おばあのクリスマスディナーで、予定のない孫の心も温まる

スポンサーリンク

僕のおばあは般若心経を完全暗記している仏教徒だけど、クリスマスイブには欠かさずスペシャルディナーを用意してくれる。

毎年作ってくれるメインディッシュは、鶏のもも焼き!! 味付は超シンプルに塩のみだけど、焼き加減が絶妙で、顔くらいの大きさで食べごたえがあって、おばあの数ある料理のレパートリーの中でも僕の大好物だ。

今年もあの鶏のもも焼きを期待して、今日までの仕事になんとかケリをつけ、すっかり寒くなった外へと飛び出す。それからケーキ屋に自転車で急行してから、おばあの家にやってくると――
クリスマスイブの祖母(おばあ)とおばあが作ったクリスマスディナー
おばあは先に食事を終え、テレビを見ながらくつろいでいた。お腹を空かせて駆け込んできた僕にちょっと目を向けるだけで、平然としているのはいつも通りだけど、テーブルには――
鶏肉のもも焼きが皿の上の刻んだレタスとキャベツに乗っている
あった! 見るからに皮が香ばしくジューシーに焼き上がった、巨大でスペシャルなクリスマス・チキン、ちゃんと作ってくれていた!

さらに今年は付け合せに、ステーキによくある甘いニンジン……じゃなくて――
レタスの上に乗っている塩焼きの鶏の手羽元
焼いた鶏の手羽元まであるやんか、おばあ! 大と小、ダブルの骨付き鶏肉なんて……見たこともないけど何だかすごく贅沢だ。

まずは大きなほうから両手でつまんで、『く』の字になった内側にガブりとかぶりつく。パリっと皮が割け、内側から肉汁がほとばしる。

夜には特に予定もなく、昼間は仕事に追われていただけの普段と変わらないクリスマスイブだった。でもこれですべてが報われたような、救われたような、冷え切っていた体が芯から温まっていく感じがする。

さらに他のおかずは――
祖母(おばあ)がクリスマスに作った揚げと白菜の味噌汁
油揚げと白菜がたっぷりの味噌汁に
混ぜた納豆をご飯に乗せた納豆ごはん
納豆という和食の王道だけど、このいつもどおりの味が、かえってほっとする。それにいつもの野菜が――
赤と緑のクリスマスカラーの野菜サラダ(生ブロッコリーとピーマン、茹でたニンジン、ほうれん草)
ニンジンの赤とブロッコリーやピーマンの緑で、めでたいクリスマスカラーに見えてくる。

メニュー
・鶏のもも焼き〜手羽元添え〜
・揚げと白菜の味噌汁
・野菜
 生:ブロッコリー、ピーマン 
 茹で:ニンジン、ほうれん草
・納豆
・ごはん

じっくり味わって食べていると
「さっさと食べや!」
とおばあが珍しく、急かしてくる。

さては超甘党のおばあ、食後のデザートが待ちきれないのにちがいない! 僕はおばあの家に来る途中、クリスマス恒例のケーキを今年も買ってきていた。

テレビに顔を向けながら、僕のほうをチラチラうかがってくるおばあの無言のプレッシャーに押されて、せわしなく食べ終えると――
クリスマスに買ってきたイチゴのケーキとチョコレートケーキ
おばあお待ちかねのケーキをテーブルに並べる。今年はチョコレートとイチゴの2種類だ。おばあは好物のチョコレートを選ぶかと思ったら――
祖母(おばあ)がイチゴのケーキに手を伸ばしている
迷わずイチゴの方に手を伸ばす。とにかく甘くて濃いものが好きなおばあだけど、イチゴの酸味のおいしさに80代後半にして、ようやく気がついたのか!?

驚く僕には目もくれず――

クリスマスイブにケーキを食べる祖母
すごい勢いで食べ始める。
クリスマスのケーキをスプーンですくって食べている祖母
バクバクと吸い込むように、ケーキをスプーンですくっては口に入れ、
祖母が指でケーキのイチゴを摘まんでいる
小さなスプーンでは物足りなくなったのか、ついには指まで使ってあっという間に平らげると――
ケーキのクリームがついた指を舐めている祖母
指のクリームを惜しむように舐めてから、
食後に湯呑でお茶を飲む祖母
お茶を飲んで息をつく。

「どう、おいしかった?」
感想を聞くと
「そらそうや! 見ればわかるやろ!」
となぜか怒り気味に言われた。

いつもは甘いものは控えてほしいけど、今日は年に一度のクリスマスなので、
「チョコレートのほうも食べる?」
とケーキをもうひとつすすめてみると、
「もう食えるか!」
とまたキレられてしまった。でも表情は穏やかで、じゅうぶん満足できたみたいだ。

もちろん僕も、おばあの作ったクリスマスディナーで大満足! 残ったチョコレートケーキは自分で買ってきたものだけど、おばあからのプレゼントのような気がして、ゆっくり味わって食べた。