アク抜きはかまどの灰で?おばあが子ども時代を懐かしむ。わらびとたけのこの炊いたん

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わらび、たけのこ(2日め)
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大根、じゃこ
・手羽元とハンバーグの揚げたん(2日め)
手羽元、ハンバーグ(肉屋で購入)
・みそ汁
菜の花、豆腐、玉ねぎ、青ネギ
・サラダ
生:トマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草
・ごはん

昨日も食べたたけのこの煮物に、黒に近い紫の、細長くぐねぐねしたものが束になって一緒に盛られている。くるっと丸まった端のほうが深い緑色している。どうやら植物の一種らしい。焚き火にくべた生木の枝がいびつに曲がり、不完全燃焼で炭になったみたいだ。味は苦そう。

ひとつ箸でつまむとやわらかく、持ち上げるだけで煮汁が染み出してきた。今まで何度かおばあが煮物にした、ぜんまいという山菜の感触を思い起こさせる。煮崩れせずにやわらかくなり、味が染み込むぜんまいは煮物にぴったりだった。だけどあれを苦くしたような珍味なら……あまり食べたいとは思わない。まずは無難に、隣のたけのこから口にしよう。

僕は箸でつまんでいた黒い山菜のようなものを元の場所に戻した。すると、
「それはわらびや。ええから、食うてみいや」
テーブルの向かい側に座るおばあがいった。わらびというのは、ぜんまいと同じシダ植物で、たしか緑色だったはず。おばあにそういうと、
「黒いのもある。山の奥から採ってきたんを、人からもろたんや」

おばあが子どものころ住んでいた愛媛の山奥でも、春になると黒や緑のわらびを採ってきていたという。その下ごしらえや調理をおばあがよく手伝っていた。そう語るおばあの表情はおだやかで、子どものころの風景を懐かしんでいるみたいだ。調理している最中は、子どものころの記憶をたどる幸せなひとときだったのに違いない。

わらびを調理する前には、下ごしらえが欠かせないのだとおばあはいった。アクが多く、そのままでは渋くて食べられないそうだ。まずはわらびと水を入れた鍋を火にかけ、沸騰したところで灰を投入する。そして鍋を火から離し、一晩放置することでアクが抜けるのだ。

「その灰はどこから持ってくるんや」
僕が疑問を口にすると、
「かまどや!」
おばあは力強く答える。だけど現在、おばあが住む家の台所にはもちろん、薪をくべるかまどなんてない。今日の煮物のわらびはどうやってアク抜きしたのだろうか。おばあに聞くと、
「そんなんええから早よ食え!」
と怒鳴られた。

僕はわらびを一本、箸でつまんで口に運ぶ。ふにゃりとしているのに少し歯ごたえの残る独特の食感があとを引き、次は数本まとめて口に入れた。染み出してくる煮汁に、わらびのものらしいとろみが加わっている。苦味も、渋みもまったくない。アク抜きはされている。だけどおばあはかまどの灰を使う方法を語っても、今回はどうやったのか教えてくれなかった。

おばあはわらびは人からもらったといっていた。おそらくその時点で、すでにアク抜きされていた。だからおばあは、かまどがない台所でどうやってアク抜きをするのか知らないのだ。

食後、グーグルに聞いてみると、灰の代わりに重曹を使えばわらびのアクは抜けるらしいことがわかった。近いうちに重曹を買ってきて、おばあにアク抜きを実演してもらおう。僕も見てみたいし、おばあも楽しんでくれるかもしれない。問題はわらびがどこにあるかだ。近くの山に行ってみよう。いや、その前に付近のスーパーを回るのが先だ。