と日の入りの時刻が日々変化しているように、冬至の日にちも毎年微妙に変わるはず。今年は12月22日だったのか。壁にかかったカレンダーには、「先負」という表示はあるものの、「冬至」の文字は見つからない。

人の名前だと覚えられないどころか、どんどん忘れていくのに、毎日その日が何の日なのか、おばあは僕よりもずいぶん詳しく知っている。冬至なんて毎年違うのに、どうやって今日だと気が付いたのだろうか。

おばあがつくった、焼きすぎた鰆(サワラ)

「今日、八百屋に行くとな、南瓜がほんまに、山のように積んであったんや。それを買いに来とるんもようけおって、人をこう、かき分けて、南瓜の前に行ったんや」
口の中のかぼちゃを飲み込んだおばあは、じょう舌に語りはじめた。かぼちゃのことになると、おばあはなぜかよくしゃべる。かぼちゃに人だかりができるなんて、大げさな気もするけど、僕は黙って聞いていた。風邪気味なのか喉が痛いので、おばあといい争いするのを避けたかった。

「南瓜は皮のしっかり張ったやつがええんや。そんなんを選んで、八百屋で切ってもろうた。家では固うて切れんからな。この前は八百屋のおっさんおらんかったから、向かいの果物屋で切ってもろうたけどな。今日はおっさんがおって、すぐに切ってくれたわ」

おばあはひとしきり話すと、次は焼き魚に箸を伸ばした。焼きすぎて固くなっているらしく、魚の身に箸がなかなか刺さらない。おばあは表情ひとつ動かさず、平然と左手で魚をつまんでかぶりついた。

さっきおばあは、八百屋にはかぼちゃが山のように積まれていたといっていた。それを見て、今日がかぼちゃを食べる冬至だと気が付いたのかもしれない。疑問をぶつけると、おばあは
「そんなん見んでも、八百屋に行く前から知っとるわ!」
と声を荒げた。

おばあが冬至の日につくった、たまごと白菜入りの味噌汁

「八百屋に行く前から」だとすると、テレビ番組で冬至の話題をやっているのを見たのだろうか。NHKの朝のニュースなんかでやっていそうだ。僕は喉が痛くて、あまりしゃべりたくなかったけど、一度気になったことを聞かずにはいられなかった。

「テレビでも見てへんわ! お前が風邪気味やいうから、ええもんないかと思っとったんや。そしたらもう冬至ちゃうかなと。冬至に南瓜食べたら、その一年間――」
「金に困らんのか」
「ちゃうわ! 病気せんと暮らせるいうんや。そんで朝一緒に歩きに行っとる、ナカムラさんに聞いたら、今日がそうやというもんやから南瓜、買うてきただけや」

僕は黙って、手づかみでかぼちゃを口に入れた。濃いめの味付けで引き立てられた強い甘みが口じゅうに広がる。おばあがさらにしゃべりかけてくる。
「お前、月曜日、金沢に出張や、いうてたな。あそこは大阪より寒いからな、風邪やったら治していかなあかんで」
柔らかい果肉がすりつぶされ、喉の奥に滑り落ちる。いがいがとした喉の痛みが消えていくように感じた。

おばあがいつも健康のためにつくる野菜サラダ