鯛はクックパーで焼いたからおいしかったのに、どうしたんだおばあ!鯛の焼いたんと茶わん蒸し

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メニュー
・鯛の焼いたん
・茶わん蒸し
・煮もの
厚あげ、さといも、こんにゃく
・野菜
生:トマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草
・ごはん

赤い皮と白い身、尻尾にあたる切り身の形からいって立派な鯛。それを焼いたものが今日のメインディッシュだ。

先日もおばあは、正月でもないのに鯛を焼いた。久しぶりに家で焼いた魚だった。ガスコンロに備え付けの魚焼きグリルを使うと、掃除が面倒だというので、食卓に焼き魚が並ぶときは、魚屋であらかじめ焼いてあるものを買ってきていた。

たしかに手軽かもしれないけど、焼いたものを温めなおすのでどうしても味が落ちる。それが先日、おばあはフライパンで魚が焼けるクックパーというアルミホイル状のシートがあることを知った。魚焼きグリルの掃除をしたくないおばあも、焼きたての魚の味が恋しかったようで、クックパーを使って魚を焼いた。その魚として選んだ鯛には「また家で焼いたおいしい焼き魚が食べられて“めでたい”」という意味が込められていたのだと思う。

あれからまだ20日も経っていない。おばあは焼きたての鯛が、かなりお気に召したようだ。たしかにあの鯛はおいしかった。今まで正月に食べていた一匹丸ごとの鯛は、家で焼くことができず、魚屋で焼いたものを買ってきていた。しかも大きすぎて電子レンジに入らないので、冷えたままの少しパサついた身をほじくって食べる。それに比べて、生の切り身をフライパンで焼いた鯛は、ふっくらとした白い身からうま味たっぷりの脂があふれ出し、格段においしかった。

あのやわらかな感触を思い浮かべながら、目の前の鯛に箸を入れると……何だか、固い。正月の冷えた鯛ほどではないけど、水分が抜けて身がぎゅっと凝縮している。口に入れると温かいし、まずいわけでもない。だけど、先日のあの鯛のおいしさにはほど遠い。まるで焼いた鯛の切り身を買ってきて、電子レンジで温めたみたいだ。実際に、そうなのかもしれない。

だとすれば、なぜおばあは、先日と同じようにフライパンで焼かなかったのだろうか。テーブルの向かい側で鯛をほじくっていたおばあに聞いてみた。すると、
「茶わん蒸しがあるやろ!」
と一喝された。わけがわからない。

茶わん蒸しは、僕の好物だ。これはスーパーで買ってきたものだけど、エビやしいたけ、ぎんなんなどが入った具だくさんの上等なやつ。好物を買ってきてやったのだから、先日よりも味の落ちた鯛でいいやろ! とおばあはいいたいのだろう。なぜその鯛にしたのかが聞きたいのに。生よりも焼いた鯛が安く買えたからなのか、ただ単に焼くのが面倒だったのか、おばあが答えてくれない以上、理由はわからない。

釈然としないまま、茶わん蒸しをスプーンですくって口に入れる。その瞬間、疑問なんかどうでもよくなった。何度かスプーンを口に運び、滑らかな舌触りと、ダシと卵黄が合わさった至福の味にしばし浸る。

鯛は少し固いけど、おいしくないわけじゃない。おばあを詮索してもムダだし、しっかりと味わって食べればいい。そう思って夕飯を食べ終え、おばあを見ると、にやにやと勝ち誇ったような笑顔を浮かべていた。