2日連続のそうめんは、自分で茹でる! 固ゆで冷やし中華風そうめん

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茹でる前の三輪素麺。乗せる具材もそろっている

夕飯を食べにおばあの家にやってきた。僕の家から歩いて5分ほどのあいだに、全身がじっとりと汗で湿っている。

食卓のある居間に入ると、汗も乾かないうちに、「台所に行け」とおばあがいう。クーラーの効いた部屋で涼む暇もなく、おばあのいうとおりにすると、流し台にはまだ茹でていない棒状の細長い麺が2束、深皿の中に置かれていた。昨日に続いて、今晩のメニューもそうめんだ。

だけど昨日の〝牛肉そうめん”とは違う。脇の小皿に盛られているのは、きゅうり、ハム、厚めの錦糸たまご。冷やし中華みたいな具材の組み合わせだ。その隣にはミョウガと麺つゆもある。コンロにかかった鍋の中で、ぐつぐつとお湯が沸騰している。この鍋でそうめんを茹でて、具材を乗せて麺つゆをかけろ、ということだろう。

三輪素麺を茹でているところ

「三輪素麺」と書かれた袋の裏には、茹で時間は2分とある。僕は固めが好きなので、タイマーを1分30秒にセットして、そうめんを鍋に投入。はじめは麺が、煮えたぎるお湯と一緒に沸き上がる様子が見えていたけど――

三輪素麺を茹でているところ。どんどん沸騰する。

細かな泡で、お湯の表面が覆われて見えなくなる。それを眺めているとすぐに、タイマーのやかましい電子音が鳴りはじめた。止め方がわからずに戸惑っていると、居間のほうから音も立てずに颯爽と、すり足でおばあがやってきた。

おばあは僕を、肘でコンロの前から押しやって、鍋の取っ手をつかんでシンクのざるに、ザーッと中身を流す。立ち上る湯気に上半身が覆われてももろともせず、黙々と手を動かし続ける。

茹でた三輪素麺をおばあが水で洗って冷ます。

ざるに入ったそうめんを、タライの水を何度か替えながら冷やす。そして深皿に、じゅうぶんに冷ましたそうめんを盛ると、一言も発することなくおばあはまた、颯爽としたすり足で、居間に帰っていった。人助けをして名乗らず去っていくヒーローみたいだ。

ハムと錦糸卵とミョウガ、キュウリを乗せたそうめん

台所に残された僕は、そうめんの上に具材をのせた。

具材を乗せたそうめんに麺つゆをかける。

そして、麺つゆをかける。ちょうどいい分量が、すでに器に入っていた。

具材のせ素麺とシュウマイ、揚げた鶏肉の甘酢あえなど、おばあがつくった晩ごはんのメニュー

メニュー
・冷やし中華風そうめん
三輪素麺、錦糸たまご、きゅうり、ハム、ミョウガ
・シュウマイ(冷蔵もの)
・鶏肉のから揚げ甘酢あえ(出来合い)
・茹でもやし
・キムチ
・サラダ
生:ミニトマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草

具材が多いので今日はそうめんだけかと思ったら、食卓にはおかずが5皿も用意されていた。冷やし中華風のそうめんに合わせたらしく、シュウマイや鶏肉のから揚げの甘酢あえなど、なんとなく全体が中華っぽい。それに、サラダとシュウマイ以外は、冷やし中華風そうめんに追加する具材としてもぴったりだ。

揚げた鶏肉の甘酢あえ、キムチ、茹でもやしなどの具材をのせたそうめん。

三種の具材を追加でのせてみると、見た目はばっちり。はじめに乗っていた具材たちはもちろん、醤油がかかった茹でもやし、辛くてうま味が強いキムチ、濃厚な甘酢あんがからんだ鶏肉のから揚げが、さっぱりとしたそうめんを介してひとつにまとまる。具材は別々でも、ほかのものとどんな組み合わせで口に入れてもおいしくて、麺がなくなるのが惜しい。

具材の選択がよくて、数が多いのもうれしいけど、麺が僕好みの固めというのがおいしさの決め手だと思う。そうめんを固めに茹でると、博多の豚骨ラーメンの麺みたいになって、すごくいい。

昨日食べた〝牛肉そうめん”もおいしかったけど、唯一、残念だったのは、麺がおばあ好みの柔らかめだったこと。それを伝えたらおばあは「わかった」といっていた。その次の日に早速、僕の好きな固さに麺を茹でさせてくれるなんて。

「今日のそうめん、また食わせてや」
僕はテーブルの向かいに座るおばあにいった。
「そうか。わかったわ」
とおばあはいった。たしか昨日も、僕の言葉に、おばあは同じ返事をした。まさかまた、明日の夕飯にもそうめんが出てくる、なんてことはないか。そうだとしても、僕はうれしい。