台湾出張特別編!台湾グルメに誘われて、目的を見失う寧夏夜市

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台北での仕事のあと、夕飯を終え、泊まっているホテルの前まで帰ってきた。夜も更けているので、さっさと部屋に戻って、翌日に帰国するための荷造りをしたい。だけどまだやり残したことがある。日本で待つおばあに土産を買っていないのだ。

台湾の都市では、深夜まで店先や屋台に明かりが灯る夜市が開かれている。前日は電車で、台湾で最大規模という士林夜市に行ってきた。たしかホテルから歩いて行ける距離にも夜市があったはず。フロントで正確な場所を教えてもらった僕は、寧夏夜市に向かった。

寧夏夜市の屋台が立ち並ぶ通り

エリア一帯が夜市になっている士林夜市に比べると、寧夏夜市の規模は小さい。一本の広い通りの左右の店舗と、その内側に立ち並ぶ屋台の列だけでできている。それでも、深夜にもかかわらず祭りのような活気がある。

寧夏夜市の通りでパチンコで遊ぶ人々

通りを歩いていると、路上のイスに一列に座った地元民らしき人たちが楽しそうな歓声を上げていた。

台湾(台北)の寧夏夜市の通りのパチンコ屋

彼らの前方には、ぬいぐるみなどのキャラクターグッズが所せましと陳列されている。それを目当てに、お金をかけてゲームに興じているらしい。

台湾(台北)の寧夏夜市の通りでパチンコを遊ぶ女性

近づいてみるとパチンコだ。1元(約3.6円)で、玉が1発だけ出る仕組みらしい。玉が“当たり”のところに入ると、ハローキティが描かれた切手状のシートが1枚ずつ連なって飛び出してくる。

客は全員、カップルだ。ディズニーものやリラックマなどのぬいぐるみを彼女にプレゼントするために、彼氏のほうが必死になってがんばっている。日本でいうところのゲームセンターのUFOキャッチャーみたいなものだ。1回あたりの金額が安くて長く遊べそうだけど、景品を獲得するまでついついお金を投入しすぎてしまうのは同じだろう。

おばあにぬいぐるみを獲って帰ったところで喜ぶはずがない。動物は家畜か害獣かくらいの区別しかないので、おばあは動物をかたどったぬいぐるみを愛でることはないのだ。そもそもリラックマが台湾土産になるとは思えない。

寧夏夜市の屋台で売られているアヒルの頭の料理

甘辛くおいしそうな香りに誘われて、屋台を覗いてみると、アヒルの頭の燻製のようなものが積み重なっていた。長い首やくちばしの感じが少しグロテスクだ。だけどその周りに並べられた大きなソーセージや串焼きが、タレの香りと相まって食欲をそそる。

台湾(台北)の寧夏夜市にある魯肉飯の店

通りの脇には飲食店が立ち並んでいる。深夜でも客足が絶えず、店内ではおじさんが山盛りのごはんをかき込んでいた。

台湾(台北)の寧夏夜市にある魯肉飯の店の内観

メニューには『魯肉飯』とある。たしか読み方はルーローファン。台湾の人たちが日常的に食べているソウルフードだ。僕は台湾に来たというのにフライドチキンやマンゴーかき氷なんて浮ついたものばかり食べて、地元の味を堪能しきれていない。すでに夕飯を終えていてあまりお腹が減っているわけじゃないけど、ここで食べておかないと帰国後に後悔する気がする。

台湾(台北)の寧夏夜市で食べた魯肉飯

しかも1杯20元(約70円)と値段も安い。注文すると間髪入れずに出てきた。量は普通のご飯茶碗に1杯ぶん。本来なら他のおかずも組み合わせて1食にするようだ。小腹が空いている程度の、今の僕にはちょうどいい量だ。

ごはんには豚肉の細切れがのっている。醤油色に煮詰めてあるけど、口に入れると意外にあっさりしている。日本の牛丼のタレをやや薄めたような味付けは、これ単品でも、他のおかずと組み合わせても満足できる絶妙な濃さ。脂が溶けてごはんに絡んだねっとりとした食感もいい。

 

台湾(台北)の寧夏夜市にあるお茶屋

食事を終えて店を出ると、同じ並びにスターバックスみたいなメニュー表をかかげたカウンターに出くわした。店名は『寧夏鮮茶棧』。お茶の店のようだ。何も飲まずに魯肉飯をかき込んだので、ちょうど喉が乾いていた。口の中には豚肉の脂が残っている。さっぱりしたものが飲みたい。それでいて台湾らしいものがないかメニュー表を眺めていると、日本では見かけたことのない『烏龍緑茶』なるものを発見した。注文すると甘くするかどうか聞かれたので、そのままでいいと答えた。

台湾(台北)の寧夏夜市で飲んだ烏龍緑茶

25元で購入し、ひと口すする。まさに烏龍茶と緑茶を合わせたようなほのかな苦味と、しっかりとした香りがある。かといってただ混ぜ合わせただけという感じはしない。どちらも特徴を相殺し合うことなく融合している。少しずつ味わいながら飲み終えた。

台湾(台北)の寧夏夜市にある屋台のフルーツ店

荷造りをしないといけないのに夜市に長居してしまった。ホテルに引き返そうと通りを曲がったところで、色とりどりのフルーツがひしめく屋台に行き当たった。立ち止まると、店主のおじさんがしきりに、切り分けたドリアンの果肉をすすめてきた。手に持つとずっしりと重い。お腹がいっぱいなので断ると、今度は見たことのない赤い皮の果物をひと切れくれた。

りんごのようだけど滑らかなカーブがあって見た目よりも軽い。おじさんが指差すところには、洋梨のようなくびれのある果物が並んでいた。名前は「リエンウー」というそうだ。口に入れると、りんごよりも軽いしゃきしゃきとした歯ごたえ。水分が多く、りんごと梨の中間のような味だ。

台湾(台北)の寧夏夜市の屋台で買ったフルーツ、蓮霧(レンブ)

1パック25元で購入し、ホテルに持って帰った。ネットで検索すると正式名称は蓮霧(レンブ)といって、台湾では公園の木にもなっているポピュラーな果物だそうだ。次の日の朝に食べようと思ったけど、荷造りをしながら全部平らげてしまった。

荷物を入れ終えたスーツケースには、まだスペースがある。僕は土産でも買って帰るために大きめのスーツケースで台湾に来たのだった。そうだった! さっき僕は、おばあへの土産を買いに寧夏夜市に行ったのだ。それなのに、いつの間にか本来の目的を忘れて食べ歩きを楽しんでいた。

さっき口にしたすべてのものを、おばあにも味わってもらいたい。だけどどうせ持って帰れるものじゃなかった。昨日も思ったように、やっぱりいつか連れて来たい。寧夏夜市では、おばあに楽しませたいリストができたからよかったことにしよう。ひとまず土産は空港で買おうと決めて、僕はスーツケースを閉じた。