知らん魚の炊いたん

メニュー
・知らん魚の炊いたん
・なます
千切り大根、にんじん、さば
・みそ汁
あげ、豆腐、白菜、ねぎ
・大根おろし
大根、しらす
・野菜
トマト、ブロッコリー、キャベツ、ほうれん草
・ごはん

おばあは電子レンジをよく使う。僕のおにぎりに入れる焼き鮭、前日の煮物、冷蔵のシューマイ、ダイエーのコロッケなんかを温めるために、おばあは30秒刻みのアナログのツマミをぐいっと回す。テキトーにツマミをひねっているようなのに、いつも温めすぎず冷たくもなく、ちょうどいい具合に温まっているから不思議だ。今日も台所からチーン、と電子レンジが一仕事終えた音がした。

何を温めたかは一目瞭然だった。温かいおかずはみそ汁と煮魚しかない。みそ汁は今日つくったものだ。だとしたら、煮魚しかない。しかし煮魚は昨日のメニューにはなかった。今日つくったのだとしたら、電子レンジで温める必用はない。おばあは煮魚を自分でつくっていたのではないのか。

煮魚こそ、おばあの手づくりの味だと僕は今まで思っていた。程よい濃さの味付けが骨まで染み込み、箸でつかむとふわっとほぐれるシンプルな魚料理。これこそおばあが長年かけて身につけた調理技術の結晶ではなかったのか。商店街の魚屋かどこかで出来合いのものを買ってきて、それからおばあがやっていたことといえば、電子レンジのツマミを回すこと。

いや、これは決して悪いことではない。アナログのツマミを絶妙な加減でひねり、出来合いの料理を今ここでつくったかのように時間を設定して温める。これはある意味、すごい技術なのかもしれない。と、無理やり自分に言い聞かせようとしても納得できない。この煮魚はとてもおいしい。

どうやってつくったかを聞いてみればいい。おばあがつくったのなら具体的に教えてくれるはずだ。まずはメインの素材である魚を用意しなければならない。そういえば、この目の前の煮付けになった魚はなんという名前だったか。おばあに尋ねると、「知らん」と言う。僕が黙っていると、「知らん魚の炊いたんや!」とキレられた。これは、買ってきたやつだ。と僕は思った。