僕の祖母、おばあがよく料理に使っていた豚のスペアリブ。味はいいけどちょっと高いし、なんとなく調理も面倒そうなので、今まで僕は買ったことがなかった。
だけど、たまたま行った商店街のスーパーで、豚のスペアリブが1グラム1円の目玉商品に! しかも外国産じゃなく、『令和香潤豚』という鹿児島県産のブランド豚。
こんなのもちろん買うしかない! と心の中で叫びながら、ひとパック553円のものを手に取り――
他の食材も一緒に買ってきた。
豚のスペアリブは、定番の甘辛く濃厚な照り焼きみたいなやつ……にするのもいいけど、僕は今、おばあのような“炊いたんマスター”を目指している。
だからメニューは、過去におばあが作ってくれた――
↑こんな、あっさり味の“炊いたん”にしたい。
とはいえ、具材はいつもの大根のほかに、和風の料理にはあまり使わない――
僕の好きなセロリやトマトも入れてみる。
その理由は、単に奇抜なものを作りたいからじゃない。“炊いたん”の神髄は、おばあが言っていた「好きなもん入れたらええ!」だと実感しているからだ。
それにセロリは洋風料理に使うことがほとんどだけど、この前作った“粕汁鍋”にも入れてみて――
和風の煮込み系の料理にも合うことは実証済みだ。きっとスペアリブの炊いたんにも合う……はず!
それでは、まずは大根を切って――
皿に入れて、電子レンジで加熱。そうすることで、煮込む時間が短くても柔らかくなって味が芯まで行きわたる。
豚のスペアリブは、
鍋に並べ――
いつも和風の炊いたんの調味料を入れる。分量は水が500ml、醤油、酒、みりん、砂糖がだいたい大さじ2~3。毎回正確に計らなくても、おばあみたいに味見をしながら調整すれば、うまくいく。「うまかったらええんや」とおばあも言っていた。
大事なのは自分の感覚を信じること! それをおばあから教わった。
そして鍋にフタをしてしばらく炊いたところに――
レンチンして、やや芯が残るくらいの固さになった大根を投入。
さらに――
セロリの茎の部分と長ネギを入れ――
落し蓋をしてまた炊いて――
セロリの葉の部分やトマトを入れて、もうしばらく炊けば――
できあがり!
ただ、一品だけではちょっと寂しいので、
土鍋で具沢山の味噌汁も作った。具材はかぼちゃやニンジンといった甘めの根菜や、冷蔵庫にあった食材をいろいろ入れた。
というわけで、完成したおかずとごはんを持って、いざ食卓へ。
メニュー
・豚のスペアリブと野菜の炊いたん
豚スペアリブ、大根、セロリ、トマト
・具だくさん味噌汁
かぼちゃ、にんじん、もずく、玉ねぎ、ニラ、エノキ、マイタケ
・ごはん(もち麦入り)
まずは、もちろんーー
豚のスペアリブをガブり! するとあふれる肉汁と和風ダシの……うまみがすごい!
“定番の甘辛いやつ”じゃないあっさり味付けは、肉自体のおいしさが引き立っている! 「そうやろ。ばあちゃんも作ってたんやから」とおばあの声が聞こえてきそうだ。
その和風の味わいに、鼻からふわっと抜けるセロリのさわやかな香りが、思った以上にぴったり。 とはいえ、さすがはおばあが作り続けていた“炊いたん”。セロリのクセのある風味でも、たまらずごはんが欲しくなる。
ごはんをかき込み、味噌汁をすする。カボチャの甘味が溶け出した汁が、これまたごはんに合う!
つづいて、炊いたんのセロリを口に入れると、さらに濃厚な香り。しっかり煮た茎は、ほどよい食感で歯ごたえが心地よく、葉は香りが強い。セロリひとつでいつもの炊いたんが一味ちがって、これもまたいけるで、おばあ! と思わず心の中で叫ぶ。
実はおばあが暮らす介護施設で、またコロナの感染者が出て、数日前から面会ができなくなった。おばあは自力で移動は難しいし、話すのも大変になってきたけど、僕が行くと笑顔を見せてこたえてくれる。その笑顔が、今の僕の日々のモチベーションになっている。
今はおばあにコロナが感染しないように願うしかない。
“おばあ流”のあっさりスペアリブ、そこにセロリを入れたこの味、いつかおばあに味わってもらって点数をつけてほしい。その日が来るまで、コロナになんてかからず元気にすごしてや、おばあ!