おばあの独創性が生んだ鶏肉とたけのこのおでん。そこにやっと大根が仲間入り


おばあの独創性が生んだ鶏肉とたけのこのおでん。そこにやっと大根が仲間入り

メニュー
・おでん
骨付き鶏もも肉、大根、たけのこ、ごぼ天、厚あげ、ねじり糸こんにゃく、じゃがいも、
・野菜
(生:トマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、ほうれん草、アスパラガス〉
・ごはん

おばあのつくるおでんには、大根とたまごが入っていない。代わりにたっぷりと投入され主役の座におさまっているのが鶏肉とたけのこだ。鶏肉は煮るとやわらかくなってダシも出るし、たけのこは歯ごたえが心地よく、しっかりとつゆを吸う。どちらもおでんの具材にぴったり。なぜコンビニでもこの2つを扱わないのかと疑問に思う。

でもやっぱり、おでんに大根とたまごは欠かせない。醤油で味付けしたダシのなかに、大根とたまごが入っているからこそ、それはおでんになるのだ。コンビニでもおでんの売れ筋のトップ争いを、毎年のように繰り返しているという。厚あげやこんにゃく、ごぼ天もおいしいけど、それだけだと、しょっちゅう食べている醤油味の煮物と変わらないじゃないか! 鶏肉やたけのこが追加されても、煮物の具材が増えたような気になるだけだ。

僕がそう主張しても結局、具材の決定権をにぎっているのは台所に立つおばあだ。あえておでんのツートップを鍋に入れないことで、おばあこそ、なにか強く主張したいことがある。「常識にとらわれるな。新たなものの魅力に気づけば、世界が広がる」。おばはきっと、おでんを通じて僕に人生を楽しむためのメッセージを送っているのだ。前回のおでんのとき、僕はそんなことを思った。

ところが今回、たけのこを取ろうと箸を入れると、あの懐かしくやわらかい感触が箸先から伝わってきた。たけのこの下には、つゆが芯まで染み込み、とろけそうなほど煮込まれた大根が大量に眠っていた。僕は念願の大根を、一気に3つ食べた。つゆをたっぷり含み、ほんのり甘い大根は、一緒に食べたほかの具材のおいしさも引き立てる。やっぱりおでんには大根が欠かせない。

なぜおばあは大根を入れる気になったのか。僕へのメッセージはどうなったのだ。
「大根ばっかり食べて、そんなにうまいんか」
おばあは満足そうな顔で、僕の気持ちを逆なでするようなことをいう。
「大根は、おでんの味が染み込む方法を、テレビでやってたんや」
その方法というのをおばあは試したかったのだ。新しい試みが成功してうれしそうだ。そうか、おばあは実験を繰り返しているのだ。毎回、具材を少しずつ変え、同じものでもよりおいしくなる方法を試している。「常識にとらわれるな」ということを、やはりおばあは実践していた。

「たまごも、大根とおなじ方法でもっと味が染み込むか、やってみたらよかったのに」
と僕がいうと、
「いや、たまごはいらん」
と、おばあはそっけない。
「なんでや」
「朝にゆでたまご食べてるから、夜はいらん」
「朝食べずに、夜、おでんにして食べたらええやん」
と僕は食い下がる。するとおばあは、
「そんなん、ゆでたまごは朝に食べるもんやろ」
と、当然のことのようにいう。
そのおばあが持っている「常識」を、まず疑ってくれ! と僕は思った。

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