暑さは早くも夏本番。外に出れば焼けつくような日差しが降りそそぐ。近くの公園に行くと、仲良くなった猫たちも日陰でぐったりしている。
おばあが暮らす介護施設に行くと、おばあは自室でテレビをつけたまま眠っていた。エアコンもついているけど、うっすらと汗をかいている。窓の外でまぶしく輝く太陽に、フル稼働の冷房が負けているみたいだ。
設定温度を一度下げて、おばあの胸までかかっていた毛布を少しずらし、しわの刻まれた額の汗をタオルでぬぐってから部屋をあとにした。
外に出たとたん、自分の額から汗がふき出してきた。
こんな日の晩ごはんは、やっぱり冷たくてつるっといける冷やし中華……と言いたいところだけど、ここはあえて熱くて辛いあの料理で、このうだるような暑さを吹き飛ばそう!
その料理とは、おばあも大好きなキムチ鍋。
というわけでそろえたのが――

こんな食材。
キムチ鍋
【食材】4食(人)ぶん
タラ 4切れ
牛肉 適量
玉ねぎ 大1個
トマト 2個
シイタケ 適量
マッシュルーム 適量
ししとう 適量
もやし 適量
ワカメ 適量
玉子 2個
トウモロコシ 1本
ニンジン 2本
レタス 適量
小松菜 適量
【調味料】
桃屋のキムチの素 適量
あごだし 適量
ケチャップ 適量
水 800ml
味付けは、何度も使ってそのおいしさは保証済みの――

桃屋のキムチの素。
そこにうま味をプラスする、トビウオ(あご)と昆布の合わせだし“あごだし次郎”も加える。
さらに今回は――

ケチャップやトマトも入れる。
というのも前回、桃屋のキムチの素でキムチ鍋を作ったとき、味はおいしかったけどひとつ改善したいことがあった。
それは――
公式のレシピの分量を入れたのに、色がキムチ鍋らしい赤い色にはならなかったこと。
だったら“素”に加えて、キムチもたっぷり入れようか――なんて思っていたけど、僕はひらめいてしまった。
“最近よく使っているケチャップを、キムチ鍋に入れたら合うのではないか”ということを。
ケチャップを入れれば、食欲をそそる赤い色が濃くなることはもちろん、濃縮したトマトの酸味と甘み、そしてうま味が、キムチ鍋のおいしさをさらに引き立ててくれるのにちがいない! なんだかわからないけどそんな確信がある。
思いつたらやってみる。おばあもそうやって、独創的かつ絶品のメニューを生み出してきた。おばあのような“炊いたんマスター”を目指すからには、僕も直感を信じてやってみよう!
そこで具材も直感で――

山盛りの“徳用”しいたけや、

これまた100円の特売だった“ししとう”。それに――

タラの切り身や、豚肉の切り落とし。さらに――

夏の味覚、トウモロコシも! これはさすがにキムチ鍋には……と言いたいところだけど、直感でいいと思ったからには入れるしかない。
韓国ではよくトウモロコシを食べるみたいだし、ネットフリックスの『イカゲーム』でも、ゲーム会場でトウモロコシが支給されていた。
韓国を代表する食べ物キムチにもきっと合うはず!
それでは、このままの勢いで――
ケチャップキムチ鍋、調理開始!
まずは鍋に水を800ml入れて火にかけ――

桃屋のキムチの素を大さじ2、液体のあごだしを大さじ1。

味噌を大さじ1。そしてここで――

ケチャップを大さじ2入れて――

よく混ぜたら、ちょっと味見……って、これ、いける! ケチャップの甘味と酸味はあまり前面にでてこなくて、キムチの素の味をしっかり引き立ててる!
そこに具材を――

まずは玉ねぎとニンジンを入れ、

トウモロコシを、

投入! ほかの具材も――

よく洗ってから入れていく。
タラや豚肉、野菜などを次から次に投入する。
そしてしばらく煮込んだら――

完成だ!
メニュー
・ケチャップ入りキムチ鍋
・麦ごはん
見た目は前回よりも――

スープがしっかりと赤くて食欲をそそる。
ただ――

トウモロコシのインパクトが想像以上にありすぎて、パッと見はキムチ鍋というより南米あたりの煮込み料理のような……。
それはいいとして、肝心なのは味だ。さっき味見したときはよかったけど、煮込んだらケチャップの個性が前面に出すぎて、これまた国籍不明のぼんやりとした味に……なんてことになっていたら……。
いや、ここは直感を信じて、まずは具材を――

小皿に取り分け、いただきます!
まずはスープをすすると――これは!? 酸味や辛み、甘み、そしてうま味がバランスよく融合した奥深い、キムチ鍋の味!
具材からのダシも加わって、味見したときより一層、味の深みが増している。
ケチャップ感はほとんどなくて――

ごはんがめちゃくちゃほしくなる~!
これ、おばあも好きな味だ!
それに食べれば食べるほど、止まらなくなるおいしさ。額から汗が噴き出してくるけど、気にせず食べ続けていると、腹の底から力がわいてくるみたいだ。暑いときには冷たいものもいいけど、熱いもので気合を入れるおばあ式の夏バテ防止法で、この夏も乗り切れそう。
おばあみたいに直感に従って作ったら、おいしくなったで! と介護施設に明日また報告に行こう! キムチ鍋は熱くて辛くて刺激が強いから、今のおばあは食べられないけど、きっとこれまで作ったキムチ鍋を思い出して、笑顔になってくれるはず。だから待っててや、おばあ。