おばあのタンパク源、イワシのからあげ

スポンサーリンク

メニュー
・揚げ物
イワシ、エビ、イカ
・みそ汁
あげ、豆腐、白菜、しめじ
・大根おろし
大根、しらす
・野菜
トマト、ブロッコリー、キャベツ、ほうれん草
・ごはん

おばあは近所のおじさんから、釣ってきたイワシをもらった。小ぶりで、内臓と頭がすでにとられているから、「からあげにするしかなかった」とおばあは言う。しかたなくからあげにしたという意味にもとれるけど、おばあはイワシをからあげにするとぱくぱくと、僕と同じくらいよく食べる。おばあが魚を食うと僕はうれしい。

おばあは僕がいないと、夕飯で、芋を醤油で煮たようなものばかり食べている。なぜわかるのかというと、仕事の都合でおばあのところに行けなかった翌日、夕飯にはたいてい、芋を醤油で煮たような前日の残りものが、電子レンジで温められて出てくるから。

高齢者は衰えがちな骨や筋肉の材料になるカルシウムやタンパク質を積極的にとったほうがいい。そう僕が注意しても、おばあは聞こえないふりをして、醤油がしみこんで真っ黒くなった芋を食べる。芋が好きなのはわかった。そこは目をつぶるから、せめてもう少しうす味のものを口にしてほしい。

理屈で説得してもムダなので、
「血圧が高い人は、味の濃いものばかり食べると血管が破裂して即死する」
と、おどかしてみる。するとおばあは
「寝たきりにならんと突然死ぬなら、苦しまんでええわ」
と開き直る。

それが、イワシのからあげなら味付けは濃くなく、たっぷり食べる。プライドの高いおばあは、「たくさんもらったからしかたなく食べている」という感じで、わざとらしくしかめっ面をしている。だけど箸が止まらない。イワシの群れがマグロに襲われたみたいに、一匹ずつ、どんどん数が減っていく。僕は揚げすぎたイカリングばかりを食べていた。