前回おばあに出した“お取り寄せ”のハンバーグは――
僕がケチャップをかけすぎたせいで、惜しい点数をつけられてしまった。次はイチから手作りして満点とってやる！ とやる気の炎を燃やしているところに、広島の知り合いが送ってくれたのが――
インスタントの尾道ラーメン！
ハンバーグも作ってみたいけど、麺といえば、この前ベトナムの麺を出して――
かなり微妙な顔をされたから、ラーメンで挽回したい！
おばあも僕も大好きなハンバーグとラーメン……単には決められない。
迷ったときは、そう…
「手作りハンバーグと尾道ラーメン、どっちが食べたい？」
と決断力のあるおばあに聞けばいい。すると、さすがのおばあもちょっとは迷ってくれるかと思ったら、
「ラーメン！」
と即答！？ 僕の手作り、そんなに信用できへんのか、おばあ！
でも、悔しいけどその気持ちもわかる。この阿藻珍味の尾道ラーメン、以前おばあと食べて――
インスタントとは思えないほどおいしかった！
しかも今回は――
“あっさり”と“濃厚”も入っている“味比べ”バージョン！
僕は『濃厚‼焦がし醤油仕立て』を食べてみたいけど、おばあの好みも“濃厚”だ。ここは黙って、しれっと普通のやつをおばあに……と、よからぬ考えが一瞬よぎったけど、おばあには好きなものをたっぷり食べて、もっと元気になってもらわなければ。
というわけで、
まずは、おばあにゆずった“濃厚”の、
麺をゆでる。表示の時間は1分半だけど、おばあは柔らかめが好みなので
その３倍以上長くゆでる。
スープは――
真っ黒で、見るからに濃厚。以前おばあと食べた“富山ブラック”ラーメンを思い出す。あのときはおばあが作ってくれて――
具材の豚バラ肉が絶妙に合っていた。
だから今回も具材には豚バラだ。
ほかには葉物野菜とニンジン、そして玉ねぎを多めにトッピング。ラーメンは塩分が多いから、せめて野菜で、少しでもおばあの血圧上昇をおさえたい。
そこに――
温めてたスープを加えて、刻みのりをちらし、
できあがったラーメンを食卓に持っていくと――
おばあはフォークと介護用スプーンをつかみ取り、いきなりトップスピードで麺をすする。
焦がし醤油の香りに、食欲がそそられたらしい。
この食べっぷり、そして――
この笑顔。やっぱりおばあに“濃厚”をゆずってよかった！
感想を聞くと
「おいしい！」
と高評価！ この前出したベトナムの麺とちがって、今回は笑顔で満点をもらえそう！
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期待を込めて点数を聞くと、
「69点」
って……うそやろ……60点台って、これまで僕が作った料理の中で……最低点やんか、おばあ！
たまらず理由を聞くと、返ってきた答えは、
「肉が固い」
しまった！ 原因はラーメンじゃなくて肉とは！ 油断した！ せっかく鰹節のダシで肉をゆでたのに、麺のように長くゆですぎてしまった！
ラーメンは「おいしい」んだから、具材の減点は手加減してくれー！ と抗議したくなったけど……史上最低点にしては――
完食してるやんか！
点数が低いのは、“料理は細部こそ手を抜くな！” というおばあのメッセージに違いない。
それを胸に刻んで、次こそは100点もらえる料理ったるで、おばあ！
