僕の祖母、おばあの料理のレパートリーは、定番の家庭料理から唯一無二のオリジナルメニューまで幅広く、10年以上作ってもらって食べたけど、飽きるどころか毎回驚きの連続だった。
ジャンルは“和・洋・中”なんでもできたし、僕のリクエストにも期待以上の味でこたえてくれた。ただ、バターを使った料理は、一度も作ってくれたことはなかった。
おばあが介護施設に移って、僕が自炊するようになってからも、バターを使ったことなんてない。そもそもパンよりごはん派だし、買ったことすらない。
それが、一度使ってみたら――
めちゃくちゃおいしいやんか、おばあ! と叫びたくなるほどの衝撃。
ルウが必須と思っていたクリームシチューなのに、代わりのバターと小麦粉だけで、ルウと変わらない味……なんてもんじゃない! バターの芳醇な香りと濃厚なうま味が加わって、ルウより数段おいしくなった。
さらに作ったバターチキンカレー、それにムニエルも絶品だった。
今度は……そうだ! バター醤油だ! ポテトチップスのバター醤油味は大好きだけど、バター醬油味の料理は作ったことない。料理にしたら絶対、ごはんに合う味だし、考えただけで楽しみすぎる!
というわけで買ってきたのが――

こんな食材。
レンコダイのバター醤油煮
【食材】
レンコダイ 1尾
トマト 1個
ホウレンソウ 適量
【調味料】
水 150cc
酒 150cc
バター 10g
醤油 大さじ2
みりん 大さじ2
砂糖 大さじ1
メインは今が旬の――

レンコダイ(キダイ)。
マダイに負けない味なのに、値段は一匹498円と、かなりのお買い得。
そんなレンコダイは、今年の正月にも――
ふつうの煮付けにした。それを今回はバージョンアップして、バター醤油煮にするのだ!
ただ、このレンコダイ、やけに安いと思ったら……下処理もなにもしてないやつだった。
でも大丈夫。大きなウロコは包丁の背と指ではがし、内臓とエラを取ればいい。あとは鍋に入らないので半分にして、身が割れないように切り込みを入れれば――

下処理完了。あとは臭みを取るため塩(今回はベトナム土産のレモン塩)をすり込んでしばらく置いておく。調理直前にキッチンペーパーでふいて、余計な水分と塩分を取ることも忘れずに。
一緒に煮る付け合わせの具材は、バターに合う――

トマトとホウレンソウ。
バターは使いやすい――

北海道バターの切れてるやつで、10グラムの個包装タイプ。
8グラムの個包装も買ったことあるけど、10グラムのもののほうが明らかにお得だ。
レンコダイのバター醤油煮、調理開始!
調理方法は、まず鍋に水150ccと酒150ccを入れ火にかける。
そしてもう一つ鍋を用意して、ホウレンソウを茹でるためにお湯を沸かしておく。
水と酒が沸騰したところにレンコダイを入れ、落とし蓋をして――

5分ほど煮る。
その間に――

ホウレンソウを3分ほど、軽く茹でる。
そしてレンコダイが5分経ったところで――

鍋に調味料を加える。

醤油とみりんが大さじ2。あとは味見して微調整。
そしてここで投入――

バター10g。
さらに具材の――

茹でたホウレンソウとトマトを加え、7分くらい落し蓋をして煮てもいいけど――

落し蓋はせず、味付けのバター醤油をすくってはかけ……すくってはかけ……。バターを使ったらこの動作、料理上手になった気分になるからやめられない。
それに落とし蓋をしないほうが、煮詰まっておいしくなりそう。
レンコダイに火が通り、トマトがしんなりしたら――

完成だ!
メニュー
・レンコダイの醤油バター煮
・新ワカメとキャベツとニンジンの味噌汁
・もち麦入りごはん
メインと同時に作っていた味噌汁は――

久々に安くなっていたキャベツをたっぷり、それに新物のワカメを入れ、鶏ガラの中華スープを出汁の代わりに使っている。
それでは、まずは――

レンコダイからいただきます!
身に箸を入れると、

ホロっとほぐれる。ふっくらとしたその身を、バター醤油にひたして口に入れると……鼻から抜ける香りがたまらない! いつもの醤油の香りにバターの香りが加わることで、食欲をそそる風味がグッと増している。
さらに噛めばあふれ出る、レンコダイのうま味とバター醤油。それが一体となって……もう、最高!
それにこの味、やっぱり――

ごはんにのっけて食べたら、止まらなくなる! レンコダイの身ひとつまみで、ごはんがどんどんすすむ! さらにタレをかけたら、ごはんが足りなくなる危険なうまさ。
魚のバター醤油煮のごはんとの相性、想像を超えている!
これは、ごはん好きのおばあに食べさせたい!
いつか介護施設にいるおばあが、僕の持ち込んだ料理が食べられるようになったとき、絶対味わって点数をつけてもらおう。
でも今は難しいので、明日バター醬油煮のおいしさ、報告しにいくで、おばあ!