サラメシ出演特別編! おばあの家にサラメシが来た!


サラメシ出演特別編! おばあの家にサラメシが来た!

「ほんまに来るとは思わへんかったわ!」
玄関に顔を出したおばあは大声でいった。

僕がおばあの家に引き連れてきたのは、カメラやマイクを手にしたサラメシのスタッフさんたち。なんと僕とおばあは、あの「働くオトナの昼ご飯」を紹介するNHKの人気番組に取材されることになったのだ。

祖母(おばあ)の家にやってきたサラメシのスタッフたち

(※取材に来てくれたスタッフさんたち。顔が載ってもOKとのこと)

きっかけは、僕が毎日昼に食べている、おばあがつくるおにぎりについて便りを送ったことだった。返事が来たときは、僕も冒頭のおばあと同じ言葉を心のなかで叫んでいた。

僕は2011年の4月に、3年勤めた会社を辞めて京都造形芸術大学に入学した。それ以来、おばあのおにぎりを食べ続け、腹におさめた数はゆうに5000個を越える。京都造形芸術大学では、毎日のように教室や食堂でおにぎりをほおばっていた。学生や先生、おかずだけを注文していた食堂のおばちゃんからも、僕がなぜ、やたらと大きく素朴な見た目のおにぎりを食べ続けているのか聞かれたことがある。授業でも、食べ物のレビューを書く課題で発表したこともあるし、大学の知り合いたちからは、僕といえばおにぎりというイメージを持たれていたようだった。

今年の4月からは、3年前に卒業した文芸表現学科で、非常勤講師として生徒を教えることになった。立場は変わったけれど、昼に食べているものは相変わらずおばあのおにぎりだ。こんな経験をしている人は珍しいということで、食べている僕とつくっているおばあを、2日がかりでサラメシが取材してくれることになったのだ。

まずは僕が、おばあの家から歩いて5分ほどの自宅で取材を受けていた。おにぎりやおばあ、僕の仕事などについてインタビューされ、自宅で仕事をする様子も撮影されたのだった。

おばあは仕事といえば、外に働きに行くものだとばかり思っていて、僕がフリーランスとして自宅で働いていることが理解できないらしい。通勤がないとはいえ、休みも夜も関係なく働くこともしょっちゅうなのに、いくら説明してもおばあは聞く耳を持たず、僕が家で遊んでいるという。徹夜明けにそんなことをいわれたら、ほんとうに腹が立つ。充血した眼を見開いて襖戸に突撃して外に飛び出したくなる。かといって、頭の固いおばあに強く抗議して食事をつくってもらえなくなるのも困る。

そこで思いついたのが、サラメシに取材に来てもらうことだった。僕が「働くオトナ」として取り上げられれば、さすがのおばあも僕のいい分を信じないわけにはいかないだろう。

おばあは玄関から居間に、僕とサラメシのスタッフさんたちを招き入れながら、
「テレビが来るやなんて、お前がまた、ええかげんなこというてるんかと思てたわ」
とあきれたようにいった。

あきれたのはこっちだ。おばあが料理をつくっているところを撮るといっていたのに、スタッフさんたちと台所に行くと、鍋の中にはすでにカレーができあがっていた。何週間も前から何度も日時や当日の段取りを説明していたにもかかわらず、僕の言葉を信じていなかったなんて……。つまりおばあは、僕が嘘をついていると思っていたのか。

サラメシが取材にきた日におばあが作った、カレーや煮物など晩ごはんのメニュー

メニュー
・カレー
牛すじ、玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、リンゴ
・たけのことちくわの煮物
・酢の物
タコ、ワカメ、きゅうり
・えんどう豆のたまごとじ
・大根おろし(じゃこのせ)
・サラダ
生:ミニトマト、春キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草

サラメシが取材に来た日におばあが作ったタケノコとチクワの煮物

カレーのほかにも、たけのことちくわの煮物や

サラメシが取材に来た日におばあがつくったえんどう豆の玉子とじ

旬のえんどう豆のたまごとじ、

サラメシが取材に来た日におばあがつくった酢の物

タコとワカメときゅうりの酢の物、

サラメシが取材に来た日におばあが作った大根おろし

すりおろすのに力がいる大根おろし、

サラメシが取材に来た日のサラダ

そして、おなじみのサラダが用意されていた。

いつもならカレーがあれば品数はもっと少ない。おばあはサラメシの取材が来ることを、実はちゃんとわかっていたのではないか。テレビに映るから気合を入れて、多くのメニューを用意したのに違いない。

カレーをつくったのも、おばあのやる気がうかがえる。おばあの得意料理である牛すじカレーは、つくるのに手間がかかる。牛すじは余分な脂が多いので、何度も茹でて脂抜きをしなければ使えない。それをさらに他の具材やルウと一緒に煮込むので、普通のカレーの倍以上の時間がかかる。それなのに今晩は他のメニューも充実している。おばあは自分のつくった料理を、なるべくたくさんテレビに映したいと思ったのだろう。

いつもの晩ごはんより1時間以上も早く来たのに、手間のかかる牛すじカレーをはじめ、すべての料理ができているというのも、取材の話を信じていた証だ。いったいおばあは何時から今晩の献立をつくりはじめたのだろうか。昼からか、いや、もう午前中から調理に取りかかったのかもしれない。

全国の献立を撮影してきたサラメシのスタッフさんたちも、おばあのつくった料理に並々ならぬ手間暇がかかっていることを察して、口々に感嘆の声を上げていた。それにおばあは気分を良くしたらしく、
「今日は夕方からカーブスやったけど、休んだんや!」
と胸を張った。カーブスというのは、女性だけが入会できるフィットネスジムだ。おばあはそこで週3回、汗を流している。サラメシの出演者のなかでも最高齢の部類に入るおばあが、ジムに通っているということで、さらに驚きの声が上がり、おばあは満面の笑みを浮かべた。ジムを休んだということは、いつもの晩ごはんより早い時間に撮影があるのを、やっぱりわかっていたということだ。

食事のあとはおばあが、僕が翌日に食べるおにぎりをつくってくれる。これまで7年以上繰り返されてきた光景を撮影したいと、僕が先日、お願いすると、おばあは作業の邪魔になるといって嫌がった。ところが今晩は違った。スタッフさんたちに料理とジムに通うアクティブさを称えられたおばあは上機嫌で台所に向かっていった。

サラメシに取材されながら、おにぎりを作るおばあ

あつあつのごはんを手の上のラップに乗せ、ほぐした焼き鮭たっぷり、そしてまたごはんを乗せて三角形に形を整えていく。その様子をおばあは得意げにカメラに見せつけながら、いつも通りの大きなおにぎりを2つつくった。僕が朝、家で食べるものはラップに包み、出先で食べるものは余分な水分を吸い取るおにぎり専用の銀紙で包む。

おばあが作ったおにぎりのブツ撮りをするサラメシのスタッフ

完成したおにぎりは、奥の仏間で「ブツ撮り」する。照明を当てながら、三脚で固定したカメラでおにぎりをピンポイントで撮影するのだ。

サラメシのカメラでブツ撮りされる、おばあのおにぎり

モニターを通して見たドアップのおにぎりは、米のひと粒ひと粒が艶やかに輝いていた。それを見たスタッフさんたちからまた驚嘆の声が上がった。これほど見事なおにぎりには、滅多に出会わないという。

居間に戻ると、おばあはにこやかな笑顔でテレビを見てた。僕らのやり取りを聞いていたのだ。ここ最近、おばあの機嫌がこれほどよかったことはない。今がチャンスだ! 僕は今回の取材で是非、おばあにやってもらいたいことがあった。サラメシでよく見る「中井貴一のサラメシ」のロゴが入ったジャンパーをおばあに着せて、写真に収めたかったのだ。

スタッフさんにジャンパーを借りておばあに渡すと

サラメシのロゴ入りスタッフジャンパーを着るおばあ

文句ひとついわずに颯爽と羽織り、

サラメシのロゴ入りスタッフジャンパーを着て背中を向けるおばあ

ロゴが大きく入った背中を向けてくれた。首をひねって見せた横顔は、実に嬉しそうだった。機嫌がいいだけじゃない。おばあははじめからこのジャンパーを着たいと思っていたようだ。やはりおばあは、撮影があることをわかっていた。僕のいうことを信用していたのだ。

僕がフリーランスとして働いているということも、おばあは口では遊んでいるというけれど、本心では理解してくれているはずだ。
「僕がちゃんと働いているって、ほんまはわかってるんやろ?」
と聞いてみると、おばあは突然、険しい顔になった。
「それは、ちゃんとテレビに映ってるとこ見てみなわからへん!」
そこはまだ信じてくれないのか……。とはいえ、放送を見れば、おばあはたちまち理解するだろう。明日は大学で、僕が生徒たちを教えている授業の様子を撮影することになっている。おばあよ、僕が嘘つきだなんて思っているのも今のうちだ。6月に予定している放送のことを思うと、僕は笑顔にならずにはいられなかった。

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