僕の祖母・おばあ作った『おばあめし』ではなく、僕がおばあに作った『孫めし』。
そろそろおばあに美容室へ行ってもらおうと思っていた矢先、コロナにかかって入院してしまった。無事に治って退院できたのはよかったけど、髪の毛はさらに伸び寝癖がおさまらないほどボサボサに。
自宅での生活も落ち着いてきたので、ようやく美容室でカットしてもらった。これまで行きつけだったところは少し遠く、病み上がりのおばあが歩いて行くのは難しい。そこで近所で流行っている美容室を訪ねると、高齢者の送迎もやっているとのこと。どうりで客が絶えないわけだと納得し、おばあの送迎とカットもお願いした。
高齢化社会のニーズをつかむ経営手腕はすごいけど、肝心のカットの技術はどうなのか……という不安は、カット後のおばあの姿を見て吹き飛んだ。あちこち飛び跳ねていた髪の毛が短くさっぱりして、上に持ち上げたセットも、めっちゃキマってかっこいいやんか、おばあ! こんな近所に『カリスマ』がいたとは! はじめてだから心配だったとはいえ、腕前を疑ったことを謝ります。
そして、その日の昼、おばあに出したのは、僕が前日の夜に作っておいた『孫めし』だ。メインディッシュはおばあがリクエストした『豚肉』。前回も作ったけど、よっぽど気に入ってくれたみたいで僕もうれしくなる。
今回は豚肉に玉ねぎを加え、冷蔵庫に残っていたミートボールの甘辛いソースで味付け。知り合いからもらった牡蠣も添えた。
たっぷりのニンジンやほうれん草も、電子レンジで長めに加熱して甘みを出した。
豚肉の味見をしてみると、豚丼の具のようなごはんがすすむ味で、僕なら山盛り食べたいけどおばあは気に入ってくれるのか……。
ごはんはおにぎりにしてーー
ふりかけの王道『のりたま』をまぶした。きれいな三角にしたかったけど、立てるとつぶれて不格好な形に。
おにぎりを握る力加減、まだよくわからへんで、おばあ! と心の中で叫びたくなったけどーー
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おばあは見た目なんて気にする様子もなく、バクバクとすごい勢いで食べてくれた。
ついおかずを作りすぎてしまったのに、あっという間にきれいに完食! 次もおいしくて栄養も量もたっぷりの料理を用意したくなった。そういえば僕も毎回、出されたものは平らげていた。おばあはなぜ、あれほど山盛りの料理を作るのか不思議だったけど、今、その気持ちがわかった。