しゃばしゃばのカレーをとろとろに! 具材を大量に追加した2日めのカレーと茹でもやし

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メニュー
・カレー(2日め)
S&B〈ゴールデンカレー バリ辛〉、牛すじ肉、玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、ナス、にんにく
・茹でもやし(味付けは醤油)
・たけのこの炊いたん(5日め!?)

・大根おろし
大根、じゃこ
・サラダ
生:トマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草

おばあはカレーを食べるとき、ごはんとムラなく一体化するまで、あらかじめ皿の中でよく混ぜ合わせる。しかも一切、スプーンは使わない。僕のものより小さな器に片手を添え、納豆を混ぜるみたいに箸でぐねぐねと執拗にかき混ぜる。それを二本の箸の間に器用にのせて口に運ぶのだ。

おばあの食べ方だと、じゃがいもやにんじんが固まりのままごろごろと入っていると食べにくいようで、具材はみじん切りの一歩手前まで細かく刻まれている。具材が細かいとカレーに溶けやすくなる。だからおばあがつくるカレーは2日めになると、しっかりと煮込まれた具材がくずれて原型をとどめていない。

ところが今日のカレーは2日めなのに、具材が昨日よりも存在感を増している。表面がでこぼこするくらい、じゃがいもや牛すじ肉、玉ねぎといった小さな具材たちがとろとろのカレーの中でひしめいている。その中でも煮込むと真っ先に形がわからなくなるはずの、色の透き通った玉ねぎがひときわ目立っている。おばあは具材を追加したのだ。今までも2日めのカレーに具材をいくらか加えていることはあった。今日はこれまで以上に、大量に投入している。

明らかに昨日よりも、カレーが具材で賑やかだ。それと同時に、とろみも大幅に増している。脂とゼラチン質が多い牛すじ肉や、家庭のカレーに定番の野菜、それに今回、新しく加わったナスが溶け、水分が減り、皿の端を叩けばぷるぷると震えるほどの粘り気が生まれている。

昨日のカレーはスープ状であまりとろみがなかった。それが2日めに、同じカレーと思えなくなるほど、おばあは大きく手直しをほどこし、強いとろみをつけたのだ。それほどおばあはどろどろとしたカレーが好みだったなんて、今まで知らなかった。

食卓の向かいの席では、おばあが箸を逆手に持って、カレーとごはんを一心不乱にかき混ぜている。箸を持ち上げたのでもう終わりかと思ったら、茹でもやしをすこしつまんで口に入れ、また混ぜはじめる。ようやく手を止めると、箸を持ち替え、ごはんと渾然一体となったカレーをすくった。

どろっとしたカレーが二本の箸の上にしっかりと絡みつき、おばあのすぼめた口に運ばれ、シワの間に吸い込まれていった。
「こりゃ、うんまいわ!」
おばあは自作のカレーを遠慮なく自画自賛した。昨日のカレーを食べているときにおばあは、味の感想をいうことはなかった。僕はそのとき、おばあがなぜ、とろみのあるカレーを好んでいるのかわかった。

単純に食感や味が好きだということもあるだろう。それに加えて重要なのが、カレーを箸で食べるおばあにとって、とろみがなければ口に運びにくいということだ。昨日のしゃばしゃばだったカレーは、器を持ち上げてみそ汁みたいにすすっていた。うまく箸でつかめなかったのだ。

おばあはひと口、カレーを食べると、また茹でもやしに箸を伸ばした。そして食べながらいう。
「もやしも、こんなにうまいんやと最近になってわかったわ! しゃきしゃきするんがええ」
今日のおばあは饒舌だ。どろどろのカレーと、茹でて減塩醤油で和えたもやしがよっぽど口に合うのだろう。もやしを飲み込む前に、ふたたびカレーを口に入れた。

おばあの食べっぷりからすると、カレーと茹でもやしの相性は抜群のようだ。昨日、おばあがカレーにはじめてナスをいれたのと同じく、僕もカレーの新しい可能性を常に追い求めている。僕は茹でもやしをカレーにトッピングした。

濃厚な辛口のカレーと、茹ですぎていないもやしの食感が絶妙に合っている。どこをすくっても小さな具材がスプーンにのるのもうれしい。こってりとしてやわらかい強烈な風味の具材が、毎回のように口に入る。にんにくが大量に加えられているのだ。明日、仕事で人に会う予定があって、息が臭うのはまずいけど、一度食べたらもう止められない。おばあのカレーに対する飽くなき工夫と、付け合せの選択に感心しながら僕は、もやしのせガーリックカレーを完食し、迷わずもう一杯おかわりした。