↑粕汁であったまればいい!
というわけで買ってきたのが――
こんな食材。味の決め手は、おばあも使っていた――
『黄桜』の酒粕。メインの具材は、この前ホイル焼きに使った――
秋鮭の残りを冷凍したもの。酒粕に鮭、これさえあれば、はじめて作っても“それらしい”粕汁ができるはず! だけど今回作るのは、ただの粕汁じゃない。汁物だけだともう一品、メインのおかずが欲しくなる。
それは面倒なので、ひとつで満足できるように粕汁を――
土鍋で作って“粕汁鍋”にしてみる。
材料は――
鍋ものに欠かせない白菜やキノコ。それに、僕の好きなセロリやトマトも。
おばあは以前、鍋で炊く料理は「好きなもん入れたらええ」と言っていた。だからクセの強いセロリやトマトも、きっとぴったりと合う……はず!
味付けは、おばあが作っていたところを思い出し――
酒粕と味噌を、酒粕多めの2対1くらいの割合で――
水を加えて混ぜ合わせる。おばあはここで少し醤油を垂らしていたけど、今回は冷蔵庫に残っていた、うまみが強い石川県の魚醤『いしるだし』を加える。
鍋にはまず、
根菜類を入れて少し煮て、
酒粕と味噌を溶かしたものを加え、セロリの茎の部分を入れてまた煮る。すると、えもいわれぬ香りが立ち上り、かぐたびにごはんが欲しくなる。
それから、
冷凍室に残っていた豚肉や、大きめに切った白菜を入れる。
さらに、
冷凍の鮭やキノコ類、セロリの葉の部分など残りの具材を追加し、フタをしてしばらく煮る。
それから、鍋つかみで慎重に鍋を持って――
食卓へ運ぶ。
フタを開ければ湯気とともに現れた――
粕汁鍋の具材がぎっしり。
メニュー
・粕汁鍋
鮭、豚肉、白菜、大根、玉ねぎ、にんじん、えのき、しめじ、トマト、セロリ
・もち麦入りごはん
具材を小皿に取り分け――
いただきます! まずは熱々の汁をすすると……これ、これだよ! と思わず叫びたくなる、久々の粕汁の味! いろいろ入れて鍋にして、なんとなくセロリの香りもするけど、想像以上にちゃんと粕汁になっている。
鮭をほおばると、これまた懐かしい味。たまらずほかの具材も食べすすめると、体が芯から温まってくる。背筋のぞくぞくも、いつの間にやらなくなっている。
それにこの味、やっぱり――
ごはんにもぴったり!
酒粕を多めに入れてよかった。おばあが作ってくれたやつみたいに、酒粕のうまみが濃厚で、ごはんがすすむ!
そして気になるセロリは、長めに切った茎をぱくり。よく煮たので柔らかく、セロリの風味が粕汁の味に……よく合ってる! おばあに言われたとおり、鍋で炊く料理には「好きなもん入れたら」おいしすぎるで、おばあ!
シメは残ったごはんに――
こうして鍋の具材を汁ごとかけて、かきこむ! すると、もう止まらない!
それに土鍋だから、最後まで冷めずに熱い!
六年近く前、おばあが粕汁を作ってくれたとき、すぐに食べなかったので、「せっかく熱いもんを出してるんやから! 冷めてしまうやないか!」と怒られたことを思い出す。
あのときは「食べるのは僕だし……」とか、心の中でぐずぐず反論して、素直に認めようとしなかった。でも今になって、あらためて実感する。粕汁は熱いほうがいいって、おばあのいう通りやで!
明日、またおばあが暮らす介護施設に報告に行こう。もしあのときのことを覚えていたら、「そうやろ。言った通りやろ」と、得意げな顔で笑ってほしい。