おばあがいくら茹でても伸びない日清ラ王!(冷やし中華風具材・ハムと錦糸卵)


おばあがいくら茹でても伸びない日清ラ王!(冷やし中華風具材・ハムと錦糸卵)

今日も汗だくでおばあの家にやってきた。これだけ暑いのだから今晩は夏らしい冷たいものが食べたい。そうめんとか冷やし中華とか、つるっといける麺類だったら最高! 猛暑に耐えかねてクーラー漬けの毎日を送っているおばあも同じ気持ちのはず。

期待を込めて居間の戸を開けると、食卓に着いたおばあはなんと、湯気の立つ丼ぶりを抱えて麺をすすっていた。透き通った茶色いスープの醤油ラーメンだ! けっこうおいしそう……じゃない、なんでこのクソ暑いのに、熱々のラーメンなんか食べてるんだ!

壁にかけた温度計に目をやると、デジタルの表示は26℃。いつもより冷房を効かせながら、おばあは顔中に大粒の汗を浮かべて麺をすすっている。そこまでして今晩、ラーメンが食べたかったのか!

たまにラーメンが無性に食べたくなる。そういう気持ちは僕にもよくわかる。おばあがラーメン好きだったとは、7年以上も一緒に晩ごはんの食卓を囲んできたけど、ぜんぜん知らなかった。実はおばあは昼ごはんにひとり、インスタントラーメンをつくってよく食べているのかもしれない。それならそれで僕も付き合おう。汗だくでラーメンを食ってやる! ラーメン、バンザイ!!

僕が決意を固めたところで、おばあは丼ぶりから顔を上げ、
「ラーメンなんてつくってみたが、これはあかん! 麺が固すぎや!」
と大声で不満を口にした。

何をいっているんだ。ラーメンの麺はちょっと固めでコシがあるからこそ、心地いい歯ごたえとのどごしが楽しめるんじゃないか。やわらかい麺がいいなら、茹ですぎたぼそぼそのそうめんでも、総入れ歯の口で噛みしめていればいいのに。

いいたいことはあるけど、早くラーメンが食べたくてうずうずしている今、口喧嘩なんてなんてしたくない。インスタントラーメンはいつも自分でつくることになっている。僕はおばあを無視して台所に向かった。すると背後から、
「麺はようけ茹でたほうがええで!」
という声が飛んできた。何だか腹が立つので聞こえていないフリをした。

祖母(おばあ)が晩ごはんに用意した日清ラ王と具材のハムと玉子

台所に用意してあったのは、日清ラ王だ! スープもいいけど「まるで生めん」というキャッチフレーズの通り、コシのあるストレート麺がうまい。ひとり暮らしのときによく食べていた。日清のロングセラーだけあって、あのころよりスープも麺もさらに進化しているはず。おばあはやわらかい麺が好きなので、袋に書いてあるよりかなり長い時間茹でていただろう。それでも固いと文句をいうほどコシが残っているのだからさすがだ。

ラ王の麺をお湯に投入したところ

水を入れた鍋が、すでに火のついたコンロの上で温められていた。そこに麺を入れ、

ラ王の麺を茹でているところ

5分と袋に表示のあるところ、4分30秒で火を止める。

ラ王の茹でた麺をスープに入れたところ

液体スープを入れたどんぶりに鍋のお湯をそそぎ、よくかき混ぜてから麺を入れる。麺は見るからにつやつやでのど越しがよさそうだし、醤油ベースのスープの香りが食欲をそそる。用意してあった具材を乗せ、丼ぶりを手にして食卓に戻る。

ラ王(錦糸玉子とハムトッピング)や焼き魚など、祖母(おばあ)がつくった晩ごはんのメニュー

メニュー
・ラーメン(日清「ラ王」)
トッピング:錦糸たまご、ハム
・知らん魚の焼いたん(サワラ?)
・大根おろし
・茹でオクラ
・南瓜の炊いたん
・酢の物

タコ、ワカメ、きゅうり
・サラダ
生:玉ねぎ、トマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草

ところでなぜおばあは、ラーメンの具材にこれを選んだのだろうか。ハムと錦糸たまごって……ラーメンは冷やし中華じゃないんだよ! ラーメンのたまごといえば、茹でたまごでしょ。ハムだってこんなに親の仇みたいに千切りにしなくても、そのまま乗せればうす切りのチャーシューに見えなくもない。でも錦糸たまごなんて、つくるのに手間ひまかかってるよな、と思うと何もいう気になれない。

おばあはまだ、
「たまには楽したいから、ラーメン買ってきのに、こんなに麺が固いなんて思いもせえへんかったわ」
と大げさにため息までついてみせて、不満をいっている。

何が「楽したいから」だ。今晩はおかずが6品もある。ラーメンの代わりに米のごはんだったとしても、じゅうぶん立派な晩ごはんだよ。具材を用意してインスタントラーメンつくるぶん、むしろごはんより手間がかかっている。

焼き魚(さわら?)

メインを張れる焼き魚もあるし、

じゃこを乗せた大根おろし

84歳のおばあにとって、大根をおろすのは一苦労だろう。

オクラとかつお節の和えたもの

茹でオクラや、

南瓜の炊いたん

南瓜の炊いたん、

タコときゅうりとわかめの酢の物

酢の物といった副菜も充実している。

おばあが大人しくなったと思ったら、呆けたようにテレビを見ていた。画面では沖縄の海を行くシーカヤックを、上空からドローンで撮影した美しい映像が流れていた。沖縄でのひとり暮らしの思い出がよみがえり、僕も息をのんで少しのあいだ画面に釘付けになった。そしてふと、おばあの丼ぶりに目をやると、

祖母が食べたあとのラ王

おばあはラーメンをほとんど食べつくしていた。さんざん文句を吐いていたけど、おいしかったんじゃないか! と僕はあやうく口走りそうになった。今はいい争っている場合じゃない。早くラーメンを食べようと僕は箸を持った。するとおばあは自分の丼ぶりを手にして、
「おまえもさっさと食えや!」
と声を荒げた。
「麺が伸びるからか?」
と聞くと
「汁が冷めるからや!」
とまた怒鳴った。

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