おばあはやっぱり肉食系! 牛肉の焼いたんと大根おろし

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昨日の晩ごはんには″牛酢鶏”が出た。おばあはよく、総菜の鶏の唐揚げを豚肉の代わりに使う酢豚の簡易版、″酢鶏”をつくる。昨日はそこに、牛肉が加えられていたのだった。なぜ豚ではなく牛なのか。そもそも、豚肉を揚げる工程をはぶくために、出来合いの鶏の唐揚げを使っているのに、なぜわざわざ牛肉を入れるのか。手間をかけてもいいなら、たまには豚肉を揚げてふつうの酢豚をつくったらいいのに。

昨日は結局、疑問の答えを聞くことができなかった。おばあは自分が思っていることでも、順序だてて言葉にするのが苦手なのだ。僕が小さいころから、おばあは考えたり話したりするより先に、とにかく行動するようなところがあった。

歳を取ってからその傾向がますます強くなっている。一度に発する言葉は短くなってきているし、僕が話すときも要点だけを簡潔に伝えないと理解してくれない。ただ、膝が痛いとはいうものの、行動力は衰えておらず、毎朝の1時間のウォーキングと、週3で通う女性専用フィットネスクラブは休まず続けている。

料理も自分の足で商店街を回り、食材を買ってきて、おいしくつくることができている。とはいえ、なぜその料理を選んだのかは、やはり説明してくれない。理由はあるけど言葉にできないのか、直感で頭に浮かんだメニューをつくっているだけなのか。それすらも、はっきりとした答えは返ってこない。

だけど料理そのものが、おばあの意図を語っていることがある。今晩のメニューがまさにそうだ。

牛肉の焼肉、大根おろし、タケノコの煮物など、祖母(おばあ)が作った晩ごはんのメニュー

メニュー
・牛肉の焼いたん
・たけのこの煮物
・大根おろし
大根、じゃこ
・みそ汁
豆腐、ほうれん草、たまご
・サラダ
生:ミニトマト、春キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草
・ごはん

和牛の肉の焼いたん

この山盛りの焼いた牛肉! 細かなサシから澄んだ脂が溶け出し、柔らかそうな肉、一枚一枚の表面をうすく覆っている。たまらず一枚、口に放り込む。舌にさっと脂の膜ができ、滑らかな舌触りとともに甘みを感じる。奥歯にはさんで顎に力を入れるか入れないかのところで、肉がばらばらにほどけていく。じっくりと牛肉の甘みとうま味を感じながら飲み込む。後味は脂っぽくなくてさっぱりしている。これはおばあがたまに買ってくる和牛の肉だ。

テーブルの向かい側に目をやると、おばあも牛肉を口に放り込んでいた。そしてゆっくりと口を動かす。この肉は総入れ歯でも噛み切りやすいだろう。おばあはやがて目をつむり、口の中のものをごくりと飲み込んだ。

おばあは牛肉が食べたかったのだ。それに味の濃い酢鶏も好物である。昨日はどちらにするか迷った挙句、酢鶏に牛肉を投入するという、はたから見ると意味不明な行動に出たのだろう。ちょっといい牛肉を買ってきたのは、牛酢鶏を味わって、さらに牛肉が食べたくなった反動に違いない。

祖母(おばあ)が作ったタケノコの煮物

たけのこの煮物は昨日も食べたけどまったく飽きない。適度な歯ごたえがあり、ダシの効いたうす目の味付けで、やわらかな牛肉との相性もいい。

玉子や菜っ葉など、具だくさんのみそ汁

みそ汁はたまご入りで、

じゃこを乗せた大根おろし

じゃこが乗った大根おろしもある。口に入れてみると、甘味の中に少し辛味がある。塩だけでシンプルに焼いた牛肉に合わないはずがない。ポン酢の加減もちょうどいい。これはもう――

焼肉に大根おろしを乗せたところ

乗せるしかない!

作業を終えて顔を上げると、おばあと目が合った。
「こうやって食べるんやろ?」
と聞いてみると、
「好きにせえ!」
おばあは大声でいった。

よく見るとおばあの席には、大根おろしがなかった。なぜ僕のためだけに大根をすりおろしてくれたんだ。こうやって食べるためじゃないのか。また疑問が浮かんできたけど、期待するような答えは返ってこないだろう。おばあはまた牛肉を口に入れ、もぐもぐと顎を動かしていた。僕は大根おろしが乗った牛肉を口に運んだ。