おばあが大量にすすっているのは、正体不明の――
ベトナム麺!
ベトナムに出張した知り合いが、「おばあと食べて」とくれたインスタントの袋麺だ。
たしかにおばあは麺類が大好きだけど、料理が作れなくなっても味にはうるさいし、ベトナムの麺はたぶん人生初。果たして気に入ってくれるのかどうか……。
袋麺は2種類、↑のワンタン麺と、
カニの味だとパッケージの写真でわかる。
おばあに見せると迷うことなく、
「こっちがええ」
と選んだのはワンタンのほう。
さすがおばあ。写真のワンタンは豪華なエビ入りで、見るからにモチっとしておいしそう。実は僕もこっちが食べたかった……とおばあに選ばせたことをちょっと後悔しながら、パッケージを開け、
中身を取り出した。何だか、エビ入りワンタンの様子がおかしいけど、気のせいかな……。
ひとまず裏面に書かれたとおりに、
具材を容器に投入。やっぱり、ワンタンが妙なのは……乾燥しているからかな??
お湯をそそぐと、主役のエビ入りワンタンがすぐにふやけてモチモチに……ならないし、それにこのワンタンどう見ても、ただの四角い麺やんか!! パッケージに載っている、
エビ入りもっちりワンタンは一体、どこ行ったんやー!
“あと乗せ”のミンチらしき具もあるけど、
何をどうしても写真のようにはならない。エスニックな香りが食欲をそそるし、これはこれで悪くなさそうだ。だけどこれでは“思ってたんと違う”と、おばあに文句を言われるのは確実だ。
でも大丈夫! こんなこともあろうかと、
用意していた追加の具材をトッピング! これだけ乗せれば、期待した見た目じゃなくても文句はないはず。
【メニュー】
●ベトナムの袋入りワンタンメン(VIFON)
【具材】
●白菜
●ニンジン
●豚肉
そして、ワンタンに合わせて、
●味の素の冷凍ギョーザ
待ち時間は、日本のベーシックなカップ麺と同じく3分。
だけどおばあは“柔らかめ”が好きだから、倍の6分以上放置した。すると麺がふやけて膨らんで、僕でも多いと感じるかなりの量に。食欲旺盛なおばあでも食べきれるかどうか……そもそも口に合わなければ2口目はないだろう。
食卓に持っていくと、おばあはまず
食べ慣れた“味の素の冷凍ギョーザ”を口に運ぶ。
そして冒頭の、
この食べっぷり!
持ち上げた麺が、あっという間に口の中に消えていく。
落ち着いたところで感想を聞いてみると、
「…おいしい」
とは言ってくれたけど、妙な間があるし、いつものラーメンと何かが違うと感じたらしい。
ベトナムの麺だと伝えても、ベトナムが国だということもピンとこないようなので、説明するのは諦めた。
それでもおばあは食べ続けたものの、最後まで違和感があったようで、
笑顔はみせず首をひねっていた。そして、
「もうええ」
とフォークを置いた。その様子が、大満足……というより不満そうなので、半分は残しているかも。そう覚悟して容器を見たら、あふれそうなほどあった麺と具材が、
めっちゃなくなってるやんか、おばあ!
ベトナム料理の香りに慣れていないだけで、味は気に入ってくれたみたいだ。おばあが料理をしていたころ、新たな味への探求心は衰えることがなかった。カレーも鍋も揚げ物も、毎回違う工夫を凝らし、僕を楽しませてくれた。
今度は僕が手を変え品を変え、おばあを料理で喜ばせる番だ。というわけで次は別の国の麺、見つけてきて、作ったるで、おばあ!