おばあたちの冬の「食事会」に欠かせない。ストーブで焼いた、焼きいも


おばあたちの冬の「食事会」に欠かせない。ストーブで焼いた、焼きいも

メニュー
・焼きいも
・なます
大根、にんじん、さば
・煮もの
厚あげ、さといも、こんにゃく
・野菜
生:トマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草

おばあは月に1・2回、友達の家に集まって「食事会」をする。メンバーは3人で、うち2人が未亡人。独身を貫いている1人の自宅が会場だ。みんな80歳を越えている。

「食事会」は各自が食べ物を持ち寄り、昼ごろから夕方まで飲んだり食べたりしながら、しゃべって笑って楽しむという。英語でいえばポットラック・パーティー。週末の午後、気の合う仲間と過ごす優雅なひとときを連想させる。おばあは「食事会」と口に出すとき、電話に出たときのように声のトーンが少し上がって一瞬、上品になる。

夕方まで飲み食いする「食事会」の日、おばあは夕飯を食べないしつくらない。そこで余ったものや、おばあが持って行ったものなどが、その日の僕の夕飯になる。

テーブルに並んだメニューのうち、見覚えのある煮ものとなますが、おばあの持っていったもの。そしてごろんと、皿に2つ転がっているさつまいもが「食事会」から持ち帰ったものだろう。

「いもはストーブで焼いとったから、うまいで!」
とおばあがいった。声のボリュームが、「食事会」と発音するときより3倍くらい大きい。

上品ぶって「食事会」なんておばあは呼んでいるけど、そこで出てくるものは食べきれないほどの焼きいも。ストーブの上で多く焼きすぎたものを、おばあは持ち帰ってきたのだ。「焼きいも会」と呼ぶほうが合っている気がする。

「今日はみんなで、どんなことを話したんや?」
と聞いてみる。
「いつも一緒や! 人が死んだ話と病気になった話や!」
おばあは縁起でもないことをいう。ますます「食事会」が、言葉のイメージから遠ざかっていく。僕をからかって、わざと過激なことをいっているのだろうか。

「ほんまに、『食事会』もいつまでできるかわからんなあ」
おばあはしみじみという。そういえば去年、「食事会」のメンバーは4人だった。ひとりが亡くなったのだ。

だけど日本人女性の平均寿命、87歳まで、おばあたちにはまだ時間がある。それまでは、いや、できることなら100歳まで集まってもらいたい。

焼きいもをつかむと、思ったよりも熱くて手を離してしまった。家でもストーブの上であたためていたらしい。半分に割って、少しずつかじる。芯まで熱がこもっていて、ほくほくと甘い。2つも食べると腹が膨れる。おばあたちはこれを今日、いくつ食べたのだろうか。やっぱりおばあたちの集まりは、おしとやかに「食事会」なんて呼ばずに、力が湧いてきそうな「焼きいも会」にしたらどうかと思う。

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