僕が食べたいものをリクエストすると、おばあは返事もせず聞いていないフリをする。とはいえ早速、翌日の晩に作ってくれることもあれば、僕がすっかり忘れたころに用意してくれることもあった。
思い返せば、僕の要望におばあは必ずこたえてくれた。
おばあが台所に立てない今、次は僕がおばあのリクエストに応える番だ! この前おばあが欲しいと言っていたのは……味噌汁!
おばあに代わって料理を作るようになって2ヶ月ほど、未だに味噌汁は作っていなかった。
家庭料理の基本ともいえる味噌汁は、おばあの得意料理。だからこそ、僕が作るとおばあを満足させられないと思って尻込みしていた。
だったら、これまで数え切れないほど味噌汁を作ってきたおばあ自身に、コツを聞けばいい! そうすれば僕にもきっと、おいしい味噌汁が作れるはず! そしてこの機会に、おばあの味噌汁の秘訣も受け継ぎたい!
僕は味噌汁作りにとりかかり、指示をあおいだ。おばあは居間の椅子に座ったまま大声で答えてくれる。
ポイントは――
●ダシは煮干しなどからとったほうがおいしいけど、粉末でもOK!
●具材は冷蔵庫にあるものを何でも刻んで入れればOK!
●味噌は田舎の手作りのやつがいいけど、なければ何でもOK!
などなど、だいたい『何でもOK!』だった。
とはいえ、
●味噌は火を止めてから!
と何度も念を押された。味噌の風味が飛んでしまわない工夫らしい。
言われた通りに作ってみると、今まで尻込みしていたことが不思議なくらい手早くできた。
そしてできた味噌汁を、おかずやおにぎりと一緒におばあの目の前に並べた。
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ところが、おばあは味噌汁をすすっても、表情ひとつ変えない。もしかして……何か重大な失敗をしてしまった!? と心配したけど、
「おいしい」
そして、
「100点」
の評価をもらった。
だけどやっぱり、表情はそのままだ。他の料理を食べているときは――
笑顔を見せてくれるのに……。
野菜たっぷりのおかずには、刻んだサツマイモを入れていた。おばあはこれが気に入ったらしい。
おにぎりにかけた野菜ふりかけも口に合ったみたいだ。
だけど味噌汁は……味にうるさいおばあのことだから、今回はかなり甘めに採点してくれたのに違いない。
自分でも味見をしてみると、やっぱりおばあの作ったものに比べて、ちょっと何かが物足りない気がする。
次は煮干しでダシをとってみよう。そしてもっとおいしくするから、笑顔になってもらうで、おばあ! と僕は誓った。
メニュー
・味噌汁
・おにぎり(野菜ふりかけ)
・豚しゃぶ(黄金の味)
・レンチン野菜
さつまいも、小松菜、ニンジン、しめじ
・キムチ