今年もクリスマスイブがやってきた! クリスチャンでもなく、フレンチのディナーの相手もいない、欲しいものはサンタクロースじゃなくてアマゾン委託の配達員が持ってくる僕には、何ひとつ関わり合いのない日だけど……毎年この日が待ち遠しい。それはおばあが、スペシャルディナーを作ってくれるから!
おばあと過ごすクリスマスイブ、今年もおいしいものを食べて、存分に楽しんでやる! とはいえ近所のスーパーはクリスマスセールでかなり込んでいるから、おばあを買い物に行かせるわけにはいかない。コロナは弱毒化しているというけど、高齢で高血圧の持病があるおばあが感染すればただでは済まないはず。
それに外はまた寒くなってきたし、おばあには温かい部屋で過ごしてもらいたい。だから買い物は僕が行く……それならいっそのこと、一日まるごと休んでもうらおう!
ということで、日ごろ工夫を凝らしたおいしい料理を作ってくれるおばあに感謝を込めて、僕が晩ごはんを作ることにした。
普段ほとんど料理をしないから、味で満足させられるかあまり自信はないけど、おばあに休んでもらうことが孫からのクリスマスプレゼントだ。
とはいえ、自分なりにおいしくなるよう作った……つもり。
メニューは豆乳鍋。白くてクリスマスっぽい色合いだし、何より基本的に煮込むだけなので僕でも失敗せずに作れるはず。せっかくだから鍋の素を使わず――
無調整豆乳と白だしで作ることにした。
レシピサイトを見ても分量がバラバラでわからなかったので、味付けはおばあに鍛えられた自分の味覚を信じるしかない。
大鍋に豆乳をたっぷり入れてから白だしで味を調整し、具材を投入。
おばあの好物の手羽元を真っ先に入れ、野菜をつめ込む。さらにこの前、おばあが鍋に入れておいしかったキビナゴも追加。
これで魚のダシも加わって、豆乳スープのうま味が増すのは間違いない!
味付けと具材は完璧……のはずだけど、大量に作りすぎた。さらに白菜から水が出ることも想定外で、目を離したすきに吹きこぼしてしまった。野菜がしんなりしたのでスープを味見すると、白菜の水分で思った以上の薄味に……。
おばあがいつも作る鍋料理や『炊いたん』のおいしさは、長年の調理経験がなせるわざなのだとつくづく実感させられた。
あとからヘタに味をつけると失敗しそうなので、もう手を加えることはあきらめ、おばあの待つ食卓に鍋を持って行くと――
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「きれいやん」
とうれしい感想が!
問題は味だけど、おばあは無言で食べすすめる。
まずは野菜を食べ、手羽元を頬張ると、
「おいしいわ」
と味にうるさいおばあから、お褒めの言葉!?
さらに、
「ひゃくてーん!」
とすごい点数が飛び出した! まさか……10000点中100点とかではないよな、おばあ!
おばあの表情を見ると、100点満点だと信じてもよさそう。実際に何度もお代わりして手羽元を3本も平らげてくれた。
そして食後はもちろん、大好物のケーキをプレゼント!
用意したケーキは2種類。
おばあの好きなチョコ味で、トロっと柔らかいチョコティラミスと、クリスマスの雰囲気たっぷりのストロベリーチーズケーキだ。
おばあは迷わずチョコティラミスを選ぶと思ったら……僕が差し出したらすぐに、
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チーズケーキのほうを引き寄せて、
バクバクと食べはじめた。
チーズケーキがおばあの口に次々と消えていく。
チョコが大好物のはずなのに……もしかしてクリスマスの雰囲気、楽しみたかったんか、おばあ!
考えてみたら、僕がクリスマスっぽいほうを食べたら何だかむなしくなりそうなので、おばあに助けられた気がする。
おばあにチーズケーキの感想を聞くと、
指についたケーキを舐めてから、
「甘すぎへんし、ちょうどよくておいしいわ!」
と高評価!
僕が食べたチョコティラミスは、これまで味わったクリスマスケーキの中でもダントツで濃厚で甘すぎたけど……おいしかった! そして何より、食後に見せたおばあの満足そうな笑顔が、今まで以上にうれしいクリスマスプレゼントになった。