おばあの酢豚に秘密あり


おばあの酢豚に秘密あり

メニュー
・酢豚
豚?、パプリカ(赤・黄)、たまねぎ、たけのこ、
・大根おろし
大根、じゃこ
・野菜
キャベツ、トマト、ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草
・ごはん

酢豚とは、おばあの料理だ。子供のころ実家で食べたことはあるかもしれないけれど記憶にない。餃子の王将に行くと、頼むのはかならず唐揚げ定食か餃子定食。餃子の王将のメニュー表の写真でしか、酢豚の「見本」は見たことがない。たしかにおいしそうだけど、おばあがつくるものと見た目に大差はないし、看板メニューの餃子や好物の唐揚げを前にして、わざわざ酢豚を注文しようと思わないのだ。

だから僕にとって酢豚とは、おばあのつくったものがすべてだ。しかもおばあはしょっちゅう酢豚をつくる。一ヶ月に一回以上は出てくる。

濃い目の味付けが好きなおばあは、酸味と塩味と甘味、そして油の効いた酢豚を気に入ってるのだろう。僕もいつものように「健康に気をつかって味付けを薄くしたほうがいい」とは言わない。酢の酸味を生かす濃い目の味付けでバランスが取れているように思う。そもそも酢豚は中華料理。濃くて当たり前だ。「見本」を食べたことないから、実際はどうか知らないけど。とにかくおばあは、僕がうるさく注意しないので思う存分、濃い味つけを楽しめる。だからしょっちゅう酢豚を出しているのに違いない。

しかし複雑な工程を嫌うおばあが、よくこんな手間のかかりそうな料理を気軽に出してくるものだ。おそらく酢豚をつくるには、豚肉を揚げて野菜を炒め、甘辛いあんをつくって絡めなければいけない。自分だったら絶対つくらない。

何かひっかかるので、野菜にかけるマヨネーズを取りに行くふりをして、台所に立った。すると三角コーナーに、レトルトパウチの空になったものが捨ててある。中には黒っぽい液体が付着していた。人差し指をつけて舐めるとやはり、酢豚のあんだ。

手軽につくれるのだから、味付けはレトルトで全然いい。味もいいので、むしろこのままこの製品を使い続けてほしい。問題は、台所に油で揚げた形跡がまったくないことだ。あの豚肉は、衣がつけて揚げられている。

食卓に引き返し、豚肉を箸でつまみ上げ、仔細にながめる。どこかで食べたことのある形と弾力・・・・・・。口に入れて噛んで確信した。これは、鶏の唐揚げだ! 商店街の惣菜屋のやつだ。

餃子の王将のメニュー表、濃い味付け、そして酢豚というネーミング。さまざまな要素がこの肉を豚だと僕に思い込ませていた。つまり僕は、今までに酢豚を食べたことがないのかもしれない。おばあがつくっているのは、酢鶏なのだから。

「マヨネーズはどうしたんや」とおばあの声がする。僕はうつむいたまま「うるせえ。ほっといてくれ」と、つぶやくことしかできなかった。

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