おばあたちの集い「食事会」から持ち帰った、ナカムラさんの煮もの


おばあたちの集い「食事会」から持ち帰った、ナカムラさんの煮もの

メニュー
・ナカムラさんの煮もの
切り干し大根、切り干しにんじん、豚肉、大豆、小エビ、れんこん、
・白菜と豚肉の炊いたん(2日め)
白菜、豚肉
・みそ汁(2日め)
絹ごし豆腐、わかめ、青ネギ
・大根おろし
大根、じゃこ
・野菜
生:トマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草
・ごはん

今日は僕の席にしか夕飯が用意されていない。しかも見慣れない煮ものがある。いろんな種類の小さめの具材に、濃口醤油で煮込んだらしく黒っぽく色がついている。おばあがつくったものではなさそうだ。いつもおばあが煮ものをつくるとき、隣にある白菜と豚肉のように、大きめの具材をあまり色をつけずに煮る。

おばあは今日、食事会に行ってきたのだろう。そこではおばあを含めた近所の同年代の女性が4人、料理やお菓子などを持ち寄り、昼から夕方まで好きなだけものを食べ、飲み、楽しくしゃべり続けるという。この日はすでにたらふく食べているので、おばあは夕飯を口にしない。そして食べきれずに余った料理を持ち帰ってくる。

僕の目の前の煮ものは、おばあの友達がつくったもののようだ。まずは切り干し大根を口に運ぶ。見た目のとおりしっかりと煮汁が染み込み、味付けは濃いめ。おばあが普段使わない切り干しにんじんや、小エビや大豆など、具材がいろいろ入っているのがうれしい。

ただし味付けが濃いめなので、血圧を上げる塩分も多いはず。もともとかなり血圧が高いおばあは、これを食べ過ぎてほしくない。普段は健康のために我慢して、うすめの味付けを心がけているおばあにとっては、さぞおいしかっただろう。血圧のことをうるさく注意する僕もいないので、食事会ではこの煮ものを腹いっぱい食べてきたと思う。

おばあは夕飯を食べる代わりに、ピルケースから小さな錠剤をいくつも取り出し、口に含みお茶で流し込んでいた。毎食後に必ず服用する降圧剤だ。一気にごくりと飲み、おばあがいった。
「ナカムラさんは、血圧の薬は飲んでないらしいわ」

ナカムラさんの健康状態を僕に教えてどうしようというのか。この煮ものをつくったのがナカムラさんだったとしたら……。濃いめの味付けのものを食べても血圧には関係ない。おばあはそう僕に伝えたいのだ。

味の濃いものを食べても血圧に影響がある人もいれば、ない人もいるだろう。食べものの好みと血圧の数値からすると、おばあは前者だと思う。そして、おばあの孫である僕も気をつけないと、いつか薬なしでは生きられない体になってしまいそうで怖い。

ナカムラさんは平気だという理由で、おばあはこれから毎日、味の濃い料理を出すつもりだろうか。そうなったときに、僕自身の不安を訴えてやる。ただ今日は、僕も久しぶりに、濃いめの味付けを堪能しよう。そう思いながら、ナカムラさんの煮ものを平らげた。

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