メニュー
・ベーコンエッグ
目玉焼き、ベーコン、えんどう豆
・とろろ
山芋、卵黄
・すき焼き(2日め)
牛肉切り落とし、春菊、糸こんにゃく、たまねぎ、にんじん、えのき、もやし、ピーマン
・クノール(インスタントのコーンクリームスープ)
味の素「クノールスープ」コーンクリーム
・サラダ
生:いちご、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草
・ごはん
白と黄色の目玉が2つ、食卓に着いた僕を見つめてくる。ひとつはベーコンに目玉焼きをのせたベーコンエッグ。えんどう豆が三本、立派なつけまつ毛みたいに添えられている。もう一方は、山芋をすりおろした真っ白なとろろ。こちらは中央に生の卵黄が浮かんでいる。
たまごを使った同じような色合いの料理をなぜ、おばあはわざわざ用意したのか。昨日食べたすき焼きの残りが、今日もテーブルに並んでいることが関係ありそうだ。
すき焼きといえば甘辛く煮た具材を、溶きたまごにつけて食べる。以前、牛丼屋ですき焼きを食べたときも生たまごがついてきたし、知り合いに聞いても、溶きたまごがないすき焼きはありえないという。ところがおばあは、たまごのとろっとした食感が大嫌いで、半熟の目玉焼きも、溶きたまごにすき焼きの具材をつけるのも「考えただけで気持ち悪い」そうだ。
昨日の夕飯はすき焼きだったけど、生たまごはおろか、たまご料理も出なかった。僕はすき焼きをそのまま、ごはんと一緒に食べた。何かが足りないと思っても、料理に関してはおばあの意図にできるだけ従おうと決めているから。
昨日とはちがって、今夜は2品もたまご料理が、すき焼きと一緒に並んでいる。ベーコンエッグの目玉焼きは、卵黄を箸でつつくと半熟の中身がとろりと溶け出た。とろろは卵黄をつぶしてかき混ぜる。どちらもすき焼きの具材をつけて食べるのにぴったりだ。生たまごではないところに、おばあのちょっとひねくれた性格があらわれている。
「これにすき焼きをつけて食べるんやろ?」
おばあに聞いてみる。
「好きにせえや!」
とのこと。やっぱりおばあは素直じゃない。
まずは牛肉をとろろに浸して口に入れる。牛肉は昨日、ほとんど食べてしまったので追加されているようだ。だけど昨日よりも安いものらしく、一枚ずつが小さめでやや固い。そこにとろろがからみ、ジューシーさをほどよくおぎなっている。とろろは卵白よりも濃厚で、後味は思ったよりさっぱりしている。
半熟の目玉焼きから流れ出た卵黄は味が濃く、脂身の少ない牛肉の味を引き立てる。固まった部分や白身と一緒に食べると、味の変化が楽しい。
次々と、とろろと目玉焼きと一緒に牛肉を食べていると、
「そんなん、よう食うなあ」
おばあが関心したようにいった。自分では食べられないのに、この組み合わせを思いついたおばあの方こそすごいと思う。そう口に出したかったけど、おばあは僕の話を素直に聞き入れないだろう。だから僕はただひたすら、料理がなくなるまで食べつづけることにした。