冷房病に活!!おばあ特製、豆腐とひき肉の辛いスープ!実は正体はあの料理!

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冷房漬けの毎日を過ごしているせいか、汗の調節機能が狂ってしまったみたいだ。おばあの家まで歩くわずか5分の間に汗が噴き出してくる。Tシャツが背中に張り付いて、脇のあたりが湿って気持ち悪い。寝るときも冷房にタイマーを設定すると、夜中に汗だくで目覚めてしまう。僕はもう冷房がない場所では、まともに生活できる気がしない。

体が冷えすぎるからと冷房を毛嫌いしていたおばあも、今年の猛暑には耐えかねたらしく、僕が晩ごはんを食べに行くときにはいつも、ガンガンに冷房を効かせている。ようやくたどり着いて居間に駆け込むと、心地いい冷気が不快感を一瞬にして忘れさせてくれた。

食卓ではおばあが、お椀の汁をすすっていた。その額には一面に大粒の汗が浮かんでいる。なぜだ! 壁のデジタル温度計に目をやると、26.5℃を示している。じゅうぶん涼しい気温なのに、どうしておばあは汗をかいているんだ。

おばあはお椀をテーブルに置き、首にかけていたタオルで額の汗をぬぐった。

おばあがつくった謎のスープ

お椀には唐辛子色をした具だくさんのスープが入っていた。このスープの辛味で汗が噴き出していのだ。それにしてもこんな料理、おばあのレパートリーにはなかったはず。汁物といえば、みそ汁かインスタントのスープと決まっている。今回はたぶん、韓国風のインスタントスープにいろいろと具材を加えたのだろう。辛そうな見た目も、香辛料が効いた香りも食欲をそそる。

謎の中華風スープやとろろ、串カツなど祖母(おばあ)が用意した晩ごはんのメニュー

メニュー
・謎の韓国風(中華風)スープ?
ひき肉、豆腐、ニラ
・とろろ
・生たまご
・南瓜の炊いたん
・謎肉の串カツ(惣菜)
・茶碗蒸し
・サラダ
生:玉ねぎ、トマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草
・ごはん

祖母(おばあ)が晩ごはんに出した麻婆豆腐

スープはやっぱり辛かった。何口かすすると、せっかく引いた汗がまたじんわりとにじんできた。この暑いときに、なんてものを……いや、もしかしておばあはこの辛いスープで、冷房でなまり切った体に活を入れようとしているのかもしれない。夏本番の今こそしっかり汗をかいて、冷房依存をリセットしておかないと、猛暑が続くこの夏を乗り切れそうもない。そういうことなら汗をかきまくってやろう。

具材はひき肉とニラと豆腐。なぜか豆腐もミンチ状につぶれてしまっているけど、これはこれでおいしい。ごはんが欲しくなる味だ。どこかで食べたことがあるような気もするけど……かつて焼肉屋で味わった韓国風のスープだろうか。

具材の量がかなり多いのも気になる。水面から上に出てしまっているし、箸を入れると底まで溜まっている。スープを少し飲むと、具材ばかりがたっぷり残る。これはスープよりむしろ具材がメインのような気がする。

他のおかずも充実している。品数が多いのは、おばあが気合を入れて料理を用意した証拠だ。スープもはじめてつくるものだし、張り切りすぎて具材を多めに買ってしまったのかもしれない。

おばあが晩ごはんに出した生玉子

皿に乗せた生たまごまで用意してある。テレビの旅行番組で見た旅館の食事みたいだ。これはスープではなく、

祖母(おばあ)が作ったとろろ

生玉子を入れたとろろ

とろろに割り入れる。見るからにスタミナがつきそうだ。

祖母(おばあ)が晩ごはんに用意した謎の肉のカツ

惣菜の串カツや、

祖母(おばあ)が晩ごはんに用意した、うずらの玉子入り茶碗蒸し

僕の好物の茶碗蒸し、

祖母(おばあ)が作った南瓜の炊いたん

カボチャの煮物やサラダもあって、脈絡がない感じもするけど、バラエティ豊かでまったく食べ飽きない。汗をかきかき食べ進める。

スープがほとんど具材だけになったので、ごはんに乗せてみると、ものすごく合う! そしてやっぱり、どこかで食べた気がする。

僕のお椀が空になると、先に食べ終えていたおばあが
「それ、まだ残っとるから入れてきたらええ」
という。何だか胸を張って誇らしげだ。はじめてつくった料理を僕が残さず食べ終えたのが、よほどうれしかったのだろう。僕は迷わずお椀を持って台所に向う。

スープは鍋に入っているのかと思ったら

おばあがつくった中華風スープ?

なんとフライパンに入っていた。これは知っている料理だ! スープなんかじゃない! 豆腐とひき肉を辛い味付けでフライパンで炒める料理といったら、麻婆豆腐じゃないか! ごはんに乗せたら麻婆丼だ!

どうしておばあは豆腐をぐちゃぐちゃになるまで混ぜてしまったのか。なぜスープのように水分が多いのか。そしてどうして、いつも味噌汁を入れるお椀によそったか。具材は正しいけど、他は何もかも間違っている。おばあは麻婆豆腐を食べたことがないのだ。麻婆豆腐の素のパッケージの画像だけを見て、勘でつくったのに違いない。

麻婆豆腐が本当はどんなものなのか、おばあに教えてあげたほうがいいだろうか。でも料理のことで僕が口出しをすると、プライドの高いおばあはヘソを曲げてしまう。余計なことはいわない方がいい。おいしいのは確かなのだから、とりあえず今回はスープだと思って食べることにする。
食卓に戻った僕は、お椀を一口すすった。そして、
「麻婆豆腐、うまいな」
というと、おばあはテレビに目を向けたままにやりと笑った。額にはまだ汗が浮いていた。