商店街の魚屋の特売コーナーに、人だかりが! 店員さんが魚のトレイを並べるそばから手が伸びてきて、まさに飛ぶように売れていく! 陳列が間に合わず、店員さんの手から直接、受け取る人も!
人にもまれて前にすすむと、特売の魚の正体は――去年は高くて手が出せなかった秋の味覚、サンマ! それがトレイに4匹入って400円台。1匹なんと100円ちょっと! 僕も迷わず手に取り――
買ってきた。
しかもこの特売のサンマ、口の先が黄色っぽく目玉が透明で、見るからに鮮度抜群! それに胴体が丸く厚みがあるのは脂がのっている証拠だ。
調理方法はもちろん、おばあも毎年作ってくれた――
塩焼きだ! というより、これしか知らない。
そして魚屋でもうひとつ、手に取った特売品がある。それはー―
ヤリイカ! こちらもひとパック400円ほどでお買い得だったので、つい買ってきたけど……調理方法はどうしよう。
サンマと一緒に塩焼きにしようか? それとも以前作った“イカ大根”がいいかも。いや、はじめてのメニューに挑戦して、レパートリーを増やしてこそ、おばあのような料理上手になれるはず!
そんなことを考えながら商店街を回った結果、ほかに買ってきたのが――
こんな食材。
メニューは、そう! パスタだー!
作るソースは定番の――
マ・マーのミートソース……って、温めるだけやんか! とついツッコみたくなるかもしれないけど、ちょっと待って!
たしかにマ・マーのソースはそのままでもおいしいし、おばあも――
こうして、よく使っていた。たしかに、温めるだけのこともあったけど――
こんな他では見たこともない、“冷やし中華風”のアレンジを加えてくれたこともあった。しかもめちゃくちゃおいしい!
“便利なものはどんどん使う”という、おばあの精神を受け継いだうえで、ありそうでなかったオリジナルのアレンジ、僕もやってやる!
というわけで――
イカのほかにミートソースに合いそうな――
キノコやセロリといった食材を、直感にしたがって買ってきた。
その帰りがけに、おばあの暮らす介護施設にも立ち寄った。オリジナルパスタのコツを聞いておこうと思ったのだ。ところが、おばあは介護ベッドでぐっすり眠っていた。
おばあはパーキンソン病が進行し、昼間でも深く寝入っていることが増えた。それでも過ごしやすい気候になったからか、この日は特に血色がよく頬がピンクで肌もツヤツヤだ。
その寝顔を見ていると、またすぐにでも台所に立って料理を作ってくれそうな気がする。
だけどおばあは、こどものころから家事をこなし、何十年も誰かのために料理を作ってきた。
今はもう休めるだけ休んで、おだやかな日々を過ごしてほしい……そう思うと、なんだかホッとして、僕もやってやる! とやる気がわいてきた!
それからおばあに「また来るで!」と別れを告げ、ダッシュで帰宅して調理をはじめたのだった。
メインのサンマをパスタとひとつに!?
パスタのことばかり気にしていたけど、今晩のメインはサンマだった。ミートソースパスタにサンマの塩焼きって、合わないことはないだろうけど……いっそのことパスタの具材にしてしまおうか!?
おばあに以前、料理のコツを聞いたとき「好きなもん入れたらええ」とアドバイスしてくれた。好物のミートソースとサンマをひとつに……これはもう、思いついたらやらずにはいられない。
そうと決まれば、えいっ! とサンマを――
思い切ってブツ切りにして、パスタの具材にする。
やっぱり塩焼きのほうがまちがいなかったかも……なんて考えがよぎっても、もう切ってしまったからには後戻りできない!
続いてイカも――
輪切りにして、野菜類も――
こうして切って、鍋に入れる具材の下準備完了! セロリがちょっと多すぎる気もするけど……実は僕はセロリが大好きなので、たっぷり食べられて多すぎるのは大歓迎! 一本丸ごと刻んだので、あの独特の香りがすでに辺りに立ちこめている。
ちなみに、味付けに使うコンソメキューブは――
半分に切っておく。
サンマとイカとセロリのミートソースパスタを作る
まずは鍋に油をひいて――
ぶつ切りのサンマを焼く。
ついでに――
セロリの葉の部分も焼く。それがしんなりしてきたら――
サンマの上にかぶせて蒸し焼き状態に。
どちらにも焼き色がついて火が通ったら――
皿から取り出し――
サンマから染み出た油をそのままに――
セロリの茎の部分や玉ねぎを炒める。大量のセロリを加熱すると、これまたあの香りが濃厚に立ちのぼってくる! 苦手な人は逃げ出したくなるかもしれないけど、好きな僕にはたまらない!
セロリの香りに包まれながら、炒めている間に――
鍋でパスタを茹でておく。湯で時間は、パッケージにある標準の11分。
そしてセロリや玉ねぎに火が通ったところで――
イカやキノコ(なめこ、マイタケ)を入れて、さらに炒め――
水(適量)とコンソメキューブ(半分)を入れて煮詰める。
そして――
パスタが茹であがったところでザルにあげ――
皿に盛っておく。そうして味の決め手の――
マ・マーのミートソースを――
具材を煮詰めていた鍋に投入! 一袋で二食分だ。
それを混ぜながら、沸騰するまで加熱し、パスタにかけ、さきほど焼いたサンマとセロリをトッピングすれば――
完成だー!
メニュー
・サンマとイカとセロリのミートソースパスタ
マ・マー【トマトの果肉たっぷりのミートソース】使用
見た目と香りは申し分ないけど……。
気になるパスタの味は!?
それではさっそく――
いただきます!
まずはサンマをひと切れ――最初にトマトの酸味があって、それから甘み、セロリの風味がやってくる。そして噛むと一気にあふれるサンマの旨味。内蔵の苦みも相まって……これ、絶品やで、おばあ! と思わず叫びたくなる。サンマの塩焼には、ちょっと辛めの大根おろしにポン酢をかけるのが好きだけど、マ・マーのトマトソースも負けず劣らず相性抜群!
すかさずパスタをすすると、めちゃくちゃ合う! サンマの塩焼とごはんくらいぴったり合っている。
これ……止まらなくなるやつだ! と気づいたときには、どんどん食べすすめている。
それにしても、ゴロゴロとたっぷり入れた一本分のセロリの香りと食感がクセになるー! トッピングした葉の部分をポリポリかじると、さらに強烈な香りが! するとさらに食欲が加速する。
僕も直感にしたがってパスタ作ったら、おいしくできたで、おばあ! と翌日にまた、報告に行こう。眠っているかもしれないけど、それでもいい。おばあの顔を見るだけで、料理に対するやる気の炎が燃え上がる。
そのおかげで、レトルトや総菜で済まさずに、おいしくて健康的なものが食べられている。僕が健康でいられるのも、おばあのおかげ。そのことも報告すると決めて、残ったセロリの葉を口に入れた。