創作意欲あふれる87歳のおばあが作るのは、独創的な新メニュー…じゃなくて定番の和定食やんか、おばあ!

近ごろおばあは猛暑でバテるどころか、ますます創作意欲を発揮して、独創的なメニューを次々と生み出している。タコさんウインナーの群れと牛肉の煮込み料理とか、ナスのぬか漬けの『顔おにぎり』とか、冷凍の焼きギョウザをレンジでチンした小籠包風とか……どれも見た目におどろいて、食べておいしくて、夏バテになりかけても一口食べれば体の奥から力がみなぎってくる!

今日も朝からカンカン照りで、部屋の中では冷房漬け。何だか全身だるいけど、おばあの工夫を凝らした手料理を食べれば、すぐに元気になれるはず!

今晩の食卓には、一体どんなオリジナルメニューが並んでいるのだろう。まさかの具材を投入した鍋料理とか、例の冷凍ギョウザに一工夫加えたものとか……食材の組み合わせや調理のセオリー、季節感も無視した新たな創作料理をあれこれ想像しながら、おばあの家にやってくると、テーブルに並んでいるのは――
皿にのせたイワシの塩焼きが2尾
イワシの塩焼きに、
お椀に入れた絹ごし豆腐の味噌汁
久しぶりの味噌汁、
皿に盛りつけミニトマトを乗せたサラダ
山盛りのサラダ、
パック入りの納豆をかき混ぜたところ
納豆にごはんって……めっちゃシンプルな和食の献立やんか、おばあ!

僕の驚きをよそに、向かいの席のおばあは――
晩ごはんの食卓で、マスクを着けてテレビを見ている祖母
お気に入りの花柄マスクを着けたまま、何食わぬ顔でテレビのバラエティ番組をじっと見つめている。

そして僕に目をやると、
「何してんねん。さっさと座って食べや」
と指令が飛んできた。その声にはハリがあり心なしか胸を張っていて、揺るぎない自信が感じられる。これはおばあが、料理の出来に満足しているあかしだ。

メニュー
・イワシの焼いたん
・豆腐の味噌汁
・ミニトマトとキャベツのサラダ
・納豆
・ごはん

たしかに献立は『シンプルな和食』だけど、どの料理も仕上がりは見事というほかない。

イワシはまったく焦げがなく、うっすらと黄金色に輝いている。かじると頭まで柔らかく、弱火でじっくり長時間焼いたのに違いない。

味噌汁の具は、大ぶりの絹ごし豆腐だけ。それがかえって淡泊な豆腐の味を際立たせ、豆腐好きの僕にはたまらない味わいだ。

それにサラダに乗っているトマトは、いつもと違ってミニトマトがごろごろと。噛むと弾けて感じられる味は果物のように甘く濃く、これだけの量を盛られると贅沢な感じがする。

そして大好きな納豆を、ごはんにかけてかき込めば、もう止まらない。今日のメニューの見た目や味、栄養バランス、どれをとっても完璧だ。

独創的な新メニューもいいけど、僕はやっぱりこういうので……いや、こういうの『が』いいんやで、おばあ!

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