教えたいけど隠したい、おばあ秘伝の隠し味でうまさ倍増! 鶏肉とたけのこ、こんにゃくの煮たん

メニュー
・煮もの
骨付き鶏肉、こんにゃく、たけのこ
・なます
大根、にんじん、さば
・みそ汁
豆腐、わかめ、青ネギ
・野菜
生:ミニトマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草
・ごはん

煮ものがいつもと微妙に違う。色はうすくも濃くもない飴色で、表面にはテカりがある。鶏肉はおばあの煮ものによく入っている骨の太い手羽元ではなく、細い骨付きの一口サイズ。皮の脂が手羽元よりも多そうだ。それが煮汁に溶け出して、具材をコーティングしたことでテカりが出たのだろうか。

鶏肉の骨をつまんで口に入れる。ジューシーだけど脂っこくはなく、さっぱりとしている。そしてほんのりと甘い。テカりの正体は脂ではなさそうだし、甘さは煮ものの味付けによく使う砂糖やみりんとは違うまろやかな感じがする。

鶏肉以外の具材も、いつもなら大根やじゃがいもや厚揚げが入っているのに、今日はねじりこんにゃくと季節外れのたけのこのみ。たけのこはやわらかい甘さが効いていて、いつもより歯ごたえが心地よく感じる。ねじりこんにゃくのすき間にも甘めの味が染み込んでいる。僕は思わずごはんが欲しくなって、茶碗をつかんでかき込んだ。ただの煮ものが、なんでこんなにうまいんだ!

いや、これはただの煮ものではない。おばあはとっておきの隠し味を入れているのに違いない。さらにその隠し味にぴったりの具材だけを厳選して煮ものをつくったのだ。

「何かいつもと違うものを入れてるやろ、この煮もの」
僕がいうと、おばあは口を尖らせてとぼけた返事をする。
「たけのこのことか?」
「たけのこは、冷凍してるやつをたまに煮ものにしてるやん」
「冷凍はもうなくなった! これは真空パックや!」
そういっておばあは鶏肉を口に入れる。口から半分飛び出たままの骨を、なかなか抜こうとしない。もうこの話はおわりというわけか。隠し味のことを聞きたかったのに、話をすり替えられてしまった。

料理屋の門外不出の味付けでもないのに、なぜ隠すのかわからない。強情なおばあをこれ以上、問い詰めると、さらに意地を張って余計に口を割らなくなるだろう。今日のところは引き下がってあげることにした。

煮ものもごはんもおかわりして、僕は夢中で夕飯を平らげた。空になった食器を台所のシンクに運んだとき、流し台の隅に見慣れない小瓶を見つけた。ラベルには「国産 百花蜂蜜」とある。中身は半分以上減っている。これだ! これが煮ものの隠し味だ!

僕は瓶をつかんで居間に引き返した。テーブルに瓶を置き、黙ったままおばあに突きつける。

「それは、たまに舐めてるねん」
おばあはしらじらしいことをいう。そして立ち上がり、灯油ストーブの上のやかんを持って急須に湯を入れた。お茶でも飲みながら、ハチミツを舐めてみせるのだろうか。

ところが急須のお茶は、僕の湯呑みに注がれた。促されているようなので、僕はお茶を飲み、ハチミツを手に垂らして舐めてみた。外国製のお徳用とは違う、まろやかな甘さが口のなかに広がる。やっぱりこれだ、と僕は確信した。