食べれば沖縄を思い出す“パパイヤしりしり”と“ゴーヤチャンプルー”

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大阪のローカルスーパーで発見!懐かしの沖縄食材

おばあも常連だった商店街のスーパーの野菜売り場に、懐かしい食材が!

一目見て、僕が20代のころ3年間住んで働いた沖縄の記憶がよみがえってきた!

職場だった発電所の植え込みの赤いハイビスカスや、海水の取水口まわりに群れる色とりどりの小魚やアバサー。そして今はもう取り壊された5・6号機の中央操作室で食べた、ボリューム満点の手作り配達弁当。そのおかずの一品によく入っていた沖縄ならではの食材。

それは――

料理に使う青パパイヤ

青パパイヤ! 

沖縄のスーパーではよく見かけたけど……十数年後の今になって、大阪のローカルなスーパーの野菜売り場で再会するなんて! しかも最前列のおすすめのコーナーに、ポップまでつけて並べてある。

これはもう買うしかない!

と衝動買いしてしまった。

そして、今回そろえたのは――

青パパイヤやゴーヤなど沖縄の料理(チャンプルー)を作る食材

こんな食材。

青パパイヤを選んだら、やっぱり沖縄食材の定番ー―

ゴーヤーや玉子など、ゴーヤチャンプルーを作る食材

ゴーヤも外せない!

ゴーヤはチャンプルーにするとして、青パパイヤは沖縄で食べた“しりしり”にしよう!

“しりしり”とは、すりおろすという意味で“すりすり”に近い言葉。専用の器具で、食材をすりおろすように細長い千切り状にして炒めるので、“しりしり”と名付けられたとのこと。

その専用の器具の名は、“しりしり器”! って、そのまんま!

沖縄ではこの“しりしり器”が、一家に一台は常備してある。

ちなみに、ニンジンがメインの“ニンジンしりしり”のほうが、一般的でよく食べられている。ニンジンの消費量日本一の県が沖縄なのは、“ニンジンしりしり”を各家庭で作りまくっているからに違いない。

パパイヤしりしり調理開始

僕は沖縄時代、あまり料理はしなかったけど、沖縄の食材が珍しいのと調理方法が簡単なので、パパイヤしりしりは自分でも作ったことがある。

作り方はまず、自分の顔くらいのサイズの青パパイヤを――

半分に切った青パパイヤの断面

半分にして、

皮をむいた青パパイヤ

皮をむき、細長く切る……って、これが難しい!

固くてツルツルすべるから、包丁で細く切るのは至難の業。

だからこそ、活躍するのが“しりしり器”! 僕も沖縄で買ったけど、それが今、どこにあるのやら……。

料理するときは、おばあの家の台所を借りている。千切り用のスライサーでもないか探してみたけど、見当たらない。それもそのはず、僕のおばあはピーラーすら使わず、包丁一本でなんでも切っていた。

僕のおばあは愛媛出身で、青パパイヤなんてたぶん調理したことない。だけどぬるぬる滑る里芋の皮も軽々と器用にむいていたから、青パパイヤも包丁で千切りにできるはず。

だったら、おばあのような料理上手を目指す僕も、やってやる! そう意気込んで――

皮をむいて細切りにした青パパイヤ

細く切ろうと悪戦苦闘したけど、

青パパイヤを千切りにして水に浸してアク抜きをしている

こんな不揃いな感じになってしまった……。

これをアク抜きするために、水に10分以上さらしておく。

一緒に炒めるニンジンも、包丁で千切りにするには固くてすべるから――

千切りにしたニンジン

こんなフライドポテトサイズに……。

それはそうと……気を取り直して、あく抜きが終わった青パパイヤを――

千切りにした青パパイヤを炒めてパパイヤシリシリを作っているところ

塩を振って軽くいためる。青パパイヤがしんなりしてきたら――

千切りにしたパパイヤとニンジンを炒めてパパイヤシリシリを作っているところ

ニンジンを追加してまた炒める!

全体に火が通ったところで――

千切りにした青パパイヤとニンジンを炒め、シーチキンを入れてパパイヤシリシリを作っているところ

シーチキンを追加して混ぜ合わせたら、できあがり!

ゴーヤチャンプルー調理開始!

ゴーヤはまず―ー

ゴーヤチャンプルーを作るために半分に切ったゴーヤ

半分にして、内側のワタとタネを取り除く。

それを――

ゴーヤチャンプルーを作るために細かく切ったゴーヤ

半月切りに。

それからフライパンで火を通すのはーー

ゴーヤチャンプルーを作るためにフライパンで豆腐を焼いているところ

沖縄の島豆腐……と言いたいところだけど、このへんでは手に入らないので、木綿豆腐で代用。

豆腐は大きめに手でちぎってフライパンに並べる。あまり細かく崩したくないので、炒めるというより焼く感じで。

豆腐から水分が出て、うすく焼き色がついてきたら、ここでーー

ゴーヤと豆腐をフライパンで炒めてゴーヤチャンプルーを作っているところ

ゴーヤを投入! ゴーヤがしんなりしてきたら、次は――

ゴーヤと豆腐と豚肉を炒めてゴーヤチャンプルーを作っているところ

豚肉を加えて炒める。

沖縄では豚肉よりもスパム(ランチョンミート)を入れた――

↑こんな感じのものをよく食べたけど、商店街のスーパーにスパムが売っていないので豚肉を使った。

その豚肉にーー

ゴーヤと豆腐と豚肉を炒めてゴーヤチャンプルーを作っているところ

火が通ったところで、

ゴーヤと豆腐と豚肉、玉子を炒めてゴーヤチャンプルーを作っているところ

生たまごを割り入れてさらに炒めたら、できあがり……って、しまった!!

味付けを忘れるところだった!

醤油と顆粒だしで味付けするのがふつうだけど、今回は――

やまと醤油の『いしるだし』

だしと魚醤の『いしるだし』を使ってみる。石川県の知り合いにもらって以来、常備してある万能調味料だ。

むやみなアレンジは危険だけど、この『いしるだし』なら、今まで失敗したことないどころか、さらにおいしくなっているから大丈夫……なはず!

ゴーヤチャンプルーに適当にまわしかけて、混ぜ合わせる。

これで本当の完成だ!

今晩の献立は、14年ぶりの沖縄メニュー!

晩ごはんのメニュー、ゴーヤチャンプルーとパパイヤシリシリとごはん

メニュー
・パパイヤしりしり
・ゴーヤチャンプルー
・ぶどう(巨峰)
・麦ごはん


まずは、パパイヤしりしりからいただだきます!

皿に盛り付けたパパイヤシリシリ

一口食べると……そうそう、これこれ! と言いたくなる、密度のあるきゅうりのような、絶妙な歯ごたえ。しんなりとしっとりが共存する唯一無二の食感。

味付けは、実はこちらも顆粒だしと醤油を忘れていた。でもシーチキンの塩分とうまみがあるから、まあ大丈夫でしょ。

そう思って何も入れなかったものの、ちょっと心配……。でも食べると、想像以上にちょうどいい味の濃さ! ほのかに感じるパパイヤのフルーティーな香りと甘味があとをひく。加熱したニンジンの甘味とも合わさって、やっぱりこれ、クセになる!

目をつむって味わうと、沖縄で過ごした日々の記憶の断片がよみがえってくる。

聞こえてくるのは、穏やかな波の音。夜勤明けの早朝、帰宅途中に立ち寄った宜野湾トロピカルビーチの砂浜をひとりで歩く。そしてたどり着いた防波堤の先で、透き通った海の青色が、時間がたつにつれて濃くなるのをただ眺めていた。

それを今、大阪のおばあの家で、ひとりパパイヤしりしりを食べて思い出している。どちらの状況にも共通しているのは、漠然とした少しの不安と、しみじみと湧き上がってくる充実感。

そして、これまた久々で楽しみな――

皿に盛り付けたゴーヤチャンプルー

ゴーヤチャンプルーをいただきます!

噛むとあふれ出るゴーヤの苦さと青臭さ。同僚のウチナーンチュは苦手と言っていたけど、この独特の味わいがたまらない。水分がほどよく抜けた濃密な豆腐と豚バラ肉に、クセの強いゴーヤが合う!

僕がよく食べていたのは、沖縄の『ほっともっと』のゴーヤ弁当だった。ゴーヤチャンプルーがごはんに乗った夏季限定の弁当で、これに入っていたのが豚肉代わりのスパムだった。

味の濃いスパムもよかったけど、今回は豚バラ肉を使い、味付けは『いしるだし』のみ。上品なあっさり味になったけど、ゴーヤが際立つおとなの味で、これもまたいい!

それにもちろん――

漆塗りの器に盛り付けた麦ごはん

ごはんをかき込まずにはいられない。

そしてまた欲しくなるパパイヤしりしり。さらに箸が伸びるゴーヤチャンプルーとごはん。これ、ノンストップで食べ続けられる黄金のトライアングルだ!

沖縄時代の懐かしさも相まって、おなかも心も満たされるー!

だけどいつも料理をおいしく味わうたび、気になるのは、介護施設に移ったおばあのこと。パーキンソン病が進行し、好きなものを好きなように食べられなくなったおばあにとって、充実感を得られるのはどんなときなのか……。

そうだ。明日もまた、おばあの面会に行こう。筋肉が動かしづらくなって、なかなか笑ってくれないけど、それでも穏やかな笑顔を見せてくれたとき、充実しているように感じる。

それにまた、僕が作ったものを食べられるようになったら、パパイヤしりしりとゴーヤチャンプルーも、きっと気に入ってくれると思う。もちろん文句は言われるだろうけど、料理の腕を磨いて待ってるでおばあ!