母の日におばあが女子会!? 豪華な(買ってきた)ちらし寿司と甘いイチゴ


母の日におばあが女子会!? 豪華な(買ってきた)ちらし寿司と甘いイチゴ

おばあは近所の同世代の友人と集まって、月に2回ほど女子会を開いている。おばあは「食事会」なんて、上品な料亭かレストランにでも行くようないい方をしているけど、実際には各自が料理や菓子を持ち寄って、どこそこの誰々が死んだとか、死にそうだとかいう悪趣味な話題で盛り上がっているそうだ。

その80代だけの女子会に、変化が起きている。かつてはそれぞれが自慢の手料理を持ち寄っていたのが、ここ最近は、市販の弁当で済ませているのだ。全員が高齢で、料理をつくることが負担になってきているので、女子会には弁当を買うことにしたのだろう。おばあも料理がつらくなってきているのだとしたら心配になる。近ごろ僕は毎晩、献立を見て、おばあはまだ大丈夫そうだと確認せずにはいられない。

弁当を買う係は、どうやらおばあである。おばあたちが女子会を開いた日、僕の晩ごはんには弁当が出るのだ。その日、おばあは昼から夕方まで友人宅で、弁当や菓子、ジュースを飲み食いして腹が膨れているから晩ごはんは食べない。でも僕に食べさせるために、おばあたちと同じ弁当を持って帰ってきてくれる。弁当係がおばあじゃないと、僕のぶんを一個余計に買ってくるなんてできないだろう。

今日もおばあは女子会を楽しんできたようだ。いつもの時間におばあの家に来ると、僕の席にだけ、やけにカラフルな晩ごはんが用意してあった。おばあは台所で何やら作業をしているようだ。

祖母(おばあ)が母の日に買ってきたちらし寿司など、晩ごはんのメニュー

メニュー
・ちらし寿司(買ってきた)
・酢の物
タコ、ワカメ、きゅうり
・サラダ
生:イチゴ、ミニトマト、春キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草

祖母(おばあ)が母の日に買ってきたちらし寿司

プラスチックの八角形の容器には、色とりどりの食材がごはんの上で折り重なっていた。錦糸たまごにエビ、レンコン、えんどう豆、桜でんぶ、しいたけの佃煮、アナゴ、赤いつぶつぶのとびこまである。かなり豪華なちらし寿司だ。おばあは今日の女子会に、ちらし寿司を買って行ったのだ。

タコとワカメときゅうりの酢の物

小皿にたっぷり盛られた手作りの酢の物も、おばあは友人宅に持参したのだろう。

イチゴ入りサラダ

いつも食べているサラダも、ちゃんと用意してくれている。いや、いつものサラダじゃない。ミニトマトにまぎれて、真っ赤なイチゴが乗っている。おばあはイチゴも女子会に持って行ったのか。それとも友人からもらったのか。

イチゴを乗せたサラダといい、具だくさんのちらし寿司といい、妙に贅沢な感じがする。この前の女子会の日に買ってきたのは、スーパーのお買得弁当だったのに。おばあの友人の誰かが誕生日だったとか、特別なことでもあったのだろうか。

そういえば今日は、母の日だ。おばあたちは自ら、誰かの母親であることを祝っていたのかもしれない。僕もおばあに、甘い物でも買ってきてあげればよかっただろうか。でもおばあは僕の祖母であって、母ではない。敬老の日だったらよろこんで、おばあの好物のチョコレートケーキを買ってくるけど、母の日に何かをするのはおかしい気がする。

とはいえ、おばあは毎晩、僕にごはんをつくってくれているし、翌日の朝と昼に食べるおにぎりまでにぎってくれている。日ごろ、炊事や洗濯を頑張ってくれている人に対して感謝するのが母の日だ。そう考えたら、僕も母の日におばあの労をねぎらいたい。

現実主義のおばあは感謝の言葉より、物をもらったほうがよろこぶ。一番いいのは現金、次に甘い物だ。僕は人にあげるほど手持ちの余裕はないので、プレゼントするなら甘い物しかない。商店街のケーキ屋はまだ開いているはず。食事を終えてから買いにいこうか。でもおばあは女子会でたらふく食べてきただろうから、もうケーキなんていらないかもしれない。

悩んでいると、台所で作業していたおばあが居間にやってきた。手に持った深皿には色鮮やかなイチゴが盛られている。

皿に山盛りのイチゴ

イチゴを手に取るおばあ

おばあはイチゴの皿を自分の席に置き、愛用の回転イスに深く腰かけると、さっそくひとつつまんで、ぱくりと半分かじり、

おばあがかじったイチゴ

「これは甘いわ!」
とひと言、叫んだ。
「今日は食事会で、食べまくってきたんやろ? まだ食べれるんか?」
「だいぶ腹はふといけどな、こんだけ甘いイチゴやったら入るわ」
とおばあはいって、半分になったイチゴを口に入れた。

「ケーキ買ってきたらまだ食えるか?」
と僕は聞いてみた。
「ケーキまで食えるか! イチゴで腹はいっぱいや。そんなことより、お前こそさっさとごはん食べや!」
なぜか僕が怒られてしまった。すると急に、おばあに感謝の気持ちを伝えることがバカバカしく思えてきた。

僕は黙ってちらし寿司に箸をつけた。底から大きくすくい取って頬張る。甘さのある酢飯の香りが鼻に抜ける。酸味は控えめで味付けはちょうどよく、固いレンコンやぷちぷちとつぶれるとびこ、ふわっとした錦糸たまごなどの多彩な食感が、噛むたびに違った組み合わせで感じられる。僕は幸せな気分になり、口の中のものを飲み込むと、
「おばあ、これはうまいわ。ありがとう」
と感謝の言葉を口にせずにいられなかった。おばあは何もいわず、またイチゴをつまんでかじり
「やっぱり甘いわ!」
とうれしそうに声を上げた。

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