固いのに、入れ歯のおばあも食べたくなる。大阪府八尾市特産「若ごぼう」と鶏肉の炊いたん


固いのに、入れ歯のおばあも食べたくなる。大阪府八尾市特産「若ごぼう」と鶏肉の炊いたん

メニュー
・若ごぼうと鶏肉の炊いたん
若ごぼう(葉ごぼう)、鶏もも肉
・とろろ
山芋、全卵
・みそ汁
白菜、豆腐、わかめ、たまご、青ねぎ
・サラダ

生:トマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草
・ごはん

鶏肉と一緒に煮てある緑色のフキのような野菜は若ごぼう。大阪府八尾市の特産品で、気温が暖かくなりはじめたころに出回る、春を告げる野菜だ。特徴は短い根っこと茎や葉も食べられること。細長くて緑色の茎の見た目はフキに似ているけど、食感はごぼうに近くてけっこう固い。

おばあは毎年、今の時期になると、ちょくちょく若ごぼうを使った料理を出す。だけどおばあは固い食べものが苦手だったはず。自前の歯が一本もなく、朝起きてから風呂に入るまで総入れ歯を装着している。その口で歯ごたえのあるものを噛むと歯茎が痛むという。

僕が小学生だったある日、おばあや家族と一緒に焼肉屋に行った。おばあはミノやホルモン、ロース、カルビには目もくれず、やわらかいレバーばかりを食べていた。もうすでにほとんどの歯を失っていたのだ。おばあがひとりで数人前のレバーを平らげる様子を見ていた僕は、自分の歯を大事にしようと心に誓った。そして当時、食べものの好き嫌いが激しかった僕は、歯を失って大好きな肉が食べられなくなると、苦手なものが喉を通らず餓死してしまうという強迫観念に取り憑かれるようになった。

それからというもの、熱でうなされていたときも入院していたときも、寝る前の歯磨きを欠かしたことはない。いや、どうしても欠かすことができなかった。寝込んでいても歯磨きをしなければ眠ることができなかったのだ。今ではほとんど何でも食べられるようになり、死んでしまうという恐怖からは開放されたけど、持ち歩くカバンには常に歯ブラシが入っている。

面倒な不安を抱えてしまったものの、あの焼肉屋に行った日から今まで20年以上、ひとつも虫歯ができていない。身をもって自前の歯の大切さに気づかせてくれたおばあには感謝している。食べられるものであれば何でも丈夫な歯でバリバリと噛み砕いて味わうことができるのだ。

今晩のおかずの若ごぼうも、強い歯ごたえが心地いい。醤油と砂糖の甘辛い味付けが適度に染みてごはんとの相性もばつぐんだ。

おばあはどうして、固い食べものが苦手なのに若ごぼうの料理を出すのだろう。もしかして、季節の味覚を僕に食べさせるために、歯茎が痛いのを我慢して……。

「入れ歯なのに、固い若ごぼうを料理してくれるんやな」
僕はいたわりの気持ちを込めていった。するとテーブルの向かい側で若ごぼうを口に入れていたおばあが顔を上げた。目つきが鋭く、なぜか怒っている顔つき。若ごぼうが一本、口の端から飛び出ている。
「してくれるってなんや! 自分が食べたいからつくるんや! 好きで入れ歯しとるんとちがうわ!」

歯茎の痛みを我慢してでもおばあは、若ごぼうが食べたいらしい。今の時期を逃せば食べられなくなる若ごぼうは、この独特の食感と、ごぼうと葉物野菜の中間のような味がクセになるおいしさ。これを僕は痛みを感じることなく食べられる。歯磨きを欠かさなくてよかった。ほんとにおばあには感謝している。

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