下戸のおばあが孫に出す、ほとんど出来合い居酒屋メニュー!

この前おばあは、焼き鳥を“かわ”ばかり3本ずつ、合計6本も買ってきた。1種類を選ぶならどうして、おばあも好きな“もも”や“ねぎま”じゃないんだ。もしかして、部位の違いもわからないほど視力が衰えているのか……。そんな心配をしていたけど、今晩テーブルに乗っていたのは――

祖母(おばあ)が夕飯に出した焼き鳥のネギま

ねぎまが三本! よかった、おばあもまだ違いがわかるんだ! さらにうれしいことに今晩は、僕の好物がほかにも並んでいる!

祖母(おばあ)が夕飯に出したカツオのたたき

久しぶりに出たカツオのたたきや、

祖母(おばあ)が夕飯に出した丸い鶏の唐揚げ

ちょっと揚げすぎて黒くなっている、この丸っこいのは鶏の唐揚げ! やけに形がそろっているのは、焼き鳥と同じく商店街の総菜屋で買ってきたやつを、おばあが温め直したからだろう……。それに――

パックに入った、ひきわり納豆

ひきわりの納豆や、

祖母(おばあ)が夕飯に出した玉子焼き

たまご焼きまである。どれも僕が好きなおかずだ。それがずらっと並んだ光景は――

カツオのたたきや焼き鳥のネギま、鶏肉の唐揚げなど、居酒屋のメニューのような祖母(おばあ)が作った晩ごはん

メニュー
・カツオのたたき
・鶏肉の唐揚げ
・焼き鳥(ねぎま)
・たまご焼き
・ひきわり納豆
・サラダ
生:ミニトマト、玉ねぎの醤油漬け、キャベツ
茹で:ブロッコリー、アスパラガス
・ごはん

見ているだけでごはんが欲しくなる! 間違いなく1杯では足りないはず。最近おばあは僕のお腹周りを気にしているけど、お代わりすることを許してくれるだろうか。

それにもうひとつ気になることがある。今晩のおかずは食べごたえがありそうだけど、よく見るとたまご焼きとサラダ以外は、商店街で買ってきたものだ。おばあはこれまで、料理は出来合いのものを並べるより、できるだけ自分でつくっていた。ところが最近は、総菜やインスタント食品が目に見えて増えてきた。今晩は特にそうだ。

買ってきたものもけっこうおいしいし、80代の半ばを越えたおばあが、手づくりの料理ばかり出せないのもよくわかる。だけど、ついこの前、得意料理のカレーまでレトルトに置き換わってしまったときは、さすがに辛かった。そして今晩、鶏の唐揚げというおばあの得意料理がまたひとつ、出来合いのものに代わってしまった……。

たまご焼きも、こんなに形がくずれたものは、おばあは今まで出したことがなかった。少し前までは、形も焼き加減も食品サンプル並みにきれいに整ったものをこしらえていたのに……。

こうしておばあは、少しずつ料理のレパートリーを失っていくのだろうか。そう思うと、幼いころから大切にしていたものを失くしてしまったような、何ともいえない気持ちがこみ上げてくる。

だけどまだ、これだけ豪華なメニューを用意できるのだから、悲しむ必要なんて全然ない! しかもどれも僕の好きなものばかりだぞ! おいしく食べられたらそれでいいんだ!

自分にそういい聞かせながら箸を持つと、
「ああ! そうや!」
と向かいの席のおばあが大きな声を上げた。つづけて、
「台所にまだ、出してへんのがあったんや!」
「なんやって!?」
僕は自分でも思いがけないほどの大声でいった。おばあは僕の声に応えることなく席を立ち、まっすぐ台所に向かって行く。

そうか! 今晩はやけに出来合いのものが多いと思ったけど、台所には手づくりのメインディッシュがあるのに違いない。いま食卓に並んでいるおかずは、あくまで副菜なんだ。だとしたら、どんなスペシャルな手料理が出てくるのか楽しみでたまらない!

僕は席から立ち上がり、おばあを追って台所に向かった。すると台所のコンロの上には――

味の素冷凍ギョーザを焼いているフライパン

フライパンが乗っている。ガラスのフタ越しに透けているあの形は……なんだか見覚えがあるぞ……。

味の素冷凍ギョーザを焼いているフライパンのフタを取っているところ

おばあはフタに手をかけ持ち上げる。その下にあったのは――

味の素冷凍ギョーザを焼いているところ

ギョウザだ! おばあがよく夕飯に出す、この寸分の狂いもなくヒダの数までそろったギョウザといえば、もうあれしかない!

おばあは鉄板に張り付いたギョウザを、ひとつずつ菜箸ではがし――

味の素冷凍ギョーザを箸で摘まんでいるところ

つまみ上げては――

フライパンで焼いた味の素冷凍ギョーザを皿に移しているところ

皿に乗せていく。やっぱりそうだ! これは――

味の素冷凍ギョーザやカツオのたたき、唐揚げなど、居酒屋のような祖母(おばあ)の家の晩ごはん

味の素の冷凍“ギョーザ”! これは、たしかに間違いなくうまいよ! うまいけど……手づくりと違うやんか!

とはいえ、これだけ豪勢なメニューを前にして、不満がある方がどうかしている。しかもどれも僕の好きなものばかりだぞ! 悲しむ必要なんて全然ない! おいしく食べられたらそれでいいんだ! そう自分にいい聞かせて、僕は手づかみで冷凍ギョーザを口に運んだ。

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