僕の祖母、おばあがよく作ってくれた肉を使った料理といえば、すき焼き! 前回、僕はその“おばあのすき焼き”に挑戦して――
はじめてだけど、おいしくできた!! それもこれも、介護施設にいるおばあからアドバイスをもらったおかげ!
ありがとう、おばあー!
定番のおばあの中華料理“酢鶏”
とはいえ、肉を使ったおばあの得意料理は、すき焼きだけじゃない。忘れちゃいけない定番の料理がまだある!
それは、甘酸っぱくて濃いめの中華料理、酢豚……とは少し違う、豚肉を揚げる代わりに、惣菜の鶏の唐揚げを使って“時短”したーー
酢豚ならぬ“酢鶏”!
しかもこの酢鶏、味を犠牲にした妥協の産物というわけじゃない。商店街で人気の鶏肉専門店の唐揚げを使っているだけあって、味も絶品だ!
時短でおいしいのに、なぜ、今まで作っていなかったのか……。
僕も“おばあの酢鶏”作りたい!
というわけで、ママチャリに飛び乗り、商店街に急行――
酢鶏の食材を買ってきた。唐揚げはもちろん、おばあ行きつけの鶏肉専門店で250gを、量り売りしてもあらった。
野菜は“ガチ中華”の食材も!?
野菜は、おばあがよく入れていた玉ねぎにニンジン、ピーマン。そしてカラフルなパプリカが見当たらなかったので――
特売の大きなナスや、野性味あふれる“四葉きゅうり”を購入。この見慣れない四葉きゅうり、顔なじみになった野菜売り場の店員さんによると、中国の品種で中華の炒め物にも合うとのこと。
つまりこの四葉きゅうり、本場中国で使う“ガチ中華”の食材だ。
だったら酢鶏にも入れてもおいしいはず! おばあだって、同じメニューでも、直感で新しい具材を加えて味の探求を続けていた。
僕もその精神を受け継いで、新たな食材を入れてみよう! 火を通したきゅうりなんて食べたことないけど、“おばあめし”を食べ続けてきた僕の直感が、“これはうまい!”と告げている。
そんなこんなで具材はそろった。だけど問題は……味付けだ。
おばあが使っていた市販の甘酢あんとは?
おばあは酢鶏の味付けに、市販の甘酢あんを使っていた。だけどその商品名が何だったのか、どこで売っていたのか、過去の記事を見返してみてもわからない。
商店街に行く前、おばあがいる介護施設に聞きに行った。
この日、おばあはパーキンソン病の影響で、昼間なのにかなり眠そうで――
「味つけはな……市場(商店街)で、売ってるやつや」
と聞き出すのが精一杯だった。
その言葉を手がかりに、おばあが通っていた商店街のスーパーで店員さんにたずねると、調味料売り場に案内してくれた。
やった! これでおばあの酢鶏の味が再現できる! と心の中でガッツポーズしたけど――
「酢豚のタレなら……ここにあるやつですかねえ?」
と店員さんは、ちょっと自信なさそう。
たしかにこれ――
“甘酢あんかけのたれ”って……なんだか違うような。おばあが家で料理していたとき、このボトルを冷蔵庫で見た記憶もない。
でも裏を見ると、酢豚もこれ一本でできるみたいだし、おばあ行きつけのスーパーで教えててくれたものなら、信じるしかない。
それに僕もおばあも、大阪もいいけど、キャベツたっぷりの広島のお好み焼きが大好き。その広島のお好み焼きのソースメーカーといえば、この“オタフクソース”だから、きっとおいしいはず!
というわけで、このタレを手に取ったのだった。
はじめての“酢鶏”、調理開始!
調理はまず、ニンジンと玉ねぎを適当な大きさに切り――
軽く炒める。そこへ――
他の野菜を切って投入! もちろん四葉きゅうりもたっぷり入れた。
それを炒めてから、メインの――
鶏の唐揚げを入れる。
そして軽く混ぜ、ここで登場――
“甘酢あんかけのたれ”! これを全体の色を見ながら、目分量で加え――
よくからめたら、できあがり! 見た目も香りも、ちゃんと酢鶏になっていていい感じ!
ただ、おかずがこれだけだと寂しいので――
ついでに買ってきた、中華風の“丸鶏ガラスープの素”を使って――
具材多めのスープも用意。
これもはじめて作ってみたけど、鍋で具材を煮て素を入れるだけだからとっても簡単。
いつもと違う中華定食
というわけで――
これが今回の献立! 初の中華定食だ。
メニュー
・酢鶏
鶏の唐揚げ(惣菜)、ニンジン、玉ねぎ、ピーマン、シイタケ、ナス、四葉きゅうり
・中華風スープ
玉子、小松菜、わかめ、生姜
・ごはん
料理から立ち上ってくる、いつもの和風の調味料とは違う――
甘酢あんと鶏がらスープの、中華の香りがたまらない!
まずは“酢鶏”から、いただきます!
甘酢あんが染みた鶏の唐揚げをほおばると……これ、これだよ! とひとりで叫びたくなる。薄い衣の生姜が効いた胸肉の唐揚げに、甘酸っぱい中華“あん”の味が懐かしい!
ピーマンもニンジンも玉ねぎも、おばあが何度も作ってくれた酢鶏の味だ!
ひとくちずつ、噛みしめていると
“どうや、うまいか?”
と食卓の向かい側から、おばあの声が聞こえてきそう。
タレはこれでよかった! もし別のものだったとしても、味に違いはないし、“おいしかったらなんでもええ!” とおばあの言葉がまたどこからともなく響いてくる。
気になっていた四葉きゅうりは、みずみずしさと歯ごたえがくせになる。青臭さは少しあるけど、きゅうり好きにとっては、むしろ大歓迎。おばあも気に入るに違いない。
もっといっぱい入れればよかったと思うほど、酢鶏によく合っている。なんだか一気に“ガチ中華”感が出るのもいい!
酢鶏の新境地、見つけたで、おばあ! そう報告しに行こう!
そして初めて作った中華風のスープは――
酢鶏との相性もぴったり!
おばあは意外と、酢鶏のときは汁物を用意しなかったけど、このスープとの組み合わせも味わってもらいたい!
きっとおばあも気に入ってくれる中華定食ができたのに、誤嚥性肺炎や感染症の危険があるので、まだ僕が作ったものを食べることはできない。だから僕にできることは、いつか食べられるときがくると信じて、腕を磨き続けること。
そして、たしかにおばあに食べてもらうという目標と、おばあがくれるアドバイス、それにこれまで10年間“おばあめし”を味わい続けてきたからこそ、僕の料理のレパートリーと腕前は確実にレベルアップし続けている。
だから今も、これからも、感謝やで、おばあ!